10年後獄ヒバ 捏造マフィア設定 甘口注意
秘密。
「お前も早く支度しろよ」
ざっとシャワーを浴びて出てみれば、先に支度をしていたはずの雲雀がシャツの前も閉めずに大きな欠伸をしている。
「するよ」
まだ寝惚けているのか、身なりを整えているこちらを見ているだけで動く気配すらなかった。だが、10代目を迎えに行くまであと少しの余裕しかない。構わずネクタイを首に掛け、くるりと指を動かした。
一瞬、目を離しただけだ。気付けば眼前に雲雀の姿が迫って、たった今締めたはずのネクタイはしゅるりと音を立てて奪われていた。
「おいっ!」
代わりに掛けられたのは、昨日雲雀が身に付けていたもので。
「そっちの方が合うよ」
「……おう」
否定することもできず、もう一度同じ動作を繰り返す。ファッションとか興味ないくせに、こういうところは雲雀は確実にポイントを外さない。
お返しにと全開だったボタンを掛け、自分のものであったネクタイを締めてやる。つい、と上げた顎の形の良さとか、浮かぶ喉仏に目を奪われ、ついでに襟の内側に隠れた紅い痕に気付いて目を反らした。
「タイまで昨日と同じってわけにもいかないでしょ」
耳元に囁き込まれた声は、如実に笑みを含んでいた。
「あ、…れ?」
ホテルのロビーで待ち合わせていた獄寺君が、珍しく俺よりも遅く来たのはともかく。
(気付かない振りしてた方がいいの、かな?)
昨日、雲雀さんがしていたネクタイと同じ気がするとか。そういえば、会ったことを言いそびれたままだったな、なんて。もう絶対に言えないけれど。
「どうかなさいましたか、10代目」
「ううん、行こっか」
獄寺君が俺以外にちゃんと受け入れられる相手を作ってくれるなら、その方がいいから。
隠し事じゃない秘密が、増えていく。
小ネタサルベージ
仕事か何かでホテル泊だったということで!マフィアスーツじゃなくて普通のスーツだったってことで!
ネクタイ交換とか、萌える…!