捏造未来編終了後平和な並盛に戻った獄ヒバ

 

 煙草は二十歳になってから

 

 

「っざけんな!」

 何度目だろう。自販機を蹴飛ばして歩き出す。

 10年後の未来に飛ばされて、ようやく現代に戻ってきたと思えばいつの間にか状況は変わっていた。どの自販機にもタスポの文字。中学生の自分が店頭で買うには面倒なものだから、いつも自販機の世話になっていたというのに。

 ポケットの中の紙箱にはあと1本しか残ってはいない。

「くそ…」

 イライラする。中毒性のあるニコチンは、ある程度定期的に摂取していないと禁断症状を起こす。何より苛立ちがそれを悪化させていた。

「…しゃーねぇな」

 背に腹は代えられない。大人ならタスポくらい持ってんだろう、と保険医の顔を思い浮かべる。貸してやる代わりにかわいこちゃんを紹介しろとか言われるだろうが、適当にほっときゃいい。まだ学校に残っているだろうか、踵を返す。

「ねぇ」

「げ」

 振り向いた瞬間に、声が掛けられる。それなりに人通りが少なくない歩道。それでも遠くにいる奴は、唯一無二の空気を纏って視線を奪っていく。

「ヒバリ…」

 泣く子も黙る並盛最凶の風紀委員長、雲雀恭弥。周辺を歩く通行人が心なしか早足で遠ざかっていくのがわかる。そのくらい、この街では知らぬもののいない存在だった。

「それ、壊したら弁償だよ」

 何が面白いのだろうか、口の端を上げる様子に苛立ちが募る。

「うっせぇ。そう簡単に壊れやしねぇだろ」

 いっそ壊れて仕舞い込んである煙草を吐き出してくれはしないかと思ってしまうくらいにはニコチン不足にやられてる。もっとも、意図的に破壊行為や犯罪行為をするつもりはない。尊敬する10代目のおかげで、俺は随分と平和主義になったんだ。

 だが、目の前のこの男は違う。自らの信じる風紀において、それを乱すものは躊躇わず粛清するし、それで周囲に被害が出ようが気にはしない。並盛を守るためにそれを傷つけるなんて、本末転倒に思えるんだが。

「どうだろうね」

 自販機の筐体に残った足跡を一瞥して、雲雀の視線がこちらを向く。だがおかしなことに不機嫌そうな気配は感じなかった。

「煙草、やめればいいのに」

「関係ねぇだろ」

 横を通り抜けて、学校の方へと向かう。二・三歩後に足音がついてくるのがわかったが、振り向く気はない。

「未成年者の喫煙は風紀が乱れるからね。並盛では早めに導入させてもらったんだ」

「な…っ!」

 足を止めて振り返れば、面白そうに目を細める雲雀と目が合った。

「おめーの仕業かよ」

 全国ではまだ試験的に導入され始めたばかりだったのに、並盛ではそれに先駆けて一気に殆どの自販機がタスポ対応に切り替わった。それがまさか、雲雀の差し金だというのか。

「君が風紀を乱すから悪い」

 最悪だ。何よりこいつに目をつけられたということは、この街にいる限りはどうしようもないということを意味している。

「うっせえ黙ってろ」

 自分で買えなくても、煙草を入手する手段なんていくらでもあるんだ。苛立ちのままに無視をして、歩き出そうとした。その目の前に、雲雀が何かを差し出した。

「……タスポ?」

 憎たらしいイライラの原因を睨みつけて、その表面に目を滑らせる。

「貸してあげる」

「待てよ、これ…どういうことだ」

 顔写真には、毎日鏡で会う馴染みの顔。隣にはご丁寧に自分の名前が書いてある。

「偽造…か?」

「さぁね。これをどう使うかは自分で考えなよ」

 放り出されて、咄嗟に空中で受け止める。気付けば、雲雀はもう背を向けて人ごみの向こうへと消えようとしていた。

「てめぇ、これで貸し作ったつもりか!」

「…おあいこでしょ」

 微かに聞き取れたのはそんな言葉。借りを返したとでも言いたいのか、追いかけることも出来ないままそこで翻る学生服を見送っていた。



 10年越しの借りは、まだまだ返せそうにない。

 

 

 

 


タスポを萌えアイテムにしてみるテスト。

知らないうちに煙草の自販機がどんどんタスポ必須になってるぽいので
未来に行ってる間に替わってたらごっきゅんの反応が面白いかと。

で、大人雲雀さんに借りを返さない限り
貸し借りはチャラにならないと思うんだ!
10年ずっとお互い返し続ければいいよ。
そんな不良債権なら大歓迎!