白い部屋

 

 

 日が暮れた部屋に戻り、冷たいシャワーを浴びる。石鹸を泡立てて体を流す度に、熱が皮膚から滑り落ちていった。

「……!」

 素肌に、いくつかの紅い痕。あいつが残していったものだ。

「ムカツク……」

 それは所有の印のように、何度擦っても消えない。数日で消えるはずの欝血がただ目障りで仕方がなかった。
 あいつの肩に付けた咬み痕も、しばらくは残っているだろう。それもまた苛立たしかった。
 シャワーのコックを捻り、濡れた足でバスルームを出る。大きめのバスタオルで軽く水分を取るだけでシャツを羽織った。

 体の疲労は思ったより濃く、ソファに横になるだけで眠気が忍び寄り、瞼が重くなる。

 白い天井、白い部屋。

 見上げたものを思い出して、小さく唇を噛んだ。
 勝手にすれば良い。自分の信じる者を守るために傷付き、跡を残すのなら。ただ、それに紛れるような痕だけは、僕が残したもの。

「下らない……」

 イライラする。視界に入る度に、煙草の残り香を感じる度に。
 いつの間にか僕のテリトリーに侵入し、自分の居場所を確保しているくせに。
 触れた肌は存外に熱く、僕に温度をもたらした。

 そんなもの、いらない。

 体が冷えるのも構わず、ソファに転がったまま眠りに落ちる。風邪を引くかも知れない、なんて危惧は頭の隅に放り込む。
 眠気とは裏腹に、思考は冴えて廻っている。仕方なく、次に会ったときにはどんな嫌がらせをしてやろうか考えることにした。

 

 

 明かりを落として真っ暗な部屋の中、ローテーブルの上で携帯電話が光を放ってメールの受信を知らせる。

 こんな時間に無遠慮にメールを寄越すのはあいつしかいない。
 内容は、確認するまでもなく下らないこと。開かずに消すことも何度もあった。ましてや返事など気が向いたときにしかしてやらないけれど、それでも構わず送り付けてきた。

 手を伸ばすのも億劫で、代わりに送り主であろう奴の顔が思い浮かぶ。
 草食動物の群れの中で、唯一僕に噛みついてくる犬。何度打ち倒しても懲りずに吠え掛かってきて、その度に僕の方が上だと教え込んだ。

(馬鹿な奴……)

 僕に敵うわけもないのに、それでも尻尾を巻いて逃げ出すわけでもない。学習能力がないわけではないのは戦えば分かるのに、負けている記憶はないのだろうか。

 まぁ、また噛みついてきたら打ち捨てるだけだし。

 欠伸を一つと、小さく身震い。いつもの眠りが明ければ、いつもの朝と明日が来る。
 起きたらまずは、不愉快なメールを消さないと。

 真っ白な朝にふさわしく。

 

 

 

 


雲雀さんは髪の毛乾かさない子だと思うよ
そんで風邪悪化して入院するんだ…

ツナさん達は旧時代的学生っぽい感じで
携帯あんまり使わなさそう

ごっきゅんは…電池切れるほどメールして本気でうざがられるといいよ