むっくとひばりさん

 

 

 外では体育の授業の準備が始まっている。じきにあの銀色が見えるはずだ。

 退屈な授業、面倒な書類。でも、いつも通りの生活の中に見付けてしまったそれは、滂沱な砂の中に隠れた光る石のように興味を引いた。それはガラスかダイアモンドか、どちらでも構わない。手にした瞬間にきっと輝きは失せてしまうのだから。

「クフフ…まるで恋する乙女のようですね」

 気配もなく、そこに立っている男が言った。

「他校生は出ていって」

 視線を向けるまでもない。圧倒的な不快感で、苛立つ存在がそこにいるのはわかっている。

「冷たいですね。貴方が寂しがっているから、わざわざ会いにきたんですよ」

「いらない」

 わざとらしい言い回し、現れるタイミング、全て計算しているから性質が悪い。狙い済ませたように僕の機嫌を損ねると、この男は大層楽しそうに笑うんだ。

「手の届かない彼を焦がれるように見ているだけですか、貴方らしくもない。何もしないのなら、彼は僕が貰います」

 またクフフと嫌な笑い。言葉、音、存在、何もかもが忌々しい。

「あれは僕のものだよ。君にはあげない」

 窓に預けていた背を離し、右手にトンファーを握り締める。この男には威嚇にもならないことは知っているけど。

「彼とはもう一度契約してもいい。もちろん、貴方とも。寂しくないように一緒にいさせてあげますよ」

「黙れ」

 一気に間合いを詰め、憎たらしい顔に向け怒りにまかせて右腕を振るうが、実体のないそれは霧のように掻き消えてしまう。

「でも、君と契約するのは一番最後です。話し相手がいなくなっては僕が寂しいですからね」

 クフフ、と笑い声を残して嫌な気配は消えていく。まるで午睡のときに見る悪夢のようだ。



「10代目ぇーっ!!」

 窓の外では、体育の授業。また草食動物が間抜けなことをして、それに彼は駆け寄ってでもいるんだろう。



「あれは、僕のものだ」

 

 静けさの戻った部屋の中、僕は確かめるように独り呟いた。

 

 

 

 

 


たまに現れてちょっかいを出していく骸さん
て感じかな

言葉の何割が真実かは不明