嫌いじゃない

 

 

 

「お前、あぶなっかしいよな」

「君こそ、あぶなっかしいよ」

 

 奇妙な響きの言葉。それでもそれはその対象を的確に表している。

 

「だってお前、自分の命に執着なさそうじゃねぇか」

「君の方が、10代目のために平気で死ねるでしょ」

 

 あたりまえ、と胸を張って言えるのも、同じこと。

 

「でもな、殺されるならお前がいい」

「君が僕を殺してくれればいいのに」

 

 背中を合わせて、屋上に座り込んで。なんて意味のない問答。

 

「俺がお前より強かったら、喜んで殺してくれるかな」

「君が僕より強くないと、殺して貰えないね」

 

 情けない、と呟いたのはふたつの意味。

 

「俺なんか好きでもないくせに」

「僕のこと嫌いだって言うのに」

 

 重なり合う手は熱を交換する。

 

 でも、

 

 

 

「嫌いじゃねぇ」

「嫌いじゃないよ」

 

 

 

 一生やってろ、鳥は呆れながら見守っていた。

 

 

 

 

 


ヒバードも呆れる殺伐バカップルぶり