おまけ　ツナさん視点

　

「やぁ、おはよう」

「げ、ヒバリ…」

「お…おはようございます、ヒバリさん」

　今日は山本が朝練でいないから、獄寺君と二人で登校。でも、さっそく校門に立っているヒバリさんと鉢合わせしてしまった。妙に機嫌良く見えるのは気のせいだろうか？とにかく、獄寺君と何も問題を起こさないことを願うよ。

「今日は二人なんだね」

「あ、はい。今日は山本は朝練で…」

　ヒバリさんがいきなり俺に向かって言うから、すごくびっくりした。驚いたけど、しどろもどろながらちゃんと答えられた。俺、頑張ったよ！

「10代目、こんなやつほっといてさっさと教室行きましょう！」

「う、うん」

　獄寺君に促されて、一応ヒバリさんにもう一度会釈をする、と。上げた視線に入ってきたのは、首に巻かれた不自然な包帯。

「あの、首…どうかしたんですか？」

　好奇心に負けてつい聞いてしまった。今日のヒバリさんがあんまり怖い感じがしなかったせいもあるけど、命知らずだ俺。

「あぁ…これは、しつけのなってない犬に噛まれてね」

「！！10代目、早く行かないと予鈴鳴りますよ！」

「う、うん」

　犬に噛まれたって、何で嬉しそうに言うんだろう。獄寺君と一緒に教室へ歩きながら、そんな疑問ばっかりが頭の中を支配していた。

「…そういえば獄寺君、昨日あの後大丈夫だった？」

　心配で見に行ったはいいけど、ヒバリさんに追い返されたんだった。どうも最近ヒバリさんは獄寺君を特に標的にしてるみたいで、すごく心配だ。

「え？！あの後ですか…何もなかったっスよ」

　今、すごく顔色が変わった気がしたけど、そんなに怖い目にあってるのかな。ああ、でも詳しく聞くのはそれはそれで怖いし、獄寺君も言いたくなさそうだからこれ以上は聞けないや。
　山本がいたら悪気なく聞いちゃいけないところにもつっこむんだろうけど、俺にはその勇気がありません。

「あの…困ったことがあったら言ってね？俺じゃ役に立たないと思うけど」

　でも、心配くらいはしていいよね。友達なんだし。

「俺のこと心配してくれるんですか？！ありがとうございます！…でも、10代目のお手を借りるわけにはいきません。これは俺の問題っスから」

　あのヒバリさんに自力で立ち向かおうとするのは獄寺君のいいところであり、無謀なところだよね…まぁ、目に余るくらいの何かが起こらない限りは、見守るしかないのかな。結局俺のは好奇心半分で、ヒバリさん相手に立ち向かえるとはこれっぽっちも思っていないわけだし。

「獄寺君、ヒバリさんが犬とか飼ってるとか聞いてない？」

「…鳥なら…いや、よそん家の犬にちょっかいだして噛まれたんですよ、きっと」

「そうなのかな。危ないよね、首噛まれるなんて」

　ヒバリさんに噛みついたら、犬の方がただでは済まないだろうし。それにしても、ヒバリさんの日常とかって全然想像できない。

「ま、あいつのことはほっときましょう、10代目」

「…うん、そうだね」

　考えても仕方ない。ほんとはできるだけ関わりたくない人なんだから。
　でも、最近良く声を掛けられてる気がする。その度に獄寺君が噛みついて…いや、獄寺君は犬じゃないけど。

　もしかして、からかわれてるのかな。俺じゃなくて、獄寺君が。そう考えるとなんとなくわかる。
　なんだ、そしたらやっぱり仲良いんだ。名前で呼ぶほどの仲、ってわけじゃないよな…あれ絶対わざとだもんね。獄寺君が嫌がったり慌てたりするのを狙って言ったんだ。

　喧嘩するほど仲が良いって言うのかな。ヒバリさんが獄寺君で遊んで…あれ、そしたら獄寺君はどうなんだろう。

「…10代目？」

「なんでもないよ、行こうか」

　俺はそこで考えるのをやめた。この件は迷宮入りで良いよ。



　深く立ち入っちゃいけない気配を、そこで感じたんだ。

　

　

　

　

　

察しの良いツナさん(超直感)は
首を突っ込む前に撤退します

世の中には知らない方が良いこともあるんだよ

ほとんど気付いてるようなものだけど