10年後獄寺+中学生雲雀 捏造

 

 

 愛してるなんて言ったら殺す

 

 

 学校は休日、けれど僕は風紀の仕事を片付けるために応接室にいた。デスクに腰を預け、積まれた書類を分類する。
 嫌な予感はしていた。廊下を走って近付いてくる足音、そんな命知らずは一人しかいないはずだった。でも、何処か違う。

「ヒバリ、いるか!」

 デスクから見て正面、躊躇いもなくドアを開けて入ってきたのは、黒いスーツを身に纏った見知らぬ男。

「誰、あなた」

 知っている奴と良く似た毛色。面差しも似ていた。

「…俺だ」

 息を抑えて絞り出された声は低く鼓膜を叩いた。

「知らない」

 何より身の丈が彼とは違いすぎる。一晩でこれほど育ったなんて話は聞いたこともないから、やはり別人だ。

「…ヒバリ…」

「部外者は立ち入り禁止だよ、出ていって」

 そうでなくても風紀の仕事で立て込んでいる。余計なことで時間は取られたくない。

「聞いてくれ」

 正面から肩を掴もうとしてくる手を、トンファーで跳ね飛ばす。

「近寄らないで」

 見上げることになるのが、この上もなくむかついた。

 

 

 

 まずい。とても話を聞いてくれるような雰囲気じゃない。というか、警戒されている。
 10年バズーカの説明からしないとならないのに、それどころじゃなさそうだ。ましてや未来のことなんて話しても信用してくれるわけもないだろう。
 けれど、毛を逆立てた猫のような雲雀の様子は、変わりないようで見ていて安堵する。

「わかった、近付かねぇからそのまま聞け」

 弾かれた指先が痛い。けれどそんなことにも雲雀らしさを感じてしまう。

「俺は、この時代より10年後の獄寺隼人だ」

 ぴくりと雲雀が反応したのは見逃さなかった。

「何それ、ふざけてるの」

 空気を介して雲雀の苛立ちが伝わってくるようだった。

「冗談でも悪ふざけでもなんでもねぇ、事実だ。未来から来てんだよ」

「ふぅん」

 目を細めて、上から下まで見定めるように視線が刺す。

「わかって…くれたか?」

 そうなら拍子抜けだが、話が通じたならそれでいい。

「何で10年も咬み殺されないで生きてるの」

「そこかよ!!」

 しまった、雲雀もある意味天然入ってるんだった。緊迫した空気が一気に崩れる。

「…ったく」

 混乱した頭を落ち着かせようと、懐から煙草を取り出し、ライターで火をつける。

「何だよ」

 煙を吸い込んで目を向けると、雲雀がこちらを睨んでいる。

「別に」

 すいと視線は外されたが、いまだに雲雀に睨まれていると生きている心地がしない。10年前の雲雀にさえ勝てる気がしないのは、刷り込みの領域だと思う。

「何をしに来たの」

 ぽつりと問われ、苦笑が浮かぶ。実際、何か目的があったわけじゃない。ただ、来ないではいられないだけだった。

「お前の顔見たら安心した」

 吐き出した煙と、安堵の溜め息が混じる。

「10年経っても馬鹿は治らないんだ」

「な…ッ!」

 馬鹿にしたような笑みに、本気で怒りが込み上げる。こっちはそれどころじゃねぇってのに、こいつは相変わらずのマイペースで俺を巻き込んでいく。そんなところも変わりなくて。

「……ヒバリ」

 胸を突くような痛みに目を細めると、煙の向こうは懐かしい光景で。

「なに」

 中学生の雲雀は今と変わらず並盛に君臨しているけど、それは触れ合い始めた頃の姿。お互いの気持ちも立場も整理できず、顔を合わせたら喧嘩ばかりしていた。

「…あの、な」

 躊躇いながらも言い掛けた言葉は、眼前をよぎったトンファーに遮られて消える。

「それ以上何か言ったら咬み殺すよ」

 きり、と引き締められた唇が全てを物語っていた。あぁ、この頃から俺もこいつも何かは感じていて、それを形や言葉にはできずにいたのか。

「言わねぇよ――けどな」

 一撃で飛ばされ床に落ちた吸い殻を拾いながら、半歩近付く。灰皿にそれを落としたときにはもう少しで手が届く距離に来ていた。それがあの頃の間合いより少し遠いのは仕方ないが、惜しかった。

「近付くなと言ったはずだよ」

「ッ!」

 頭の高さに迫るトンファーをかわして、床に膝を付く。昔にもこんなことがあったと思い出す内に反応が遅れ、肩に靴の裏がめり込む。

「…ってぇ」

 蹴り飛ばされるかと思ったが、手加減されたのだろうか、そのまま雲雀を見上げる。

「自分の口でちゃんと言えるようになってから出直しなよ」

 それは、強烈な既視感で瞳に残る。ずっと見上げていたのは彼の姿。まるで忘れていたようだった。

「10年前の俺に伝言か?」

 この時代の自分といれ違いで帰ってしまう俺には難しい課題だ。

「別に、いらない」

 ふいとそらされた横顔も、細い体躯も、抱き締めたくなる衝動に駆られる。けれど雲雀がそんなことを許してくれるはずもなく、今は肩に掛けられた体重を感じるだけだ。

「変わりねーな、ヒバリ」

 どうしても笑みが唇に浮かぶ。

「…これくらいは許してくれよ」

 細い足首を手に取り、靴の甲に口付けた。びくりと固まった瞬間に手を離して立ち上がる。

「…変態」

 距離を置く間もなく、頭部にトンファーが迫る。辛うじて掠めただけでかわし、間合いを取った。

「あぶねぇ…」

 今のは当たったら怪我どころじゃ済まないだろう。雲雀の目が明らかに本気だ。

「君は、今咬み殺しておいた方がいいみたいだね」

「――ッ待て!」

 まずい。不機嫌というオーラが漂っているようにさえ見える。

「待たないよ」

 気分屋で、一触即発で、10年前の俺は良く咬み殺されないで生きていたもんだ。
 だが、そんな俺の人生もここで終わりかとちらっと思う。

 けれどあの頃と今とは、気付いていなかったとしても気持ちは変わらず。

 

 愛してるぜ、ヒバリ――

 

 

 

 

 


10年経って下僕度が上がってる獄寺隼人(えー)

とりあえず現代に来た大人獄がどうしてるか気になるんだけどね

中学生の二人はまだまだ発展途上なので
好きとか嫌いとか以前の問題だから
ある意味大人の関係になっちゃってる大人獄から見れば
もどかしいんだと思うんよ

でも未来のことなんて知りたくもないし
変化も望まないのが今の雲雀さんなのでした

結局がきんちょなごっきゅんが最もへたれで賞