つなむく小ネタ
冬の基本。
冷たい風が頬を撫ぜる。彼の下校を校門で待ち伏せてみたものの、やはり怒らせてしまったようで。コンパスの大きいと言えない足を大股に踏み出しながら、綱吉は僕の数歩先を歩いていた。
「くしゅん!」
鼻が冷えたせいか、堪えきれず小さくくしゃみをしてしまった。恥ずかしい。綱吉も驚いたようにこちらを振り返っている。
「お前…バカ!」
「……え?」
前を歩いていた時のようにずかずかと僕の方に歩み寄り、綱吉の手が僕の頬を包む。
「どーせ寒い中上着も着ないで待ってたんだろ。だから来るなって言ったのに……」
お人よし、そんな言葉が頭を支配する。僕は安堵に唇を綻ばせて、目の前の可愛い人を抱き締めようと手を伸ばした。けれど、急に襟首を引かれてバランスが崩れそれは叶わなかった。
ただ、綱吉の顔が随分と近くにあって、どうしても意識してしまう。
「ちょっと屈んでろ!」
「は、はい」
怒ったような声に思わず身が竦むけれど、言われたとおりに上半身を綱吉の方に傾けて静止する。何をするのだろうかと見ていれば、彼の首に巻いていたマフラーがふわりと僕の首に掛けられる。
「待ってるつもりならちゃんと暖かくしとけよな」
言葉と共に掠めるように触れたのは、僕の体を温めるには十分で。
「綱吉君───ッ!!」
「うわあっ!!」
力いっぱい彼を抱き締めたのは言うまでもありません。
冬は問答無用でいちゃつきイベントが発生するものです。