つなむくっぽい 短編
味見
「…ん」
隣に座って、どうしてこうなったかは忘れたけど、骸にキスをしている。骸も屈んでくれているけど、一生懸命背伸びして20.5cmの身長差と戦うのはちょっと、いやかなり情けない。
「あ」
ちょっとだけ空いた唇の隙間から舌を差し込もうとして、甘い匂いに躊躇った。
「なん、ですか」
長い睫毛の下から不満そうな赤と青の視線。
「骸、お前、またチョコ食べてただろ」
「ええ、つい今まで君の隣で」
テーブルの上には空になったチョコ菓子の箱。あ、俺まだ食べてなかったのに。
「口直ししろ」
もう一回唇を触れ合わせるだけでキスを終えて、空の箱を握り潰す。ゴミ箱に投げるけれど、いつも結局拾いに行くことになるんだ。
「おや、味見はしなくていいんですか」
クフフ、なんて楽しげな笑い声が背中の向こうから聞こえてくるのには無視を決め込む。わざとだって、わかってるんだからな。
「また買ってこいよ」
俺の小遣いじゃ手が出ないちょっと豪華な限定コンビニ菓子。でも、目当てはそんなもんじゃない。
「そうですね、明日にでも」
下らない約束はそれでもいつも守られるから。
「今度は一人で食うなよ」
先手を打っておかないと、いつまで経っても俺はチョコの味のキスしか知れない。
「それは綱吉くん次第ですよ」
甘い、笑顔は全部お見通しか。
骸との化かし合いは、こいつとの付き合いが終わらない限り当分続きそうだった。
骸さんがいつもチョコを食べているのはわざとです