短編連作3 患ってます

 

 呼吸

 

 

「呼吸が、ですね」

――できなくなることがあるんです。

 そう伝えると、綱吉はただでさえ大きな目をより丸くして、心配そうに眉を歪めて俯いた。

「……も…」

 零れ落ちた音を拾おうと、前髪の向こうの唇を注視する。

「…俺も、あるかも」

 制服の胸元を小さな手が握っている。皺になってしまいそうだ、と意識を持っていかれた時に、不意に君の声が飛び込んできた。

「……と、このへんがきゅうってして、心臓がおかしくなって、息できなくなんの」

 病気かなぁ?と呟く君が顔を上げたら、思いの外僕が近付いていたようで、その距離にどくんと鼓動が跳ねる。

 待て、今何と言った?

 耳が無意識に聴き取った彼の音を脳内で再生する。そう、彼は。

――骸のこと、考えたりすると――

 あぁ、なんということか。間違いなく僕と彼は同じ症状で、同じ病に掛かっている。

「ボンゴレ」

 手の届く距離にいたせいだろう。肩に手を掛ければ僅かな力で腕の中に収まった。

「な、なに?」

 その上擦った声も、なんて。

「残念ながら、僕達は不治の病に掛かってしまったようですよ」

「え?!」

 なんて、愛しい。

 ねぇ綱吉くん、この場合キスは特効薬になると思いませんか?

 おやおや、悪化してしまったようですね。クフ!

 

 

 

 

 


恋しちゃったらしいよ