「みずほ点訳」ホームページ

「みずほ流」点訳入門教室

練習問題



  練習問題 1

言葉と言葉の間は2マスあけてください。

 烏  たぬき  スカンク  ハイエナ  くろさい  蛍  猪  マントヒヒ  山猫  カメレオン
 もぐら  ザリガニ  ミドリガメ  みずくらげ  ガラガラヘビ  パンダ  ペンギン
 ラッコ  ほっけ  モルモット  おっとせい
 カンガルー  マングース  チンパンジー  ビーバー
 鯱  肺魚  ジャッカル  ピューマ
 シェパード  ウォンバット  フェレット  ディンゴ



  練習問題 2

長音と助詞の「は」「へ」に注意して打ちましょう。
墨字で行頭1字下がっているところは2マス下げてください。
■はマスをあける印です。


 夏休みも■もう■終わりですが■まだ■まだ■暑さが■続きそうです。
 年々■暑さが■身に■こたえるような■気が■します。
 年齢の■せいばかりでは■ないかも■しれません。
 地球■温暖化の■影響でしょうか。
 ヨハネスブルグの■環境■サミットで■世界の■国々の■代表が■協議■して■います。
 利害の■対立も■報道■されて■いますが、■有効な■調整が■なされる■ことを■期待■します。
 私たちは■日常■生活の■中で■可能な■ことを■少しずつでも■気長に■やって■いくしか■ないのでしょうね。
 でも、■電力■消費を■減らそうと■言いながら■クーラーの■スイッチが■容易には■切れません。
 せめて■今日は■掃除機を■かけるのは■やめよう、■と■いうのは■ちょっと■ちがったかな。



  練習問題 3

数字の練習ですが、長音、助詞の「は」「へ」にも気をつけて打ってください。
行頭2マス下げて問題番号、ピリオド、1マスあけて文章に入ります。
ピリオドは日本文の句点と同じ形です。
数字の中のマスあけは■を付けていないので、ご自分で必要と思われるところであけてください。


 1.■6点■点字は、■1825年に■ルイ■ブライユに■よって■考案■された。■■日本では■1890年、■日本語を■表せるように■翻案■された。

 2.■今年は■9月■15、■16日と、■22、■23日が■2週■続けて■連休だ。■■土曜日も■入れれば■3連休が■2回■続く■ことに■なる。

 3.■コンサートは■6時■15分■開演なので■私たちは■その■1時間■40分■前に■行って、■10列目の■席を■7人分■確保■した。

 4.■アルファベットは■26文字。■■仮名は■50音と■いうけれど、■実際には■48文字です。■■今■普通に■使って■いるのは■46文字ですね。

 5.■近鉄■バッファローズの■タフィ■ローズ■選手の■2001年度の■成績は、■打率■3割■2分■7厘、■55本塁打、■131打点、■9盗塁。■■ホームランは■日本で■1位■タイの■記録だそうです。

 6.■長崎の■出島は■面積■およそ■130アールの■扇形。■■1634年、■ポルトガル■商人を■居留■させる■ために■埋め立てた■人工の■島で■ある。

 7.■寛永■14年、■肥前■島原と■肥後■天草の■農民が■切支丹■信者と■結んで■反乱を■起こした。■■16歳の■少年を■頭と■した■約■37000人の■抵抗に、■12万余の■幕府の■大軍は■4カ月も■苦戦を■強いられた。

 8.■外国■小説を■読むと、■ヤード■ポンド法で■躓く。■■6フィート■4インチの■男、■3ポンド■8オンスの■肉、■5300エーカーの■土地、■100ブッシェルの■小麦などと■言われても、■見当が■つかない。■■1インチは■1/12フィート、■1オンスは■1/16ポンド、■1エーカーは■4840平方ヤードだそうだ。■■ああ、■イギリスの■少年■少女たち、■頑張れ。

 9.■太陽の■表面■温度は■約■5800度、■コロナの■温度■約■100万度。■■半径は■696,000キロメートルで■地球の■109倍。■■平均■密度■1.41。■■地球からの■平均■距離■14960万キロメートル。

 10.■なぞなぞです。■■300円■持って■買い物に■行き、■50円の■お菓子■1個と■130円の■ジュース■1本を■買いました。■■おつりは■いくらだったでしょう。



  練習問題 4

つなぎ符が必要な数字はどれとどれ?

「三方一両損」
「一流大学に落ちて二浪した」
「2000立米の体積と50アールの広さ」
「10万両の儲けとは、お主もワルよのう」
「そのうちの3割は、お代官様のものでございますよ」



  練習問題 5

どれが数字で、どれが仮名か、考えてみてくださいね。

「三重県四日市市の3丁目3番地に住んでいる、田中六郎さんは、6人兄弟の一番下」
「お城の二の丸・三の丸が、敵軍の一斉攻撃で、一瞬のうちに一部を残して壊滅した」
「会議の資料のコピーは、一部を第二課の課長に、三部は一般職の社員に配布」
「一杯、二杯、と飲むうちに、お腹が一杯になってしまったって? 食事を一番大切に考えないで、お酒一辺倒だと、この五人の中で一番目に病気になるよ」



  練習問題 6

数字を含む語のうち、どれが数字で、どれが仮名か、また、どれが和語で、どれが漢語か考えてやってみてください。
つなぎ符の必要なところにも気をつけて。


 1.■一昔■前までは、■100円も■あれば、■一食分の■食事くらいは■十分に■まかなえた。■■今は■五百円玉■一つでは、■なかなか■お腹は■一杯に■ならない。

 2.■三軒■先の■お宅は、■五つの■男の子が■一番■上で、■その■下に■四才、■三才の■女の子が■二人、■一番■下は、■二卵生■双生児の■男の子だって。■■三男■二女の■全部で■五人。

 3.■マンションは■二部屋が■洋室で、■一部屋が■和室の■四畳半、■リビングは■十畳ほどだから、■二人と■猫■一匹が■住むには、■まあまあの■広さかな。

 4.■十月■四日は、■母の■五十歳の■誕生日だから、■花を■一束■買って、■三ツ星■レストランにでも■食事に■行こう。■■料理■五品の■コースは■多すぎるかな?

 5.■「一面の■菜の花が■美しい」なんて、■四十■男に■しては■詩人の■一面も■あるのね。



  練習問題 7

アルファベットの練習です。外字符・外国語引用符のどちらを使うか考えて打ってください。
アルファベットのあとに仮名が続くために必要となるマスあけ、外国語内部のマスあけは、■で表示してありませんから、ご自分で必要と思われるところに入れてください。


 1.■IT■革命

 2.■1970年の■EXPO

 3.■GDPに■占める■原油■輸入の■比率

 4.■M■選手は、■身長■184cm、■体重■76kg。

 5.■水■400ccに■砂糖■50gを■加えて■煮立たせる。

 6.■Micronesiaと■Polynesiaと■Melanesiaの■位置■関係が■よく■わからない。

 7.■試合■終了を■意味■する■game setと■いう■言葉は、■和製■英語らしい。

 8.■CATVと■いうのは、■cable televisionの■略です。

 9.■N市の■市民■オーケストラが■F■先生の■指揮で、■Alhambraの■思い出、■O Mio Babbino Caroなど■13曲を■演奏■するそうです。

 10.■当社は、■New Yorkと■Hong kong、■国内では■Tokyoと■Osakaに■店が■あり、■2、3年の■うちに■Singaporeと■Los Angelesにも■出店■する■予定です。



  練習問題 8

 1.私はよほどの大雨や体調の悪い日以外は毎朝6時に起きて犬と散歩に出かける。
 2.散歩に行くと近所の犬や猫やあるいは鴉や雀にあちこちで出会う。
 3.私の目にも犬と猫と鴉と雀の区別はつくし右隣の家のポメラニアンと向かいの家の柴犬の違いはわかるが、隣の犬とさらに2軒向こうのポメラニアンの区別はつかない。
 4.毛色も大きさも鳴き声もそっくりな2匹は実は親子なんだそうで、見分けられなくて当然のような気もするが、うちの犬にはちゃんと区別がつくらしいのだ。
 5.まあよく考えれば私にだって隣の奥さんと娘さんの区別はつくのだから、それほど不思議に思わなくてもいいのかもしれないとは思うのだが。
 6.犬や猫はそれでも形や色や大きさが違ったりいつもいる場所がだいたい一定だったりでおおよその見当はつくのだが、鴉や雀はさっぱりわからない。
 7.散歩に出かける直前に庭に3羽の雀が来たのを見たが、家の反対側にある玄関を出た途端に出会った2羽がさっきの3羽のうちの2羽なのかどうか。
 8.鴉は自分あるいは自分の仲間に危害を加えた人間を覚えて後日攻撃をしかけると言われるが、それははっきり人間ひとりずつの識別ができるという意味であり、これは大変な能力だ。
 9.いわゆる文明と引き換えに、人間は他の生物が持つさまざまな感覚のかなりの部分を失ったのだろうが、それは少しつまらないような気もする。
 10.鴉の1羽ずつを、あれは昨日の喧嘩で敗けたヤツだとか、コンビニの裏でゴミを見張ってたヤツだとか、この2羽は去年生まれた子とその彼女だとか見分けられ、庭にくる雀に500メートル先の公園で会ってもそれとわかって挨拶できれば、それはそれで結構楽しいのではなかろうか。



  練習問題 9

点字のカギ括弧は、開きも閉じも同じ記号で3、6の点です。
墨字のカギ括弧と同じように、中の言葉と続けて使います。
閉じカギのあとに助詞・助動詞など続けるべきものがあれば続け、自立語がきていれば切ります。
疑問符(?)は、2、6の点です。


 1.僕は中学生なのだけれど、去年あたりから背丈ばかり伸びて、いまは175センチくらいにまで伸びちゃった。
 2.おばあちゃんなんかは、身長145センチで、しかもこのごろはどうも縮んできているようなので、僕が立ったままで話していると、首が疲れるから、座ってちょうだいなんて言われちゃう。
 3.お母さんは、僕の靴が玄関に並んでいるところを見ると、「ボートが2艘並んでいるみたい」だって。そんなふうにいわれるのは、ちょっと心外だけれど、僕の靴のサイズって、27センチだものな、イアン・ソープほどじゃないけど、仕方ないことかもしれないね。
 4.でも、僕の友だちあたりでも、サイズ30センチなんていう、Bigな足のやつがいる。そのあたりのお店じゃ、もう靴が見つからないから、舶来品のお店で、高いものを買うことになるらしい。SFに出てくる、大足の巨人みたいなものだね。
 5.僕もそんなふうになったら、たいへんだから、このあたりで、足が大きくなるのは、止まって欲しいところだ。でも、隣のおばさんときたら、僕を見て「まあ、将来が楽しみですこと」だってさ。足が大きいと、将来がどんなふうに楽しみなのだろうか?



  練習問題 10

補助動詞だけでなく、形式名詞や助詞・助動詞、仮名遣いにも気をつけて打ってみてください。

 1.押し入れを片付けていたら、古い手紙の束が出てきた。そんなものを読んでいると日が暮れてしまうと知ってはいるけれど、放っておくことはできない。読んでいくうちに、記憶の底に埋もれていた過去の映像がみるみる鮮明な色を帯びてきたり、逆に、どう考えてみてもそんなことがあったという記憶はない、あるいは、自分が覚えている事の顛末はこうではなかった、と思うことも出てくる。

 2.人間の記憶というのは怪しいもので、長い年月の間にすっかり消えてしまったもの、妙に生々しく残っているもの、自分に都合のいいように変わってしまったものなどが混然となっていて、その集合体を自分の確かな記憶だと信じている。それは場合によっては相当怖いことである。

 3.たとえば、ご主人は先月5日の午前2時すぎに帰ってきましたね、と弁護士にきかれたとする。確かに先月の前半は帰りの遅い日が続いていて、そういえば夜中にトイレに起きていった折に、帰ってきたばかりの主人とばったり会ったことがあるような気はする。よく思い出してみればあれは息子の遠足の前の晩で、朝早く起きて弁当を作ってやらなきゃと思っていた日ですから、確かに5日です、間違いありません、と証言をする。

 4.ところが実は、それは大変な思い違いであって、日にちが違うとかいう問題ですらなく、そもそも単なる夢であったということもありうるのである。後日、他の証拠によってそんな事実はなかったとわかり、奥さん、でたらめを言ってかばってもご主人のためにはなりませんよ、と言われてしまう。あなたの偽証により裁判官の心証はきわめて悪化。さてご主人の運命はどうなっていくのか。

 5.あるいは、8年前の10月14日にあなたは30歳くらいの男性に道を教えてあげましたか、と刑事にきかれたとする。だがそれがよほど変な男であったとか、特別いい男であったとか、行き先がとんでもなく変わっていたとかいうのでない限り、大して珍しくもないようなことについて、いちいち覚えているわけがない。でも、それによってしかあなたのアリバイが証明できないのだとすると、これはおおごとである。窮地を救ってくれるような記憶力がほしいものだ。



  練習問題 11

 1.どこのコンビニでのことだったか。何人もの中学生が、店の駐車場のあっちこっちにグループを作ってたむろしていた。

 2.どのグループも人数はせいぜい3、4人で、全部で3グループ。そのうちの1グループには、女の子もいる。どうやら酒の回し飲みをしているようだ。タバコを吸っている子もいる。

 3.もう夜中の12時を過ぎている。こんな時間に中学生が、と考えるのは、認識不足というものである。いまやコンビニの駐車場は、中学生の社交場と化している。どこへも行く場所がなく、それほどお金を持っているわけでもない、そのうえ家にいて親と顔を突き合わせているのも願い下げだとなれば、24時間営業のコンビニ駐車場くらいしか、友人と集まる場所がないのかもしれない。

 4.大人としては、こういう場合、やはり「君たち、こんなところにいないで、早く家へ帰りなさい」くらいは言ってやるべきであろう。しかし、どの大人も「そんなことを言おうものなら、どんな目にあわされるかしれたものじゃない」と思っている。「この際、若い連中にはがつんと言ってやらねば」とはわかっていても、それを行動に移す大人はあまり、いや、ほとんどいない。「どうして、自分がそんなおせっかいをやかなければならないんだ?」というのが案外ホンネかもしれない。

 5.そんなこんなで、誰からも注意してもらえない、迷惑そうな視線は向けられても、心から心配してはもらえない、そんな子供たちがあちこちで、真夜中、なんとなくコンビニに群がっている。

 6.親は、そんな時間帯に、いったいどうしているのだろう? 自分たちも夜中にどこかへ出かけているから、子供もどこで何をしていてもかまわない、それが自主性の尊重だとでも思っているのだろうか?



  練習問題 12

 1.今般の大雨により各地で被害甚大と聞くが、幸いにしてこの地域では、数十年ぶりの規模と言われる河川の増水にもかかわらず、ここの堤がよく耐えて人々と田畑とを守った。

 2.こうして堤に立ち、ゆったりとした流れを見ていると、いかにも穏やかにして豊かな風景に思えるのだが、水はひとたび狂うと、人間の作った柔な構築物などひとひねりにしてしまう力を持っている。

 3.およそ百年ほど前、この地に生を受け、若くして実業界に名を遂げたある人物が、私財をなげうってこの堤を築かせたものだと伝えられている。

 4.現代に較べて、かつてはそうした話が各地にあった。もちろん滅多にないことであるからして、美談として語り継がれている。しかし少数といえどもそういうことがあったというのは、単に公共事業が頼むに足りなかったからなのか。それとも、財をなした人物の男気の問題だろうか。

 5.この治水事業は、大富豪と言われた彼にしてはじめてなし得た事業であったが、幾多の困難を乗り越え、彼をしてそれをなさしめた確固たる意志は一体那辺より生じたものであろうか。

 6.彼がいまだ幼くしてこの村に暮らしていた頃、ある年、台風による暴風雨でこの川が氾濫、村は一瞬にしてほぼ全域が水没したという。その際彼の家では、母親と乳飲み子であった妹とが命を落としている。

 7.もちろん、彼の家ばかりではない。村の半数の家が犠牲者を出し、家屋や田畑に大きな被害を出さなかった家は一軒としてなかったという。不幸にして、それは、この川のほとりの村に何百年にわたって繰り返されてきた歴史であった。

 8.この繰り返しを何とか終わりにしたい、というのが彼の悲願であった。しかし、いかに資金があるとはいえ、周囲の協力を得ずしてそんな大工事ができるはずもない。当初は、労多くして先の見えない計画に役所も村人も決して協力的とは言えなかったという。

 9.粘り強い説得と、当時、期せずしてこの地を襲った中程度の大雨の脅威によって、ようやくにして着工にこぎつけたのだが、技術的な問題もあり、完成までには三十年近い時日を要している。彼は、工事半ばにしてこの世を去ることになるが、その後この地に大洪水の被害の記録はない。

 10.だが脅威は自然界からのみやってくるわけではない。長期間の平穏が人々をして災害の恐ろしさに鈍感ならしむるということもある。先人の努力に守られている事実さえもが、えてして忘れられてゆく。そうして慢心が次なる悲劇を生むかもしれないのだ。



  練習問題 13

 1.文蔵が玄関を入るか入らないうちに、奥から、お帰りなさいまし、と女房がころがるように出てきた。そういうときは、何やら聞かせたい話があってうずうずしているのだ。

 2.昨日ね、坂の上のお屋敷に泥棒が入ったんだそうですよ、と女房は早速報告を始めた。いつもなら、すぐに夕飯になさいますか、とかなんとか一言あって然るべきところだが、今日はそれさえない。

 3.それがね、変なんですよ。奥様は昨日はどこぞのお屋敷のお茶会だとかでお出かけなさって、旦那様はいつものように書斎でお仕事なさっていらしたそうですよ。ご隠居様も離れにいらしたのに、どなたも気がつきなさらなかったんだそうです。

 4.書生さんたちや女中や下男ももちろんお屋敷のあっちこっちにいたはずなのに、だあれも怪しい人影のひとつも見なさらず、物音も聞きなさらなかったとか。奥様が夕刻お帰りになって、奥のお部屋においでなさったら、そこに置いてあったはずの大きな長火鉢がね、そっくり消えていたんですって。

 5.文蔵は何か口を挟もうとしたが、女房は、お待ちなさい、あなたは何にも知らないのだから黙って聞いてなさい、とばかりに、手で制して、報告を続ける。

 6.そのお部屋はね、長い廊下の一番奥で、その手前には奥様や旦那様のご寝所、居間なんかのお座敷が並んでるんですけどね、廊下の庭に面した側のガラス戸には全部鍵をかけていなすったし、奥のお部屋の窓にも内側からちゃんと鍵がかかっていたそうですよ。

 7.どこも壊されたり荒らされたりしていないし、他には何も盗られなすったものはなくて、ただ長火鉢だけがきれいさっぱり消えてしまったんですって。不思議でしょう。いくら立派な長火鉢だったにしても、考えてもご覧なさい、所詮長火鉢ですよ。だから余計気味が悪いと、奥様もご心配なすって。

 8.夜中ならともかくも、昼日中にそんな大きなものを運び出すなんて、普通じゃできませんよ。それでね、はじめは誰か家の中の者の仕業じゃあないかってね、旦那様も奥様もお思いで、あれこれ調べなすったらしいけれど、結局わからなくて、今日になって警察に通報なすったんですって。それでもう大変な噂で。

 9.長火鉢を盗み出すどんな必要が誰にあったというのだろう。文蔵は、坂の上の屋敷の派手好みの奥方と、一度か二度しか見かけたことのない影の薄い主の顔とを思い浮かべようとした。が、主の顔は鮮明な像を結ばずに霧散した。

 10.長火鉢には何か大変な謎が秘められているのかもしれない。文蔵の好奇心もぐいっと頭をもたげてきた。話の続きは飯のあとにしなさい、とも言いそびれ、お風呂になさいますか、という話もなく、玄関に立ったまま女房の話はさらに続いた。



  練習問題 14

点字の丸括弧は、開きも閉じも同じ記号で2、3、5、6の点です。
墨字の丸括弧と同じように、中の言葉と続けて使います。
閉じ括弧のあとに助詞・助動詞など続けるべきものがあれば続け、自立語がきていれば切ります。


 1.最近の忘れっぽさといったら、ありゃしない。メガネが見つからないので、部屋中くまなく探し回って、ない、ない、と大騒ぎしていたら、自分の頭の上にひっかかっていたのだから、みっともないことこのうえない。

 2.複数の仕事を片付けなくてはならないときなど、ひとつをやり終わらないうちに、あとのいくつかのことは、すっかり影も形もなくなって、おや、私はなんだってまた、座敷で雑巾なんか手にしているのだろうと、まことに所在なく、あれこれ記憶を手繰ってみると(といっても、ほんの2、3分のあいだの記憶にすぎないのだ)、そういえば私は、廊下の雑巾がけをしなければ、と思いながら、そうそう、座敷のカーテンを冬用のものに替えないとならない、なんて思ったとたんに、雑巾のほうは、あっけなく忘れ去って、では、カーテンを滞りなくつけ替えたかというと、こちらのほうも、座敷に入るか入らないかに、蛍光灯が切れていることを思い出し、ああ、取り替えなくてはいけなかったんだ、と思ったとたんに、カーテンはとんでもなくはるか彼方に飛び去ってしまった、というわけだ。

 3.雑巾がけがなんの問題もなく遂行されるか否かは、私の家事へのやる気ではなく、ひとえに記憶力にかかっている、といっても過言ではない。いまのところ、最終的には、なぜ雑巾を持っているのか、思い出せなかったことはないので、廊下も無事、ほこりまみれにならなくてすんでいる。しかし、いつか、雑巾を手にしたまま、途方にくれる日が来ないとも限らない。

 4.まことに心許ない我が記憶力ではあるけれども、こんなにはやくボケがはじまるのではかなわないから、なんとかこれ以上悪くならないよう、日々頭を使わなくては、とは思うのだが、脳細胞の消滅は途方もない速さで進んでいるに違いない。

 5.「お母さん、お弁当、作らなかったの?」「え? 今日から中間試験じゃなかったっけ? 午前中しか学校、ないでしょ?」「バカ言わないでよ。試験は来週から」「ちゃんと言わないあんたがわるいんでしょ」「なに、しようもないこと言ってんの。カレンダーに書き込んだの、お母さんじゃないの」「あら、ほんとだ。書いたことを忘れるんじゃ、覚えてられないのも当然だ」「コンビニでお弁当買うしかないなあ。ほんとに頼りないんだから」・・・こんな会話が珍しくもなくなった昨今の我が家である。



  練習問題 15

 1.パソコンというものが世間にほどほど行き渡って、パソコンでの点訳が広く行われ始めてまだ10年くらいにしかならないが、今や多くの点訳者が点訳はこうやってやるものだと思い込んでしまっている。確かにパソコンはこのうえなく便利で使いやすい。

 2.どういうところがどのくらい便利かというと、点訳者側から申し上げれば、まず修正が非常にしやすい。手打ちの頃は、一度打ってしまった点を読者の指に触れないように消そうと思うと、ちょっと熟練が必要だった。

 3.それでも1点や2点なら、水で7倍くらいに薄めた糊をほんの少し塗り付けて、紙が柔らかくなったところで点を押しつぶし、平らな状態で糊が固まるようにすればどうにかなった。

 4.が、たとえば一字抜かしてしまったとか、マスをあけるのを忘れたとか、この言葉は濁るのかと思ったら濁らないんだって、というようなとき、マスをずらすのは非常にやりにくい。結局、その一文字のために1枚打ち直すことはしばしばだった。

 5.紙の裏表を間違いなく打ち終えるのはなかなか難しい。打ち直したつもりでまた別のところを間違える。悪魔に魅入られたように必ず同じところで間違えを繰り返し、その連鎖から抜け出られなくなったりもする。

 6.マスがずれることによって行がずれこむことがある。そうすると、あとは段落があろうが章が変わろうが、ページ替えの箇所があるまではずっとずれが吸収できない。そのうえ下手をすると48ページにおさまっていた前の章が49ページの1行目まで入り込んでしまうかもしれない。こうなったらページ替えの区切りがあっても何の役にも立たない。紙の表と裏がどこまでもずれ続けていく。

 7.手打ちのときには、読みのわからない言葉やちょっと自信のない言葉に出くわしたら、そのあとを打ち続けるわけにはいかなかった。その言葉に何マス使うかわからないうちは、次を打ち始められないのである。

 8.手近な辞書には出ていないような専門的な言葉や地名、人名その他、図書館に通ってすっかり調べきるまで何日もそのまま置いておかなければならなかった。だからまずその本を最後まで読み通し、調べるべきことは下調べをして、その上で打ち始めるようにと言われていた。

 9.その点パソコンならいくらでもどうにでもなる。プリンターにかける前ならどんなに大幅に書き換えてもOKだ。そう思うと気持ちもとても楽だから、どんどん打ち進める。堅苦しい気分が吹き飛んでしまった。おまけに検索もできるから、この言葉、前に出てきたときなんて打ったっけ、というのも簡単に探し出せる。

 10.そのかわり、点訳に臨む姿勢というか心構えがどうしても安易に流れやすい。緊張感がなくなる。とりあえずこういうふうに打っておこう、そのうちちゃんと調べよう、この次図書館に行ったときに、と思いながら、すっかり忘れてしまうこともままある。他人のことだと、どうしてそんなこと、と思うかもしれないが、パソコンに慣れ親しんでくるほどそういうのがとても危ない。



  練習問題 16

どれが接尾語で、どれが造語要素かといった分類より、語と語のくっつき具合、拍数、連濁などで切れ続きを考えたほうが良いかもしれません。

 1.前々からいけ好かない素浪人だと思っていた。日がな一日おんぼろ長屋の薄暗い部屋に閉じこもっているものだから、隣の金棒引きのばあさんが、「薄っ気味悪いったら、ありゃしない、あれは、凶状持ちにちがいないよ」などど、聞こえよがしに、近所の女房たちと目引き袖引きやっていたのも無理はない。

 2.なにしろ、このあたりは、市中のどんづまり、小汚い長屋が、そこに住んでいる人間たち同様、今にもぶっ倒れそうになりながら、ひん曲がって立っているようなところだ。つまりは、世間様の吹き溜まり。親切ごかしの似非人情家も、こんな貧乏たらしいところまでは来やしない。

 3.ところがその素浪人、身なりは、どこぞの御大家の御曹司かというほどご立派で、見た目も歌舞伎役者張りの男前ときている。長屋のうら若い女どもがひっきりなしに、奴の長屋前あたりで、噂しあっているのだけれど、奴ときたら、昼間はめったに顔を出さず、たまに出てきたかと思えば、「迷惑千万なことだ」と一言、いけぞんざいに言い捨てて、愛想なんぞこれっぽっちもありゃしない。ところが、そんな素っ気なさがまた、奴の色悪ぶりに似合って、なまめかしくさえあるのだ、と娘たちは浮かれ気味である。

 4.いつの晩だったか、寝入り端、外でなにやら大騒ぎをしている様子に目が覚めた。この長屋に住んで、うどんの屋台を引いている年寄りが、ここへ帰る道すがら、辻斬りにやられたという。じいさん、血みどろで転げまわったあげくに、どうやら自分を切った相手に、手当たり次第にどんぶりをぶん投げたらしい。あたりはどんぶりの破片だらけだったそうだ。結局、喉を掻き切られてあの世行きとなってしまったというのも、惨めたらしい最期である。

 5.「ほんとにお気の毒様なことだねえ。素っかたぎの年寄りだってのに」と、裏長屋の女房が言うのへ、「金目当てじゃあねえな。わしらのような貧乏人を殺したところで、一銭にもなりゃしない」と、三軒先のなまぐさ坊主が、わけ知り顔に答えている。身寄りのないじいさんだから、行きがかり上、長屋ぐるみでの葬式と相なった。弔いかたがた集まった長屋の連中の中には、涙ぐんでいる者もいる。

 6.そのとき、ふと浪人者の家の戸口の前に、鈍く光るものを見つけた。いぶかしく思って拾い上げてみると、小さな瀬戸物の破片である。・・・どんぶりの破片? うそ寒いものが背筋を這った。気がつくと、殺気だった目つきの浪人が、開きかけの戸の向うからこちらを見つめ返していた。



  練習問題 17

 1.その年、僕らは出会った。僕が中部地方の小さな地方都市の高等学校を出て東京の大学に入り、初めての一人暮らしにもようやく慣れ始めた頃だった。人生目標、将来設計など、まだ未確定だった。自分自身でも、しばらくは自分探しの時間だと、思い定めていた。だから、下宿と大学の往復だけではものたりない気がした。とにかく、社会勉強、実地体験が必要だと思っていた。それに、実家からの仕送りは充分とは言えず、生活費稼ぎの必要もあった。

 2.当時、街ははげしく変わっていた。地下鉄工事、高速道路建設、第1次マンションブーム、ビル建設、そういう落ち着きのない、しかしある意味では、ゆたかな生活への希望に満ちた、右肩上がりの時代だった。首都圏への人口集中は留まるところを知らなかった。都市郊外の丘陵地の雑木林は次々に大規模な公団住宅に姿を変えつつあった。

 3.その中のひとつの建設現場に臨時雇いの口を見つけたとき、それがその後の僕の人生を方向付ける出来事の第1幕目になろうとは、もちろん僕自身、予想だにしないことであった。今となっては、単なる偶然と片付けるには、些か躊躇いさえ感ずるほどだが、しかし、世の中というのは、そういうものなのだろう。僕は運命論者ではない、と思う。

 4.ある日、その男は僕の隣に座って休憩時間を過ごしていた。痩せぎすの年齢不詳の男だった。長めの髪の毛に艶はなく、周りの者たちがうまそうに紙巻き煙草をふかす中、煙草を取り出すでもなく、他の者たちと言葉を交わすでもなく、彼は終始深い沈黙の底にいた。もの思いにふけるというのでもなく、特に人間嫌いというわけでもなさそうであったが、何か異質な雰囲気を漂わせていた。たとえば、外国暮らしが長かったり、軽度の聴覚障害があったりすると、こんな感じかもしれない、と僕は勝手に想像力をはたらかせた。

 5.それから2カ月ばかりたった頃、大型台風が関東地方を襲った。何十年ぶりかという大雨に見舞われ、木を伐られて丸坊主にされていた丘陵地は、土留め工事の不備もあって、あちらこちらで見るも無残に土砂崩れを起こした。

 6.そして台風が通り過ぎたあくる日、流れ出した土砂の中から、白骨死体の一部が見つかったと各紙が報じた。ただちに警察の現場検証が行われ、建設会社の仕事は一時中断された。現場検証といったって、なにしろ情け容赦のない樹木伐採に加えて土砂崩れなのだから、地面自体が原形をとどめていないわけで、そんなところを調べたってわかることなどありはしまい、と僕は下宿の3畳間にひっくり返って薄汚い天井を仰ぎながら思った。

 7.再び工事が始まったのは、4日後のことである。現場は白骨死体の話でもちきりだった。新聞報道によれば、詳しい鑑識結果はまだ出ていないものの、死者は成人女性で、おおよそのところ、死後6、7年は経っているだろうということだった。当時の行方不明者の捜索願いなどから身元調べが進められているらしかったが、一月経っても、二月経っても、身元判明の噂は聞かなかった。

 8.そんな中で僕は、そういえば台風以来あの男の姿を見ていないことに思い当たった。他の者に聞いてみたが、誰一人として知っている者はいなかった。それどころか、男がいないことに気付いている者さえいなかった。果ては、そういう男が以前この現場にいたことすら知らない者もいた。

 9.こういう現場は人の入れ代わりが激しい。毎日のように顔ぶれが変わる。目立たない者は、誰の記憶にも残らなくて当然なのかもしれない。現場監督も、作業員ひとりひとりの顔など知らない。名前と番号で書類に載っているだけである。あの男と僕とは顔見知りではあったが、そういえば話などしたこともなかったし、彼が何という名前かも、僕は知らなかった。

 10.記憶違いでなければ、それから8年ほどして、いや、米大統領選の予備選挙の頃だったから、正確には8年10カ月だ、当時僕はある法律事務所で事務の仕事をしていた。司法試験を受け続けてはいたが、まだ受かっていなかった。そんなとき、もうすっかり記憶の底に埋もれていた、後に造成地女子大生殺し事件と呼ばれることになる、あの白骨死体事件と、そして例の沈黙男とを無理矢理思い出させるようなことが起こってくるのである。



  練習問題 18

会話のカギカッコの閉じのあと(助詞などに続かない場合)は、2マスあけにしてください。

 1.彼は、自分で犯人を探し出してやる、などと、最初の事件以来言い続けているようだが、この街の住人を震え上がらせている連続殺人犯が、そう簡単に見つけ出せるものなら苦労はない。犯人に与するつもりは毛頭ないが、それにしてもこの殺人鬼は、いささか頭が切れすぎるようだ。犯人に翻弄されつづけている警察の幹部は、勝ち誇る奴の犯行声明文に、怒り狂っているらしい。

 2.彼が、すでに何人か、犯人らしき人物を絞り込んでいるのは知っている。姿なき殺人鬼の影に恐れおののく50万の市民の中に、犯人はそ知らぬ顔で紛れ込んでいるのだ。過去の類似した犯罪データと重ね合わせたり、心理学の専門家を訪ね歩いたりして、彼なりの犯人像をしだいに作り上げているらしい。果たして犯人を追い詰めることができるのか、結局取り逃すことになるのか、先の読みにくい事件ではあるのだが、彼がなにゆえこの事件に限って、これほどまでに打ち込んでいるのか、というと、そこにはいわく言いがたい理由がある。

 3.子供のころ、忘れ去ることの出来ぬ忌まわしい事件が彼を襲った。重苦しいほどに暑い夏の夜、ベランダの揺り椅子でうとうとしながら涼んでいた父親が、何者かにナイフでめった刺しされたのである。幼い彼は、母の泣き叫ぶ声を聞きつけた隣の住人が、息せき切って駆けつけてくるまで、腹にナイフをつきたてたままもだえ苦しむ父親を目の前にして、呆然と立ちすくんでいるしかなかった。結局、父親は、医師の懸命の手当ても効を奏さず、最期まで苦しみつづけて、この世を去った。母親は悲しみに打ちのめされたように、生涯泣き暮らし、かつての娘々した面影は消え失せたまま、数年前他界した。その犯人は、近隣の街で、何件もの犯行を重ね、遊びまわるようにして人殺しを繰り返し、あちこちを渡り歩いた。そして、ある日を境に、忽然と消え去った。文字通り、掻き消えたのである。

 4.「で、犯人は、さらに殺人を犯し続けると思うかね?」と私は聞いた。彼は、私を見つめ返して言った。「奴は、頭はいいが、無視されるのには耐えられないタイプだ。他人の命は軽んずるが、自分自身は自意識で膨れ上がっていて、なによりも人から注目されていないと、逆上するような人間だ。だから必ず、自分の存在を誇示し、人々が自分を記憶の底に葬り去ることがないように、再び殺人を犯すだろう」「では、犯人は、自分の自尊心を満足させるために、永久に殺しつづけなければならない、というわけだ」「殺人鬼の心の内など、余人には計り知れないものさ」 彼は素っ気なく言った。

 5.「君のお父さんを殺した犯人が、突然犯行を中止したのには、何か我々が想像しえないわけでもあるのだろうか?」 私は、重ねて問い質した。彼は、少しのあいだ言い淀んだ。犯人に関することで、いままで突き止めたことをすべて私に話していいかどうか、決めかねているようすである。彼の逡巡には理由があることを、私は知っている。彼の絞り込んだ犯人像が、さまざまな点で私と合致するのだ。彼は、それを単なる偶然だと一笑に付した。しかし、ほんとうは、私を疑いはじめていることに、私は気付いている。

 6.30年前、彼の父親をはじめ、5人もの人間を殺害し、警察の捜査の手が自分に達する前に、姿を消した犯人こそ、この私なのだ。30年間、街の雑踏に紛れ込んで隠れ潜んできたが、今ごろになって、殺人鬼の血が騒ぎ出したというわけだ。あの夜、なんとなくその場を立ち去りがたかった私は、物陰に潜み、面白半分で成り行きを見守っていた。そして、まだ幼い少年だった彼が、取り乱す母親の傍らで、茫然自失しているのを見た。

 7.「ひょっとしたら、ぼくの父を殺した犯人は、今回の連続殺人鬼と同一人物かもしれない」 心の奥深いところまで見透かすような目が、私を圧した。「まだ君には打ち明けていなかったが、僕はあの夜、犯人の顔を見ているんだ。ほんの一瞬にすぎないし、今では記憶もあいまいで、当時も誰にも信じてもらえなかったが、あの青みがかったきらきらするプラチナの眼は忘れがたい」 彼は、臆する気配も無く、付け加えた。「君の眼にそっくりだった」



  練習問題 19

 1.振り返るまでもなく、追っ手がすぐ後ろに迫っているのはわかっていた。何が何でも逃げのびなければならない。それでいて、脚はまるで自分の脚ではないように、思い通りに動かない。どうしたわけか、地面を蹴る力が全然ない。むしろ、地面に粘り着いている感じで、引きはがすのにいちいち力が要る。このままでは、あっという間に追いつかれる。

 2.息が苦しい。酸素が肺にまで入ってこない。空気を吸おうとするのに、肺はすでに一杯で、新しい空気の入る余地がない。もしかすると、一度息を吐けばいいのかもしれない、と頭では思うのだが、いかんせん、そんな余裕はないのだ。息を吐いている2、3秒の間に酸欠で倒れてしまうに違いない。

 3.それにしても、方角がわからない。さっきから同じところをぐるぐる回っているのではないか、という疑念が沸き上がってきて、頭の中がその考えで一杯になってしまう。自分がどこに向かって走っているのか、皆目見当がつかなくなっている。何はともあれ奴等の手から逃げなければならない。さもないと、生きて帰ることは望めないだろう。それだけはわかる。

 4.それはそうと、何故この街には人がいないのだろう。さっきから住宅街と思われる地域に入り込んでいるのだが、人っ子一人見かけない。まるで廃墟のような街だ。人影さえ見えれば何とか助けを求めることができるかもしれないのに、まわり中がシンと静まり返っている。こともあろうに、人間どころか犬1匹見当たらない。それはおかしい。どう考えても不自然極まりない。

 5.かてて加えて、日の光が眩しい。目を細めてもなお、周りの景色がやけに白っぽい。とても上空など見上げられないほど陽射しが強い。にもかかわらず、物の影というものがない。陰影を失って、気味の悪いほど平板に見える。影のない世界は、奥行きをもたない。実体のない虚像のようだ。

 6.そこで、はたと考えた。ひょっとするとこれは夢なのかもしれない。単なる夢の断片なのかもしれない。そう、それはとても魅力的な考えだ。だとすれば、この絶体絶命の状況から脱出できるかもしれない。一瞬にして、自分の部屋のいつもの柔らかい毛布の中で、充分な睡眠のあとの満ち足りた目覚めに移行していく、あの甘美な感覚が現れるのかもしれない。

 7.そういう覚醒、そういう劇的な場面転換を切に願っている自分が、はっきりと自覚できる。しかしながら、祈るような思いでその瞬間を待っても、あいも変わらず、脚は重くへばりつき、息絶えだえの状態だし、街は真っ白で誰もいない。状況はちっとも変わらない。いや、むしろ背後に迫る足音がますますもって近づいたような気がする。

 8.そうこうするうちに、下り坂にさしかかったようだ。脚の粘着性は相変わらずなのだが、脚を地面から離してから次につくまでの時間が心なしか短くなった。その部分にだけ加速度がつく。それかあらぬか、呼吸はさらに乱れ、もはや手足にも脳にも酸素は供給されず、どこもかしこも感覚がなくなってきた。

 9.流れ落ちる汗が目に入ると、視界は白い1枚の板のようになってしまった。今となってはほとんど勘だけに頼って走り続けるしかない。汗を拭う余裕もない。もうだめだ。にっちもさっちもいかない。万事休す。

 10.突然、脚がつくべき場所を失った。当然のことながら体は支えをなくし、有無を言わせぬ急激な落下が始まった。何がどうなっているのか、考えてもわかるわけがない。ただひたすら落ちてゆく。もう、どうにでもなれ。どっちみち、これ以上どうにもなりようがないではないか。意識がだんだんに薄れてゆく。そして、白かった世界がみるみるうちに暗くなっていった。



  練習問題 20

 1.へえ、またまたあいつがやって来たって? それでまたずるずるべったり、家に居座るつもりだな。だいたいね、今まであいつのおかげでどれだけごたごたが起こったと思っているんだい?夜な夜なの遊郭通いでかみさんには逃げられる、花街の女郎にいれあげて、みるみる借金は大きくなる、子供はほったらかしで、長屋でビイビイ泣いてるってのに、たまに朝帰りしたかと思ったら、「ぐずぐずわめいていねえで、酒でも買ってきやがれ」なんぞと、子供を張り飛ばす始末だ。

 2.あれは、いつだったっけ? そうそう、3月の初め、ようよう春の日差しが戻ってきたかというころだった。やつめ、借金のかたに、上の娘を女郎屋に売り飛ばそうと、娘には「綺麗なおべべが着られるところへ行こうな」なんぞとみえみえの嘘をついて、連れて行こうとしたんだよな。ところがこの娘が親に似ず賢い子で、「綺麗なおべべより妹達と一緒がいい」ときた。

 3.やつは、年端も行かない下の娘たちをだましだまししながら、こそこそと上の娘に因果を含めて、どうにかこうにか女衒のところへ娘を連れていった。娘はもちろん戦々恐々、自分の身に何が起こったか、おおかた見当がつく年頃だから、女衒の顔を見てぶるぶる震えだした。見る見るうちに両の目に涙があふれて、ヒックヒックとしゃくりあげ始めた。

 4.やつめ、女衒の手前、娘が納得ずくで来たと、汗をかきかき言いつのった。しかし女衒もだてに商売はしていない。「見ればこの娘、いいところ五つ六つのガキじゃあねえか。てめえの不始末をこんなガキに押し付けるたあ、いい根性だ」 やつはすっかり小さくなってぐずぐずと言い訳する。「で、でも、その、あっしだって、どうしようもなくて、泣く泣く・・・」「なにが、泣く泣くだ。おととい来やがれ。借金の始末はてめえ自身でなんとかするんだな」

 5.そういうわけで、娘はすっかり喜んで、女衒に手を振り振り帰ってきたというわけだが、やつにしてみれば、借金のかたはつかずじまい、いつ借金取りが家に押しかけてくるか、生きた心地もしないということになってしまった。仕方がねえから、長屋の大家と俺たちとで、侃侃諤諤の言い合いの末、とにかく女郎屋に頼み込んで、借金はしばらく待ってもらう、奴は俺たちが責任をもって、ゆめゆめ夜逃げなどさせない、ということで決着がついたわけだ。

 6.やつときたら、それをいいことに、昼間っから酒を飲んではグデングデン、上の娘が飲み屋に引き取りに行って、つっかえつっかえわびをいれては 父親を連れ帰っているって言うんだから、けなげなもんだ。まったくやつは、行った先行った先でことを起こしているというわけだ。おい、うちに金の無心にきたら、がたがた言う前に追い返せ。奴の言い訳にはもう飽き飽きしてるんだ。やつのかわりに娘がきたら、親父に知られないように、二文か三文包んでやんな。



  練習問題 21

 1.はがきの差出人は、村田リウとなっていた。心当たりがない。住所は、新城市大字曽根。これも知らないところだ。だいたい、新城市というのはどこだろう? 宛名は、東京都三鷹市下連雀2丁目、コーポ武蔵野203号、高橋美智子様、とある。間違いなく私だ。珍しい名前ではないが、これまでに私の知る限り、郵便が間違って届いたことはない。文面は、2カ月ほど前にこうちゃんが死んだ、美智子さんに渡してくれと言われていたものがあるから来てほしい、とそれだけだ。

 2.こうちゃんというのも誰だか思い当たらない。そう呼ばれそうな名前の知り合いを思い出してみる。南千住に住んでいた母の弟、永井康次叔父は母にこうちゃんと呼ばれていたが、20年も前に亡くなっている。子どもの頃、近所のさくら薬局という薬屋さんにこうちゃんという子がいたが、ほんとの名前は何だったか。中学の同級生に山本公一君というのがいた。演劇部には清水浩二先輩がいた。高2の担任は井上孝介先生だった。いずれにしても、死に際に何かを渡されるような知り合いではない。勤め先の前田課長の名前は確か耕一郎だ。でも、今日も生きていた。

 3.しばらく放っておいたのだが、やはり少々気になって落ち着かない。何週間か経ってから、ついにその住所にはがきを出すことにした。新城市は愛知県の東部にある東三河平野から設楽の山地に入っていくあたりにある町だそうだ。どう考えても、知り合いがいそうにない。大変申し訳ないけれど、記憶に曖昧なところがあって、お宅様のこともこうちゃんのことも、思い違いがあるといけないので、もう少し詳しいことを教えていただけないだろうか、と書いて投函した。

 4.それっきり、返事は来なかった。何かの間違いだったのだろう。村田リウさんというのも、きっと相当年配の人に違いない。もしかしたら、痴呆か何かがあるということも考えられる。これ以上、もう考えないことにしよう。私は毎日、中央線の電車で3駅、武蔵小金井駅前にあるKW設計事務所で仕事をして、結構忙しく暮らしている。余計なことであまり煩わされたくない。

 5.ところが半年ほどして、第2のはがきが来た。静岡県引佐郡にある、やすらぎの郷特別養護老人ホームというところからだった。当施設にご入所いただいておりました、村田リウ様が亡くなられました。謹んでお悔やみ申し上げます。つきましては、ご遺骨、ご遺品のお引き取りをお願いいたしたく、一度ご来所ください。

 6.そんな馬鹿な。なに寝ぼけたこと言ってんの。親戚でも知り合いでもないおばあさんの遺骨をなんで引き取らなきゃならないの? 驚いてカーッと腹が立ったが、しばらくして気が落ち着いてきた。多分、事務員さんのちょっとした手違いなのだろう。でもこの際、間違いはキチッと正しておかなければならない。ことのついでに、こうちゃんの謎が解けるかもしれない。

 7.地図を見ると、この住所は静岡県の一番西、浜名湖の北側で、例の愛知県新城市とは境を接している。三ケ日蜜柑とか三ケ日人という古人骨でも知られている三ケ日町のあるところだ。東海道線からは距離がありそうだが、東名高速道路からは近い。むろん、出かけていく義理は毛頭ない。電話ですぐに間違いがわかるだろう。はがきに書いてあった番号にかけてみた。女の声で、やすらぎの郷だと名乗った。はがきを貰ったが村田さんという人に心当たりがない、と言うと、途端に電話の声は険しくなった。困るんですよね、入所させたらあとはもう知らん顔なんて、となじる。人違いだと言っても、入所の際の契約書がどうとか、不足分の支払いがどうとか、キンキンまくしたてる。

 8.そもそも、これは何か、私にかかわりのあることなのだろうか? それとも、単なる間違いだろうか? あるいは、何か悪意のある陰謀なのだろうか? でも、どう考えても私は陰謀に巻き込まれるような重要人物ではない。陰謀というのは、KGBだとかリヒャルト・ゾルゲだとかジェームズ・ボンドだとかの世界の出来事だ。では、ただのいたずらか? だとしたら手がこんでいる。まったく腹が立つ。

 9.それから3カ月ほどの後、さんざっぱらすったもんだあった末、結局私は東名バスに乗って、その特養ホームを訪ねる羽目に陥る。5月のゴールデンウィークのときで、大井松田のあたりは延々と渋滞続きだった。富士山は雪を輝かせ、駿河湾は晩春の陽射しを穏やかに反射していたが、渋滞の中を行くバスの旅は決して快適とは言えなかった。

 10.となりの席のおばあさんは、三ケ日の次の豊橋北で降りて娘さんの家に行くのだと言った。明日から娘さん一家がアメリカのサウスカロライナ州の知人のところに遊びに行くのに、下の女の子が熱を出して、急遽おばあちゃんと留守番ということになったそうだ。そんな話を聞きながら、静岡県内を西へ進む。三ケ日から豊橋北まではこのJRバスで数分、その間にある宇利峠というのが愛知県境になっているらしい。さてこれから、私の旅はどういうことになるのか、なんとも心もとない。



  練習問題 22

 1.北海道弁というのは確かに存在するが、それほど長い歴史があるわけではない。もともと住んでいたアイヌの人々を別にすれば、今北海道に住んでいるのは、4、5代前に、明治期以降北海道以外の土地から入植したり流れてきたりした人々の子孫なので、先祖がもともとどこに住んでいたかによって、言葉に微妙な違いがある。ひとくちに北海道弁といっても、東北地方の影響を色濃く受けているところもあれば、かなり標準語に近い言葉遣いのところもある。

 2.私の父方の祖母の両親は岡山の産なので、祖母もあまり北海道弁を使わない。「わしもそうじゃろうと思うとったんじゃ」などど言うのだが、これがほんとうの岡山弁かどうか、私にはわからない。ただ、いわゆる北海道弁と言われるものでないことは確かだ。

 3.不思議なことにその子供である父は、岡山弁らしき言葉をまったく話さない。わりあい正統(?)な北海道弁を使っている。「おれもそうだべと思ってたさ」などと言う。早くに家を出た関係で、両親の影響をあまり受けなかったのかもしれない。

 4.かくいう私は、話そうと思えば北海道弁を話すことはできるが、長らく本州に住んでいるので、しだいに使わなくなってきている。昔はこてこての北海道弁であった。「したっけさ、あのひとがそんなこと言ったべさ、だからこっちも、何はんかくさいこと言ってんのって言ってやったさ。もう頭にくるっしょ!」という具合である。標準語に翻訳すると、「そうしたらね、あのひとがそんなこと言ったでしょ、だからこっちも、なに馬鹿なこと言ってんのって言ってやったの。もう頭にくるでしょ!」となる。

 5.今住んでいるところは愛知県の三河地方である。三河弁は「だからそう言っただらあ。ひとの言うことを聞かんもんで、そういうことになるらあ。わかっとる?」というような言い回しになる。同じ愛知県内でも尾張弁はかなりニュアンスが違っていて、不正確を承知の上で書いてみると、「だからそう言ったがね、ひとの言うことを聞きゃあせんで、そういうことになりゃあす。わかっとる?」とでもなるだろうか?

 6.以前栃木県に住んでいたことがあるのだが、栃木弁というのも、実に個性的である。住んでいたアパートの大家さん(女性)は自分のことを「おれ」と言い、「ここに木でも植えっぺかと思ってるけんども、いいだんべかね? おれんとこからベランダが見えねえほうがよかっぺ?」などという言い方をしていた。

 7.数ある方言の中でも、津軽弁と薩摩弁はことに難しいと言われる。薩摩弁は、江戸時代に、江戸からスパイが入り込んでも、言葉を真似しにくいように、また、他所の人間が聞いてもすぐには内容がわからないようにという理由で、人工的に、よりわかりづらい言語に変化させたというからすごいものである。

 8.言葉をいろいろな方言に変換してくれるサイトで、同じ文章を津軽弁と薩摩弁に変換してみた。
「昔昔、あるトコに、じっちゃどばっちゃがおったんずや。 じっちゃだば、山へ芝刈りに、ばっちゃだば川へ洗濯に行ったんずや」(津軽)
「昔昔、あるとこいに、おじいさぁとおばあさぁがおりもした。おじいさぁは、山へ芝刈りに、おばあさぁは川へ洗濯に行きもした」(薩摩)
これに独特のイントネーションと間が加われば、他所の土地の人間にはもしかしたら、同じ内容を言っているとはわからないかもしれない。



  練習問題 23

 1.飲み過ぎたわけでもないのに、頭がガンガン。水・木・金と続いた残業のせいかも。わぁ、働きすぎだぁ! それとも、風邪? よりによって、こんな日に! 今日は、特別な日なんだから!!

 2.今日の昼、見合い?をすることになってる。えっ? 違うよ、私じゃないよぉ。私はただの付き添い。いや、それだけでもないかナ? 仕掛け人、という説もあるけどネ。

 3.仕組んだのは、あゆみ・ひとみ・まい、それに私。この4人は、高校時代の親友。今は、それぞれ別々の仕事してんだけど、月2、3回は会ってる。

 4.あゆみは、インテリア・デザイナーの事務所で見習い・兼・雑用係みたいなことをしてるし、ひとみは、叔父さんがやってる画廊・アリスを手伝ってる。まいは、スイミング・スクールで幼児・学童相手に先生!してる。

 5.私? 私は、某零細出版社勤務。ベスト・ミステリー・クラブとかステップ・アップ・シリーズ囲碁・将棋なんて雑誌出したりしてる会社だけど、誰も知らないでしょ? 今まで出した雑誌、たいてい5、6号でポシャッてるもんね。見切りがはやいのが、つぶれないコツなんだって。

 6.それでね、今日の話だけど、見合いの片方は、あゆみのところの先生、デザイナー・森川優子・42歳。すっごくステキな人。独身なんだよ、あったりまえだけど。

 7.もう片っぽは、ナント!!うちのオヤジ。どうしてくれようっ!ってかんじなんだけど、どういう話の展開か、そういうことになっちゃってサ。一応、肩書的には、エッセイスト・小島洋一郎・52歳、ってなもんで、娘が言うのもナンだけど、ちょっと見はまあまあかナ。

 8.うちの母親が死んだのが1994・10・27で、もう8年経ったしね。私としても、そろそろオヤジの面倒見てくれる人がほしいワケ。でなきゃ、安心して自分の幸せを追求できないじゃない? 別に、そんなに手のかかる人じゃないんだけどネ。

 9.今日の作戦には、ずいぶん時間・知力・労力・演技力を必要としたんだ。準備期間は3カ月くらいだったかなぁ。場所は東京・新橋のチャイニーズ・レストラン。見合いだってことは、もちろん、当人たちには、ひ・み・つ。私の誕生日祝いという名目で、スペシャル・ランチとオヤジとを確保してある。

 10.さーて、起きるか!って時計見たら、9:45。まだ早い、もすこし寝てられるなぁ、って思ったけど、でも、待てよ? ちょっと待てよ?! なんかヘン! どっかに殺気感じてテレビつけてみる。ぎゃーっ!! これって、午後の番組じゃないのかっ? 時計止まってるぅっ。うちの中はシーン! オヤジ、私をさしおいてどこ行ったぁ!?



  練習問題 24

 1.「そりゃあね、フランス料理が悪いとは言わないけどさ」と、あからさまな不満顔で<カンタン>のやつが言った。<カンタン>っていうのは、もちろんあだ名で、本名が<寛太>という、いまどき珍しいガキ大将のような名前なので、いつのまにか<カンタン>になってしまった。見た目もガキ大将がそのまま大人になったような、「童顔」を絵に描いたような顔をしている。

 2.「フランス料理ってのはね、そのまま食べりゃうまいのに、なんだかんだこねくり回して、その、えーと、なんだ、ソースだ、ムースだ、ディップだって、もとがいったい何だったんだか、さっぱりわからなくして食うような料理だよな。俺はね、そういうわけのわからねえものじゃなくってさ、これは魚だ、これは肉だって、氏素性のはっきりわかるような食い物を食いたいわけよ。」

 3.「<カンタン>は、要するに、簡単に素材がわかるようなものがいいと、言ってるわけだな」と、三嶋(こいつは、<カンタン>とは正反対の、銀縁眼鏡の優等生タイプだ)が言った。「しかし、<カンタン>のフランス料理に対する認識は、猫が日ごろ食べなれたキャット・フード以外のものを出されると、何を食べさせられるかわからない、と警戒して手を出さない、というのと同程度のものだな。要するに無知なるがゆえの恐怖感が、拒絶反応を引き起こしているというわけだ」 <カンタン>は目を剥いた。「俺は猫並みかよ。それに、猫ってのはあんがい頭がいいんだぜ。キャット・フードも、うまいやつなら、慣れてなくてもちゃんと食べる。」

 4.「猫の話をしてんのかよ、おれたちは」<カヌマ>が半畳を入れた。<カヌマ>っていうのも、あだ名だ。こいつは、栃木県の鹿沼市の出身なのだ。鹿沼市といえば、版画家の川上澄生の出身地で、美大で版画を専攻していた俺は、何度か鹿沼の「川上澄生美術館」に足を運んだことがある。『南蛮船』は大好きな作品だ(おっと、閑話休題)。

 5.「てことはだ、こちらの<カンタン>先生は、フランス料理なんぞという、素材を冒涜するような食い物ではなく、“こちらはお魚さまでございます”“あちらはお野菜さまでございます”というような明快至極なものを食いたい、とこうおっしゃるわけだな」と三嶋。「としたら、やっぱり中華か?」そう続けたのは、<カヌマ>だ。

 6.「中華料理か、いいねえ」と俺は言った。「近所の<来来軒>じゃなくってさ、Hotel Pacific Japanの<海楼閣>あたりで・・・」 すると、<カヌマ>が鼻の先で笑った。「<海楼閣>だあ??知らないやつは幸せだねえ。俺たちの財布の中身もかえりみずによく言ってくれるよ。<海楼閣>なんぞに行ったら、まあ、ラーメンの麺が二筋か三筋も食えりゃあおんのじだろうな」

 7.「そんなに高えの?」と<カンタン>。「たまには『東京グルメガイド』でも読んで勉強しろよ」と<カヌマ>がせせら笑う。「ああいうところはだな、値段が高けりゃうまいもんだ、と信じて疑わない、味のわかんねえ金持ちが行くところさ。餃子一皿(いいとこ三個くらいしか乗っかってねえやつだ)に2千円がとこも出して、“さすがに一流ホテルのお味は違いますわねえ”なんて、きいたふうな口たたいて、その実、3丁目の小汚い<好々軒>の餃子を出されたって、まるっきり気がつかねえような連中が、ありがたがって食ってんのさ」

 8.「俺は<好々軒>の餃子はうまいと思うぜ。300円で8個ってのは、安いしさ」と、<カンタン>が子供のような声を出した。「幸いなるかな、汝の名は貧乏人」と三嶋がまぜっかえした。「とにかく、俺たちは腹がへってるんだから、なんでもいいから食いに行こうぜ」と俺は言った。確か、NTT(これは、電話関係の某大会社ではなく、[日本トラベル・トラブル]という、旅行先でのトラブル処理を請け負っている会社のことだ)本社ビルの地下に小奇麗な中華料理屋があったことを思い出した。名前は「TienTien」。看板の横に「天天」と書いてあるから、それを中国語読みしたつもりなのだろうが、「天」は、ほんとうは「tian」で、「tien」という発音は中国語には無い。いい加減なもんだ。ま、うまけりゃなんだっていいんだけどね。



  練習問題 25

 1.息子の学校カバンから1週間も前の学級通信がしわくちゃになって出てきた。――「保護者会と、授業参観のお知らせ」。・・・まったく、同じクラスのAさんから教えてもらったからいいようなものの、そうでなければ、何も知らずに返事も出さないでいたところだった。

 2.「――保護者会は、水曜日〜金曜日までの三日間、ご都合のいい曜日と時間をお知らせください」か。えーと、水曜日は都合が悪いから、木曜日にしてもらおうかな?――いや、木曜日は<スーパー・アチャヤマ>の特売日だ、これははずせない――じゃ、金曜日、と。なにせ卵が1パック50〜60円で売られるのだから、なんとしても早めに行ってゲットしなくっちゃ。お一人様1パック限りだからなあ・・・、1回買ってまた戻ってもう1パック、なんてのはかわいいほうで、見ていると5回くらい卵売り場とレジの間を往復している剛の者もいるし、家族総動員で何回も往復、なんて一家もいる。あんなに卵ばっかりどうするんだろう・・・? ――――おっと、次は授業参観だ。

 3.なになに・・・「授業は、火曜日(明日じゃないか!!)に、国語→歴史→数学→体育→英語の順で行います。ご都合の良い時間にご見学を――」か。体育の時間に見に行くと息子は嫌がる。なにせ筋金入りの運動音痴だ。親の因果が子に報い・・・じゃないけど、運動が苦手なのは親の遺伝――私も亭主も、運動会の日には雨が降りますように、と祈ったくちだ――なんだから、これは仕方がない。じゃあ、一番問題のなさそうな歴史にしようかな。

 4.でも、うちの息子にとっては、歴史=戦国時代だから、ほかの時代のことはからっきしなので、戦国〜江戸時代以外の授業だったりしたら、悲惨な光景を目にする羽目になるかもしれない。家康――秀忠――家光――家綱・・・なんて江戸幕府の歴代将軍はすらすら言えるのに、『源氏物語』を書いたのが誰かも答えられないんだから、偏りがありすぎるというものだ。

 5.じゃ、仕方がないから英語の授業でも見に行くかな。・・・そうそう、こないだの単語テストで、「meet」を「meat」と書いて、先生に「そんなにお腹がすいてたのか――?」って笑われたとか・・・。英語も期待できそうにないけど、数学よりはまし、ということで、「英語」にチェック、と。時間は5時限目だから、2時〜2時50分ね。帰りに<アチャヤマ>でジャガイモとニンジンと玉ねぎ――晩はカレーにするつもり――を買うことにしようっと。忘れないように、メモ、メモ・・・・。



  練習問題 26

 1.店内にはjazzっぽい曲が流れていた。あの頃は、売れる前のミュージシャンたちがよく来ていた。腕はまだまだ二流半ぐらいだが、センスと志は一流、という連中だった。あれは、G軍が例の9連覇のあと初めて敗けた頃だから、何年前になるのだろう。

 2.彼とはこの店で会った。T大学の学生だった。話題豊富で、人の気をそらさない、会話のテンポの速い、気のきいた男の多い中で、(今、「おおいなかで」と打って漢字変換したら、「大田舎で」って出てきてビックリした!)、見た目はいかにも人づきあいの悪そうな奴だった。

 3.「T大で何してる?」「たいして何もしていない」「ふーん」・・・会話はそこで切れてしまう。それでも、うるさがられない程度にあれこれ聞き出したところによると、専攻はアメリカ労働運動で、山岳部に籍があって、今は、仏像の絵を描いている、という。なんと一貫性のない奴だ!

 4.けれども、自分の好きなことについては、案外よく喋る、ということがわかった。Wagner法がどうの、Taft-Hartley法がどうのと言っているかと思えば、どこぞの勢至菩薩がいい、とか、Kamchatka半島の4000m級のKlyuchevskaya山がどうとか、と、ひとが知らないと思って、勝手なことを言っていたような気もする。

 5.その彼が、T大卒業後、ふっつりとこの店に現れなくなった。一流商社の内定を蹴って、中南米を放浪している、という話もきいた。ベネズエラのマラカイボ湖の近くで見かけた、という、まことしやかな噂もあった。当時、この店でよく出会った、井上、佐々木、キム等とは、その後何度か会う機会があったが、彼とは結局それっきりだ。



  練習問題 27

  台湾・台北『中華グルメの旅』(2泊3日)のご案内
     A.出発時のスケジュール
   1.東京・羽田空港からご参加の方へ
出発便  3月21日(金)10時32分発 台湾インターナショナル航空123便
定員  23名(注1)
添乗員 2名(注2)
集合場所  羽田空港・台湾インターナショナル航空カウンター前
☆機内での昼食となりますので、和食・洋食・中華のご希望をお申し出ください。
   2.札幌・千歳空港からご参加の方へ
出発便 3月21日(金)11時45分発 東北海道航空456便
定員 15名(注1)
添乗員 2名(注2)
集合場所 千歳空港・東北海道航空カウンター前
☆機内で昼食となります(和食のみ)。

(注1)車椅子の必要な方も可。
(注2)当社の添乗員のほか、現地で通訳がひとりつきます。

     B.台北でのスケジュール
  第1日目(3月23日・金曜)
<宿泊先・台北満腹飯店にて夕食>
 ☆料理は各自お好みのコースをご注文ください。
 コース例:広東風点心コース、上海風魚介料理コース、満腹飯店オリジナルコース、その他
  第2日目(3月22日・土曜)
<台北満腹飯店にて朝食バイキング>
<市内観光と食べ歩き・お買い物>
 ☆「食べ歩きコース」と「お買い物コース」はオプションとなっています。
<昼食>
 ☆「食べ歩きコース」は、食通飯店で四川料理(注3)、「お買い物コース」は、中華大楼で広東料理(注4)
 (注3)辛いものがお好きな方向きのコースです。
 (注4)辛いのは苦手という方向きのコースです。
<夕食>
 ☆「食べ歩きコース」は快食大飯店にて満漢全席(※)、「お買い物コース」は、夜の屋台街散策と大笑飯店にて豪華飲茶。
 ※「西太后コース」と「孫悟空コース」が選べます。
  第3日目(3月23日・日曜)
<台北満腹飯店にて朝食バイキング>
 ☆朝粥定食ご希望の方は事前にお申し込みください。
<オプショナルツアー>
 以下のコースからお選びください。
 「中国茶買い放題コース」 ウーロン茶・プーアル茶・ジャスミン茶、その他薬効があるといわれる中国茶の店舗を巡る。
 「点心食べ放題コース」 四川風・広東風・北京風、そして台湾風の、見た目も鮮やかな点心の食べ歩き。
 「激辛中華コース」 辛い料理が大好きという方のために。
 ☆どのコースにもお土産がつきます。
<夕食>
  帰りの機内で、中華料理(和食・洋食はありません)。
<羽田着(7時55分)・解散>
 ☆千歳への乗り継ぎ便については別途ご連絡いたします。



  練習問題 28

 1.1925年、選挙権の納税条件が撤廃され、25歳以上の男子に選挙権を与える普通選挙法が成立した。それは、画期的なことであった。手元の資料によると、
※<全人口に占める有権者の割合> 1890年1.1%/1902年2.2%/1920年4.6%/1928年20.0%/1946年51.2%

 2.このように、普通選挙制の実施によって、有権者数は全人口の20%、それまでの4倍以上になった。戦後(1946年)の急激な増加は、女性が参政権を獲得したことと、年齢が20歳以上に引き下げられたことによる。

 3.普通選挙も女性の参政権も、今となっては当たり前のことで、なかなか有難味も感じられない。血の滲むような闘いの結果勝ちとられた権利であることなど、忘れ去られている。これで突然、次の選挙から△千万円以上の高額納税者しか投票できません、ということになったら、少しは騒ぎになるだろうか――。

 4.「べつにィ、かんけェねェよ」という若者もいそうである。若い人に限らず、大人の権利意識・責任意識も非常に危うい。戦争と抑圧の時代を生きてきた70代以上、40年ほど前にあの政治の季節を経験してきた5、60代の人々にさえ、無関心・無自覚が蔓延しているかに見える。

 5.「以下の(  )の中に適当な数字または語句を下の選択肢から選んで記号で入れよ。(1)年 平城京遷都、(2)年 養老律令の成立、741年 (a)建立の詔、(3)年 墾田永年私財法・・・{a.645 b.694 c.710 d.718 e.743 f.764 g.法隆寺 h.国分寺 i.盧舎那大仏・・・}解答欄 1__ 2__ a__ 3__・・・」などという丸暗記で切り抜けられる問題や、正しいものに○/間違っているものに×を付けよ、という○×式の試験問題で選り分けられてきたせいだろうか?

 6.そういう知識はもちろん決して無駄ではないし、思考の材料・前提になっていくものではあるが、それ自体は目的ではない。中高生が、「なぁんでこんなもん覚えなくちゃなんねぇんだよぉ」と不満顔をするのも、強ち故なきことではない。その先がなければ、たいして意味のあることではないのだ。

 7.学校時代にあれほど時間を費やした<歴史学習>から何ひとつ学ばない、というのは、それはそれでスゴイことだ。日本人は、と一般化してはいけないかもしれないが、点と点を繋げて考える、ということが不得手なのかもしれない、と思うことがある。過去の学校教育が、そういう思考回路を作ることに熱心でなかったのだろうか?

 8.そんな反省に立って、今年度から小中学校に「総合学習*」が導入された。学力低下の元凶のように言われたり、現場が手探り状態であることに苛立ちもあり、いろいろ批判もあるようだが、性急な判断は慎みたい。目前の一時的な結果に目を奪われると、結局いつも右往左往するだけに終わり、現場の混乱が恒常的に続くことになる。教育の真の成果は、一朝一夕に出るものではないだろう。そしてまた、器に何を盛るかによって、器は生きもし、死にもする。
    * 正式には、「総合的な学習の時間」というらしい。



  練習問題 29

 1.聖徳太子は推古天皇の摂政で、この女帝の甥である。古代の貴族階級の姻戚関係は複雑極まりない。兄弟姉妹婚が多いから、どこかで必ず血がつながっている。ちなみに推古(これは諡号――おくりな(死後おくられる尊称)で、もとの名前は額田部女王(ぬかたべのひめみこ)というらしい)天皇は蘇我馬子の姪だから、聖徳太子も蘇我氏とは血縁関係にある。

 2.この時代は、同母の兄弟・姉妹でなければ結婚できたので、やまほどお妾さん(というか、正妻やら第二夫人・第三夫人やら、)がいる貴族は一族の間で結婚すれば、よそものに自分の財産を奪われたり、勢力をそがれたりする心配がなかった、ということなのかもしれない。

 3.推古天皇は敏達天皇(訳語田大王(おさだのおおきみ))の奥さんだった。「敏達」〜「用明(橘豊日大王(たちばなのとよひのおおきみ))」〜「崇峻(泊瀬部大王(はつせべのおおきみ))」〜「推古」、と繋がっていく。(  )内は生前の呼び名で、天皇になってからの名前。天皇になる前には「大兄(おおえ)(皇位を継承する可能性のある皇子のことを言うらしい。<日嗣皇子>(ひつぎのみこ)ってことだ)」とか、ただの「皇子(みこ、もしくはおうじ)」とか、身分上のポジションによって、いろいろ変わってくるらしい。

 4.ちなみに、用明さんは敏達さんの弟で、聖徳太子(厩戸王子)は用明さんの子供、太子のお母さんで用明さんの奥さんだった穴穂部間人媛(あなほべのはしひとひめ)は崇峻さんのお姉さんである。で、用明さんと推古さんも姉弟だったりするんである(もちろん、同母・異母、いろいろなんだけど、)。

 5.歴史のテストかなんかで、この時代の系図を書け、なんて問題が出たら、死んじゃうね。系図とまではいかなくても、婚姻関係をのべよ、とか(そんな問題は出ないか、)・・・。聖徳太子(ちなみにかれの本名(?)は厩戸王子(うまやどのおうじ)というそうだけど、かなり怪しい説によると、彼はほんとうは<イエス・キリスト>(時代が違うだろ、時代が!)で、だから厩――馬小屋で生まれた、そういうわけで『うまやど』、・・・『源義経=ジンギスカン説』よりむちゃくちゃ怪しい説だ)の奥さんは蘇我馬子の娘で、蘇我蝦夷の同母妹・刀自古(とじこ)さんという(またまたちなみに、蝦夷・刀自古兄妹の腹違いの妹が、崇峻帝の何番目かの奥さんである(注1))。刀自古さんは山背大兄王子のお母さんなんだけど、山背くんは、蝦夷の息子入鹿(注2)に殺される、つまり従兄弟に攻め滅ぼされたわけ。でもって、入鹿くんのお母さん(つまり蝦夷さんの奥さん)(このひとは一説によると、石上(いそかみ)の斎宮だったそうだけど、どうして結婚できたんだろ?斎宮って独身じゃなきゃいけないんでしょ?)は、蝦夷さんの叔母さんだったりするんである(蝦夷さんのお母さんは物部氏――蘇我氏と敵対していた有力部族――の出身で、その年の離れた妹、・・・らしい?)。ひえー!!頭ぐちゃぐちゃになりそう・・・ってか?

 6.入鹿くんが崇峻帝(日本史上珍しくも臣下に殺された天皇)(この臣下ってのは、何を隠そう馬子さんである)の子供だっていう説もあるらしいけど、ってことは、蝦夷さんの奥さんは、蝦夷さんと結婚する前、崇峻帝の奥さんの一人だったんだろうか?・・・。このあたりもなかなかに複雑である。もうひとつ付け加えると、聖徳太子のもう一人の奥さん(太子には正式な奥さんが4人ほどいたらしい)は、大姫と通称される(本名は「うじのかいたこのおうじょ」という妙な名前の人物である(ワープロで漢字が出てこない!))、推古天皇の娘である・・・(なんだかどんどんわけがわからなくなってくる――)。さて、ここまで読んで、誰が誰の伯父(叔父)・伯母(叔母)・兄弟・姉妹・奥さん・ダンナさんか、きちんと言える人はえらい!(えらい、といういより異常、といったほうがいいかもね、)。

 7.(注1)馬子さんが崇峻帝を暗殺したとき、いっしょに殺された、という説があるらしい。でも、このひと、馬子さんの娘なんだけどな・・・。
   (注2)蘇我入鹿くんは、ご存知の通り、『大化の改新(西暦645(大化1)年)』のときに天智天皇や藤原鎌足(大化の改新のときはまだ中臣鎌足)に殺された。



  練習問題 30

 1.E子はいつも新聞を読む前に、まずチラシをチェックする。今日の1枚目は・・・
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ★簡単パソコン入門教室  親切・丁寧・格安!
  A.1回/週コース
 期間:2月27日〜5月29日(木曜日)全14回
 時間:午後1:30〜3:30
 費用:入会金1,000円(入会時のみ)/月謝4,800円(前月末)/教材費10,000円(申込時一括)
      *
  B.短期集中(3回/週)コース
 期間:2月25日〜3月28日(火水金曜日 除3月21日<祝日>)全14回
 時間:午後6:00〜8:30
 費用:入会金なし/授業料25,000円(教材費込み)
      *
 ※金額は税別。
 ※パソコンの販売は一切ありません。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 2.チラシを眺めながら、E子はぶつぶつ言う。「どっちが得か?・・・」「どっちが楽か?・・・」−−でも、どちらかに申し込むわけではない。これまで、何か習いにいって、最後まで続いたためしがない。根気がない、というわけではないと自分では思っている。でも、何か始める度に、思わぬことが起こってきて、中断の憂き目にあう。

 3.次は求人広告だった。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ●いますぐあなたが必要です!!●
 勤務地/**営業所(JR**駅東口徒歩3分)
 事務員<年齢/20〜38歳まで>
 時間▼9:00〜17:00
 給与▼900円/時
 待遇▼交通費支給/社保完備
 [応募]電話連絡の上、履歴書持参ください。面接日時/場所は受付時にご確認ください。
 ※パソコンできる方大歓迎!
      −−創業25年/年商96億円/従業員1,206人−−
           総合プラニング 「○×社」
        TEL.0120-0123**(担当/採用係:鈴木)
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いい条件だが、パソコンができる人はいまどき珍しくないから、これは無理だ。それに、年齢制限がギリギリ。もう?歳若かったらナ。

 4.これだけ不景気が続くのに、不動産広告もイヤというほどある。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ●新築マンション・・・かがやきとやすらぎの新空間!
 価格/3,050万円〜
 交通/○○駅バス12分
 専有面積/71.24〜88.37u
 間取り/F-1タイプ(80.65u)−−3LDK{洋室(8畳相当)・和室(6畳相当)×2・LDK}  10階建 総戸数65  管理費(含修繕積立金)35,000円/月
      ********
 ●売地
 土地価格/3,100万円
 交通/△△駅下車徒歩25分
 土地/112.00u(正味)
 用途/準工業地域
 地目/宅地
 建蔽率/60%
 容積率/200%
 角地 4m×6m
      ********
 ★またとない優良物件!!
   今なら仲介手数料不要!
    頭金30万円より購入可。
         お問い合わせ:(電)052-8**-*123
          株式会社 GLホーム
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
30万円だけで買えるんなら買うんだけどなあ。でも、あとの3,000万円余、誰かが貸してくれるわけもない。・・・職も特技もないただの女に。

 5.結局、役に立ちそうなのは、メモ用紙に使える裏が白い広告−−シロアリ駆除と墓石の−−と、近所のスーパーのチラシしかない。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  −−新鮮食品 なんでも屋−−  開店9:30
 ★本日限りの大特価!!
 大根1本 98円  レタス大玉1個 98円  たまごMLサイズ10個 78円  牛乳1000cc 158円  食パン(6/8枚切) 128円 ・・・
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  総合スーパー BIG-S 桜ケ丘3丁目店  10:00〜20:00
 ●本日限りのお値打品
 にんじん1袋−−80円  白菜1/2−−100円  たまねぎ1袋(大玉4個入)−−125円  牛乳1000ml−−138円  トイレットペーパー12ロール−−178円  ジョギングシューズ(キッズ)−−1200円〜  ワゴン幅35.0×奥行45.0×高さ61.5cm−−3,980円 ・・・
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  みなさまの暮らしを応援 「丸八商店」
 ▲土曜朝市! 98円均一!▲
 ブロッコリー1ケ  南瓜1/2切  本しめじ1P  じゃがいも1袋  たまご1P  納豆3P  豚切り落とし100g  その他いろいろ
  <9:00〜12:00 売り切れ御免!> 
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
わぁ! 急がなくっちゃ!





INDEX