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「みずほ流」点訳入門教室

22.書き方の形式−3



書き方の形式−3

 本文以外の割り付け(『てびき』p132〜)
いよいよ、点訳書を完成させる段階になってきました。
これで、本が出来上がりますね!

●巻数
1冊の墨字の本は、点訳すると、普通、ページ数にして何倍にもなります。
何倍になるかは、原本のサイズ、字の大きさや詰まり具合、点訳しない部分(写真や絵など)の分量、漢字の多さ、点訳者注が必要な部分の多さなどなど、いろいろな要素によって異なります。
点字用紙に打ち出して読むことを考えると、1冊の点字書として扱いやすいのは、表紙までひっくるめて、だいたい50〜80枚(両面印刷であれば100〜160ページ)と言われていますから、それを基準にして巻を分けなければなりません。
ちなみに、片面印刷なら1ページ22行、両面なら18行です。(これは、最初に打ち始めるとき設定します)
紙に打っていた頃には、打つ前に綿密な(?)計画を立てて、何巻になるか、どこで巻を分けるか、決めておく必要がありましたが、パソコン点訳では、あとからの変更が容易ですので、とりあえず何も考えずに打ち始めることもできます。
それでも、だいたい50〜60枚(両面印刷で100〜120ページ分)打った段階で、いったん先のことを考えた方が、面倒が少ないと思います。

巻を分けるのは、できれば編や章などの大きな区切りの箇所がいいですね。
それは、墨字の本でも同じですよね。
でも、どうしてもうまい場所に区切りがないときには、小さな見出しのところでもいいし、場合によっては、見出しがないところでも、段落の切れ目なら、まあ辛うじて大丈夫です。
見出しのないところで分けた場合は、あとの巻の始めに、もう1度その部分が属している見出しを明記して、点訳者挿入符で(続き)と入れておきます。
小さな見出しで分けたときも、それが属する大きな見出しを再度掲げて、その続きだと言っておいた方がいいでしょう。

扱いやすい範囲内でさえあれば、各巻のページ数は、必ずしもピッタリ同じである必要はありません。
第1巻が150ページ、第2巻が120ページ、第3巻が160ページということもあります。
丁度いいところに区切りがあって、同じくらいにできれば、それにこしたことはない、という程度のことです。

原本が何巻にも分かれていても、その1巻ずつを単位として点訳します。
話が続いているからといって、点訳書1巻の中に原本の上・下巻を続けて打ってはいけません。 また、点訳書の巻数も、原本1冊ごとにカウントします。
たとえば、『○○殺人事件』という本が上・下巻に分かれていたとします。
上巻が点訳書4巻、下巻が3巻になったとき、点訳書の巻数は、『○○殺人事件』上巻の1〜4巻、『○○殺人事件』下巻の1〜3巻、というふうになります。
『○○殺人事件』1〜7巻とはしません。

●ページ
点字書のページは、おもて(奇数)ページの右上(凸面から見て)に入れます。
両面印刷の場合、奇数ページだけを入れることになります。
T-エディタなどの点訳ソフトには、自動ページ付機能がついています。
T-エディタでは、「その他」の中の「頁数書込」によって、既に打ってある部分の最後まで自動的にページ数が入ります。
「奇数ページ」「偶数ページ」「全ページ」と選択肢がありますが、初期設定の「全ページ」になっていても、かまいません。
画面には偶数ページも出ますが、点字プリンターで打ち出すときには、両面印刷にセットしてあれば、放っておいても偶数ページは打ち出されません。

1冊の墨字書が、3冊の点訳書になったとすると、通しページにはせずに、点訳書1巻ごとに1ページから始めます。
そうすると、ページ数は最大3桁ですから、数符を29マス目に打てば、3桁になってもその行におさまります。
これも、T-エディタは勝手にやってくれます。
WinBESなどの点訳ソフトでは28マス目なので、きっちり決まっているわけではありませんが、1冊の点訳書の中では統一してください。

多くの本は、表紙、前書き、目次などのあとに本文、そして、後書き、奥付と続きます。
ページ数は、本文の第1ページを「1」とします。
後書きは、そのまま続きのページ数にし、奥付にはページは付けません。

本文より前にくるものについては、まず、表紙にはページは付けません。
前書き・序文などは、本文とは別のページを付けます。
別であることを示すために、下がり数字を使います。
下がり数字というのは、数符に続けて、1なら2の点、2なら2・3の点、3なら2・5の点というように、普通の数字より1段下がった数字を打っていくものです。
T-エディタは、「頁数書込」のところで、「通常数字」か「下がり数字」かを選べるようになっていますので、実に簡単です。
ただ、いつもソフト任せにしていると、なにか困ることが出てくるかもしれません。
手動でもできるようにしておいた方がいいと思います。
少なくとも、画面を6点表示にして、どんなふうに点が出るのかを確認してみてください。

前書き・序文などが1枚におさまってしまうときには、ページを付けなくてもかまいません。
内容的に本文と続いているような前書きの場合は、本文と通しページにすることもできます。

目次は、また別のページを付けます。
(これも、1枚におさまれば、つけなくてもかまいません)
「モク数符1」「モク数符3」というふうに打って区別することが多いですね。
序文などで既に下がり数字を使っているのでなければ、下がり数字でもいいでしょう。

●表紙
表紙の書き方は、きっちり決まっているわけではありません。
『てびき』p134〜135にも、二通りの例が載っています。
これも、あくまでも例です。
ただ、同一グループが作るものは、同じ形式にしておいた方がなにかと便利です。
それから、必須の要件というのもあります。

表紙に書かなければならないのは、
1.原本の情報として、
 書名、あれば副書名(副書名は棒線で挟んで)
 あれば、巻・版(初版は除く)
 著者・訳者・編者など(大勢の場合は、「○○○○■ホカ」でも可)
他に、叢書名などが入る場合もありますが、叢書名といってもいろいろで、たとえば「現代教育学講座」などというのなら入れた方がいいし、「新潮文庫」「岩波新書」などは表紙に入れなくていいかもしれません。(「みずほ」では入れていますが)
世の中の出版物というのはまことに多様で、何を叢書名と考え、何を副書名とするか、どこからどこまでを書名ととるか、判断しにくいものもあります。
その場合は、奥付を参照し、さらに迷うときは、たとえば、私たちは、NACSIS(国立情報学研究所の図書の総合目録データベース)などがどうしているかを参考にしたりしています。

2.点訳書の情報として、
 点訳書で何巻になったうちの何巻目か(「ダイ数符1カン」「ゼン■数符5カン」というように)
 点訳した図書館やグループ名
です。

書名・副書名、巻・版は、枠で囲みます。
枠は、横線は「レ」や第1括弧の連続で、縦線は「メ」などを縦に並べて表すことが多いのですが、「みずほ点訳」では、上下の横線だけで書名を挟む形にしています。
最近、点字書を紙に打ち出した形で読む方ばかりとは限らず、音声で聞く方、ピンディスプレイで読む方など、データの利用方法はさまざまです。
その場合、横線は線として認識していただけると思うのですが、縦線は、ときどき出てくる「メ」、というふうにしかならないのではないかと思うからです。

表紙は、本文などのレイアウトとは違って、左右の中心を基準にした文字配置にするのが普通です。
それでも、たとえば書名が複数行になるとき、2行目以降は1行目より2マス下げた方が続きとして認知されやすい、というようなことはあるかもしれません。

両面印刷の場合には、表紙の裏には、原則として何も打ちません。
画面上で見ていると、表とか裏とかいう意識が希薄で、ページが変わったことだけに気を取られてしまいがちですが、両面なら、表紙の次には空のページを入れておくことをお忘れなく。

●目次
目次の位置は、基本的には表紙の直後がいいと思います。
原本が、序文のあとに目次を置いていることはよくあります。
その場合は、原本どおりの順序にしていいのですが、ただ、目次の役割を考えると、序文が何ページにもわたるようなときには、内容的に差し障りがなければ、目次を先に出した方がいいように思うのです。
触読の場合、目次の重要さはかなり高いといえます。
目で見るの違って、「パラパラめくって探す」ということが難しいからです。
目次はその本のガイドですから、それがなかなか出てこないのは、不便だし、不安でしょう。

同じ理由で、原本には目次がなくても、点訳書には目次を付けた方がいいこともあります。
もちろんこれは、点訳物の種類にもよります。
たとえば、自治体の広報紙などの点訳では、どこに何が書いてあるのかサッとわかることが大切ですから、原本にはなくても、目次を付けた方がいいでしょう。

目次に書くのは、原則として、その巻に含まれている部分だけです。
第1巻が1章から3章の2項までなら、1章、2章、3章(2項まで)としてそれぞれのページ数を入れます。
第2巻の目次は、3章(続き、あるいは、3項から)から始まります。
ただ、ものによっては、原本の全体像が把握できた方がいい、できないと困る、という種類のものもあります。
たとえば、ビデオデッキの解説書の場合。
タイマー録画の方法が知りたいのだけれど、第1巻の目次を見たら、各部の名称と接続方法しかなかった、第2巻の目次にもなかった、第3巻、あ、やっとあった、というのは不便です。(ビデオデッキの解説書で3巻にもなったら大変!)
歴史の本でも、原始時代から順番に読んでいくとは限りませんね。
全20巻にもなる点訳書を全部いちいち調べて、目指す「建武の新政」や「アクバル大帝」を探すのは、ずいぶん大変です。
そこで、第1巻の目次のあとに、はっきり線などで区切った上で、第2巻以降の目次を入れます。
その場合は、何ページかということまでは要りません。
どういう内容が第何巻に含まれているかがわかればいいのです。
点訳書第2巻以降には、その巻の内容とページ数だけを書きます。

まず、奇数ページの第1行目に「モクジ」と書きます。
書く位置は、7マス目からでも、9マス目からでも、あるいは真ん中でも、特に決まりはないのですが、目次の中身に、段階があるとき、たとえば、第1編の中に第1章、その中に第1項があるような場合は、目次の項目も始まり位置に差をつけなければなりませんから、最初の「モクジ」が前の方から始まっていると、中身との区別がつきにくい事態も予想されます。
最初の「モクジ」は、別格にしておきたいということを考えると、真ん中に持っていきたい気がします。
ところが、「モクジ」というのは短い言葉ですから、行の真ん中に置くと、触読者が触れ損なう可能性があります。
行の始めの方に何もないと、空行だと思ってしまうかもしれないのです。
そこで、案内線を付けることがよく行われます。
「みずほ」では、6マス下げて7マス目から2・5の点を7マス分打ち、1マスあけて、モクジ、また1マスあけて、2・5の点を7マス分、というようにしています。
■■■■■■−−−−−−−■モクジ■−−−−−−−
という具合です。
そのへんは、グループによっていろいろなバリエーションがあります。

目次の項目は、3マス目から書き始めて、複数行にわたるときは行頭、というのと、1マス目から書き始めて、2行目以降は3マス目から、という方式があります。
そして、さっき書いたように、段階があるときは、大きなタイトルほど、2マス単位で下げて書きます。
見出しの書き方と同じですね。

項目を書いたあとに1マスあけ、2の点、または3の点でつないで、また1マスあけ、ページ数を入れますが、ページ数の数符の位置は、どの行も同じにします。
ページ数は最大3桁ですから、常に後ろから4マス目、つまり29マス目に数符がくるようにします。
28マス目は、空白マスです。
そして、全ての行で、28マス目以降はページ数のエリアとなります。
項目などの文字がここへ入り込まないようにしてください。
ページ数だけを縦に触って探す場合に、わかりやすいようにです。

項目とページ数をつなぐ点線は、最短でも3マス分は必要です。
前後にマスあけが要りますから、項目とページ数の間は、最低5マスあいていなければならないことになります。
5マスない場合はどうするかというと、4マスなら、点線を打たずに空白マスにしておきます。 3マス以下なら、最後の言葉から、次行に移します。

原本で、目次と中の見出しの言葉などが異なる場合があります。
これは、目で見る場合には、許容範囲であったりするのですが、目次に頼ることの多い触読の場合には、あまり嬉しくないことです。
できるだけ本文の見出しのとおりに目次を作った方がいいでしょう。
但し、本文の見出しに括弧書きなどが含まれていて煩雑なときには、それを抜かして目次に載せる方がいい場合もあります。

●点訳書凡例など
この点訳書では、この点はこういうふうに処理した、というような、その本を読む前に是非知っておいてもらいたい点訳上の方針や注意事項などを、第1巻目の目次のあとに入れることができます。
長ければページを改めてもいいし、短ければ目次のあとにはっきりと区切り線を入れてから書いてもいいでしょう。

●巻末にある参考文献、著者紹介など
あれば、最後の巻の奥付の前に入れます。
本文との間は、ページを改める方がいいかもしれませんが、本文の最終ページの裏になってもかまいません。
ページ数は、本文から通しページにします。

●索引
原本に索引があれば、原則として点訳書にも付けます。
索引を作るのは、本文の校正がすっかり終わって、もう修正がない、という状態になってからです。
でないと、かなり大変なことになります。
そうでなくても、索引を作る作業は結構大変です。
原本の索引が、Aという項目について書いてあるのは13ページ、と言っているとします。
原本の13ページは、点訳書で言うと、22ページの真ん中あたりから25ページの2行目だったとします。
でも、Aという事柄は、点訳書の22ページにも23ページにも出てこないかもしれません。
その場合には、点訳書索引には、22ページ〜25ページと書くわけにはいきません。
24ページに出てくるのであれば、24ページと書きます。
でも、1箇所だけとも限りませんから、よく探さねばなりません。
もしかすると、24ページから25ページにまたがって書かれているかもしれません。
たとえば「湾岸戦争」という言葉が、「ワンガン」は24ページの最後に、「センソー」は25ページに書いてあるかもしれません。
これを、24ページ、と書くのも、24〜25ページと書くのも、それは索引の表記方針として一貫させれば、どちらでもいいと思うのですが、いずれにしても、ひとつひとつの項目について、点訳書における場所を特定して索引を作っていくのは、ちょっと根気が要ります。

個人宛の点訳で、できた順に届けるような場合、本文はまだ全部できていなくても、索引を作らなくてはならないこともあります。
その場合は、原本ページのままの索引になります。
もちろん、本文に原本ページが入れてある場合に限ります。
(原本ページは、本文ページ行の3マス目から入れます)

●奥付
必ず奇数ページ(表ページ)から始めます。
ページ数は付けません。
1行目に「オクヅケ」と書きます。
内容は、原本奥付の情報と、点訳書の情報とからなります。
1.原本奥付の情報として書かなければならないこと
 書名、あれば副書名、叢書名、巻、版、刷など
 著者、訳者、編者など(大勢の場合でも原則として全員)
 出版年月日(西暦でも元号でも原本表示どおり)
 出版社とその住所・電話番号
他にも、必要に応じて、定価、ISBNなど。
次に、線で区切ってから、
2.点訳書奥付
 製作者(グループ名)とその住所・連絡先
 点訳完成(「みずほ」では、西暦年月までで、日は入れていません)
 点訳者(分冊して点訳した場合や、その他いろいろな事情で、個人名でなくグループ名でもいいでしょう。但し、責任の所在がうやむやにならないように、グループとしては記録を残しておく必要があります)
 校正者(同上)

奥付が打てたら、とりあえず、できあがりですね。
でも、まだやることはあります。
むしろ、ここからの方が時間も手間もかかるでしょう。

まず、ご自分で見直しをしてください。
文字の間違いがないか、マスあけは適切か、はじめの方と終わりの方で同じ言葉の読み方が違っていたりしないか、同格の見出しの始まり位置は揃っているか、見出しがページの最終行に来ていたりしないか、不必要に行があいているところはないか、目次や索引に書かれたページ数と本文のページとがずれていないか、よくチェックしてください。

それが済んだら、他の人に見てもらいましょう。
自分では自分の間違いになかなか気がつかないものですから、他人の目を経るというのは、非常に大切なことです。
もし、ご希望があれば、「みずほ」で見せていただくこともできます。
さあ、それでは、どんどん点訳してみてください!






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