「みずほ点訳」ホームページ

「みずほ流」点訳入門教室

0.はじめに



準備(各自、ご用意ください)

1.テキストは、『点訳のてびき』第3版(編集・発行:全国視覚障害者情報提供施設協会、2002年3月第1刷)を使います。
各地のライトハウス、点字図書館などで販売しています。
定価1000円+消費税、送料は別。

2.点訳ソフト「T-エディタ」(フリーソフト)のダウンロード。
   http://www6.ocn.ne.jp/~t-editor/


T−エディタ

T−エディタは、初めての人向きに、必要なものが全部入っているセットが用意されていると思いますので、それをダウンロードすると良いと思います。
ただ、バージョンによっては、画面上に点字フォントを表示する為に、外字エディタに点字フォントを入れる必要があるかもしれません。
たぶん、Tエディタのセットの中に、点字フォントも入っていて、それを外字登録するのではないか、と思います。

T−エディタは、従来の点訳ソフトと、入力法等に、大きな違いはありません。
セットアップが完了して、アイコンができ、それをクリックすれば、点字編集画面が出てきます。
黄色くなっている1行目は、ページ数を書き込む行です。
データが3ページ以上になるときは、ここにページ数を入れますが、はじめのうちは入れなくて結構です。
ですから、黄色い行は飛ばして、次の2行目から打ち始めてください。

そこで、決めなくてはならないのが、どういう方法で点字を打っていくか、なのですが、点字が6つの点で構成されている以上、6点を6つのキーに置き換える、6点入力が最も合理的といえます。しかし、キーボードによっては、6点の同時入力ができないものもありますし、ローマ字入力も可能ですので、自分でどちらかを選んで、ツールバーの「その他・環境設定」で、入力方法を選ぶことになります。


Q. ローマ字入力でも、6点入力と同じように点字が打てるのなら、その方が簡単だと思いますが、記号などを打つのが難しい、という話も聞きますが・・・。

ローマ字入力ということで、T−エディタのヘルプに助けを求めたら、「ローマ字変換対比表」なるものを発見。
出力文字、6点表示、キー入力と表示されていて、例えば波線  [36][36]  @_ といった具合に。
それで面白半分に遊んでみました。6点だけを使うのと違って、点訳に使用される特殊な記号の入力文字を覚えるのは大変そう。それに、ローマ字入力では点字の形が覚えられないのは、ちょっと残念。
点訳を習い始めて、はじめてエレベーターにあった点字が読めた時は、本当にうれしかったから!


ローマ字入力

点字が初めてという方には、ローマ字入力はとっつきやすいように思われるかもしれませんが、それは、始めのほんの少しのところで、あとのことを考えると、6点入力の方が多分簡単だろうと思います。
ひとつには、使うキーの数が圧倒的に少ないからです。
基本的には、点を打つ6つのキーと、スペースキー、改行キー、文字を消すためのデリート及びバックスペースキー、それだけで済んでしまいます。
あとは、ファンクションなどの機能キーがありますが、それは、ローマ字入力でも同じことです。
もうひとつは、実際の点字というものが、6点で構成されている以上、パソコンの画面上に表れる墨字(触読のための点字に対して、視覚で読むための文字をスミジと呼びます。別に、墨で書いてなくても)は、実はまったくの虚像であるわけです。
読み手にとってどういう書き方が読みやすいか、というようなことを考えるには、どうしても、実際の点字の形を知っておく必要があります。
キーボードなどの関係で6点同時入力ができず、ローマ字で入力する場合でも、いずれどこかの時点で、必ず、点字の形を頭に入れていただきたいと思います。
T-エディタの画面上には、最下段に点字が表記されますから、それで覚えてくださればいいですね。
記号類も、6点で覚えてしまえば簡単ですが、ローマ字入力の場合は、前述の方法(ヘルプで対照表を見る)か、あるいは、「入力」を選んでからその中の「記号」を選んで、出てきた記号表の中から必要なものをクリックする方法とがあります。
まあ、その辺の詳しいことは、また後日。

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6点での点字入力にすっかり慣れてしまっていると、どうしてもそれ以外の入力方法に否定的になります。
点字というものの構造上、6点入力がいちばん理にかなっている、とはいえるのですが(でなければ、そもそもそういう入力法の点訳ソフトが開発されることもなかったでしょう)、しかし、ここでは、6点式以外の入力法(主にローマ字)を肯定的に考えてみたいと思います。

点訳、という作業を何年も続けると、なんというか、職人意識、みたいなものが生まれて、6点で打たなきゃだめ、とか、点字が読めない点訳者はだめ、とか、つい頑なに思い込んでしまったりするのですが、でも、読み手にとっては、出来上がった点訳物がすべてですから、その過程はさほど重要ではない、と言って良いと思います。
ですから、6点入力が便利ですよ、ということをちらつかせつつ(?)も、ローマ字入力についても、勉強してみたいと思います。
と、いうわけで、ちょっと、ローマ字で打ってみました。
その印象をランダムにあげていきます。

まず、数字を打つと、勝手に数符がついてきてくれるのは嬉しい(数符については、またあとで)。
こういった記号はソフトがちゃんと「あ、数字だから数符をつけなくちゃ」って、覚えていてくれるんですね。

点字独特の記号の入力方法ですが、いくつかやり方がある中で、多少は点字の形を覚えるのにも役に立つかな?と思ったのが、「簡易6点入力」というものです。 ツールバーの「入力→簡易6点」、もしくはAlt+F2で、左の中段あたりに、6つの枠がでてきます。その枠の必要なところにチェックを入れて、「OK」すると、カーソルのある位置に、その点が表示されます。
例えば、「小見出し符」は、6の点で1マス、5・6の点で1マスの2マスの記号ですから、まず6番目の枠にチェックしてOK、次に5と6の枠にチェックを入れてOK,これで、小見出し符が打てました。
つまり、紙に点筆で点字を打つ、という作業を画面上でやるわけです。
少々まどろっこしいですが、点字の一覧表などを見ながら、この作業をするうちに、点字記号の形が多少は理解できそうにも思います。
もちろん、「入力→記号」の方が手っ取りばやいのですが、たぶん、のちのち、「点字の形を覚えていないとちょっと困る」という局面に出くわすと思いますので、この方法も頭に入れておかれるといいと思います。

普通にワープロで文章を打つ場合、ローマ字で入力して漢字なりカタカナなりに変換しますよね?
でも、点訳の場合、この「変換」という作業は必要ないわけです(一般的に「点字」という場合、漢字やカタカナに相当するものは無いのです。漢字の点字については、どこかで出てくるかもしれませんが、ふつう「点字」といったら「仮名点字」のことだと思ってください)。
ふだんローマ字入力に慣れていればいるほど、つい変換しようとしてスペースキーを押してしまいそうになるのではないか、と思うのですが(私は、いくらかそんな感じになりました)、ローマ字で点訳されているかたは、そのあたりに不便を感じていないのでしょうか?
また、長音や助詞の「は」や「へ」の扱いの違い(このへんのことものちほど)も、点訳のときと普通の文章入力のときとで、簡単に切り替えられるものなのかどうか、ぜひお聞きしてみたいものです。

我が家のパソコンは6点同時入力ができませんので、点訳のときは、外付けのキーボードを使っているのですが、たまに面倒になって、外付けを使わず、ローマ字入力を選んで、ときどき6点入力に切り替えて、打てる範囲の記号を打ったりします。
ローマ字入力のために、記号用に配分されているキー(ローマ字変換対応表にあるやつですね)を覚える意欲はなかなか起こりません。
6点入力って、ほんとに楽なんです(と、宣伝しちゃいます)。
どっちもできるようになると便利かな、とは思うのですが・・・

ツールバーの「その他→環境設定→編集」の「入力切替」のところにチェックを入れておくと、F10キーで、「6点・ローマ字・英数」を切り替えられます。
絶対に6点、とか、かならずローマ字、とか決めてしまわないでも、自分のキーボードのくせ(?)に応じて、臨機応変にやっていく、という方法もあり、かもしれません。

長くなりましたが、突き詰めていえば、「慣れ」の問題なのでしょう。


Q. 入力は凸面の形でいいですか?

凸面から見た字を入力していって結構でございます。
凸面は「読む方」、いいですね、いいですね。点字の形も覚えられるし、大賛成。

あぁ、なるほど、凸面で覚えていけば、凹面の字の形を覚えなくてもいいんですね。
自然に覚えてしまうということはないのかな?
手で点字を打っていた時は、「打つ方」「読む方」と字を頭の中でひっくり返して、こんがらがって、分からなくなってと苦労?しました。
ひっくり返しになっている字が結構あって、「シ」と「ト」とか「オ」と「ラ」とか「コ」と「タ」とか、で、これを打ち間違えたり、読み間違えたり。
「オリーブ、飛んで跳ねる」の「ト」を「シ」に間違えると、キャァー、怖いということに。
1度、てびきで点字の形を見てみてください。
おッと、わけのわからないことを・・・。
失礼しました。


凸面・凹面

晴眼者が点字を覚える場合、先ず、凹凸どちらで覚えるかは、いろいろなのですが、従来は、紙に手で打つ、ということが基本だったので、そのためには、凹面の形を覚える必要があったのです。
尤も、始めの1年間くらいは、凸面から読む練習ばかりで、その後、ようやく打たせてもらった、という講習会の話も聞きました。
それから、打つときは凹面からだけれど、それを自分で読み返すときは必ず凸面から、と厳しく指導される場合もあるようです。
でも、いちばん多いのは、先ずは凹面で覚えて打ち、そのうち凸面からも読めるようになりなさい、という指導だったと思います。
この、頭の中で切り替える時期、というのがなかなか難しくて、最適の(楽に切り替えられる)時期は人によっても異なるようです。
私は、2年ほど経った頃、凸で読む努力を始めたように記憶していますが、その途端に、打つ方もあやしくなって、逆字ばっかり打っていました。
読む方もいまだに混乱していて、他の人が打ったのを読んでいるときなど、かなり気をたしかに持っていないと、あれ? さっき鍋に入れたのは「ミソ」だったっけ? 「モチ」だったっけ? と、非常に不安になります。
結果はずいぶん違った料理ができますからね。

その点、最初からパソコンでなさる方は、裏から作業する必要がなく、触読する人と同じ凸面だけでいいわけですから、羨ましいです。
凸面の場合は、進み方はもちろん左から右です。(紙に手で打つときは、裏からの作業になるので、右から左です。体験教室などで、子どもたちに点字を打ってもらうとき、打つのは、字の左右と進む方向が、読むのと逆になりまーす、と説明しても、実際打つ段になると、必ず2〜3人は、左から打ってしまう子がいます。字を右から書くなんてことは普段ないからですね)

この頃は、いろんなところに点字表記が増えました。
ビールやお酒の缶、シャンプーやリンスの容器、郵便ポスト(でも、肝心の収集時刻が抜けていたりすることもありますが)、公共施設の階段の手すり、銀行のATM、バス停、公衆電話などなど・・・。
東京の山手線の電車のドアにも、何両目の何番目のドアだという表示がついているのがあります。
凸面で点字を覚えていれば、みーんなすんなり読めますね。
ある程度覚えたら、ためしに読んでみてください。

          ☆★☆★☆★☆★☆

初めて点訳講座(手打ち)を受けたとき、どういう理由でかはわかりませんが、あまり凸面で読むことを強制されなかったような気がします。
おかげで、というか、たんに私が怠け者だったせいで、私は長いこと凹面でしか点字を読むことができませんでした。

パソコン点訳で、もっとも一般的な入力方法である「パーキンスF」方式では、Fキーが1の点で、以下同様にD-2、S-3、J-4、K-5、L-6という配列ですから、FとJを頭にしてそのままキーを縦に並べると、点字の凸面の1から6の点をイメージしやすいようにできています。
ところが、私は読めるのは凹面だけにもかかわらず、パソコンの入力方法として教えられたのが、パーキンスF方式でしたから、最初はそれぞれのキーを担当する指が打っている点が、何番なのか、ちっとも思い浮かべることができませんでした。
まどろっこしい言い方をしてすみません。
パーキンスF式の入力方法では、F(1の点)が左手の人差し指、D(2の点)が中指、S(3の点)が薬指、J(4の点)が右手の人差し指、K(5の点)が中指、L(6の点)が薬指、というふうに固定されているので(いや、別にほかの指で打ってもかまわないと思いますが、必要なキーを同時に押す為には、この指位置が合理的だと思います)、凹面しか読めなかった私には、なかなか指と点を関連づけるのが難しかったのです(いまでも、ぼんやり打っていると凹凸を間違える。お味噌のかわりにおもちをお鍋にいれることはよくあります)。

慣れ、というのでしょうか?
いつのまにか、凸面でも、すらすらとはいきませんが、なんとか読めるようになりました。

点字は凸面を読むものですから、晴眼者も、凸面を読めればよいと思います。
でも、ある視覚障害者の方が、せっかく両方見えるんだから、両方覚えるのもいいんじゃない?って言ってました。
まだはじめたばかりですから、あれこれ欲張ることはないので、凸面を覚える、で充分だと思います。 そのうち、ちょっとゆとりが出てきたら、凹面も読んでみてください。
何かの役にたつ、ということはないかもしれませんが、けっこう楽しいと思いますよ。


『点訳のてびき』にそって

『点訳のてびき』はお手元にありますか?
一気に読破しようなんて思わないでくださいね。
少しずつ、実際に打ってみながら進めていけばいいと思います。

第1章は、「点字・点訳の基礎知識」という名の通り、ほんとの基礎知識ですから、よーくお読みください。
実際に打つことに気がはやるあまり、ここをとばしてしまう方があるのですが、これらの基礎的なことを知らずに「点訳」をしようとすると、とんでもなく的外れなことになったり、役に立たない点訳になったり、読者に迷惑をかけたりします。
ある程度、点字・点訳に対する全般的な視野がないと、「あいうえお」が打てるだけでは、点訳者とは言えないと思います。
この中で言われている、墨字と違って点字が仮名文字体系である、ということが、点訳者にとっても読者にとってもどんなに大変なことかは、そのうちイヤというほど思い知らされることと思います。
楽しみにしていてください(?)。

第2章「語の書き表し方」の「仮名遣い」(p.11〜20)ですが、6点入力をするには、点字の形をここで覚えることになります。
覚える、といっても、50音を丸暗記する必要はありません。
日本語の仮名を表す点字は、母音と子音の組み合わせでできているので、5つの母音と各行に付加される子音部分を知っていれば、全部打ててしまいます。
それも、もちろん始めは表を見ながらでいいわけです。
いろいろな言葉を打ってみているうちに、よく出てくる字からついつい覚えてしまいます。

6点入力(入力→6点)で、どの点をどのキーで打つかは、いくつかのパターンから選べます(その他→環境設定→6点)。
まったくの点字初心者であれば、左手でF(1の点)・D(2の点)・S(3の点)、右手でJ(4の点)・K(5の点)・L(6の点)という、パーキンス1方式で覚えるのがいいでしょうか。

ローマ字入力の場合は、普通に入力すればいいのですが、点字の形はなるべく覚えてくださるといいですね。
直接パソコンで始める方は、凸面(『てびき』巻頭の黄色いページ)で覚えるといいと思います。

点字の仮名遣いは、墨字と違うところがあるので、要注意です。
助詞の「は」「へ」、仮名で書いたとき「う」で書き表す長音が、墨字と違います。
これは、墨字の表記よりも、日本語の発音に忠実な表記です。
幼少時より耳からの音だけで言葉を覚えた人にとっては、この方が自然でしょう。
小学校の始めの頃、国語の時間に「は」や「へ」の使い方をずいぶん間違えたような気がします。
それは、墨字表記が発音通りではないからなんですね。
ただ、その後の学校教育の中で、私たちはその不自然な表記にすっかり慣れてしまったので、しばらくは頭の切り替えが大変です。
特に、ローマ字で普段ワープロなどを打ち慣れている方は、きっととても間違いやすいだろうと思います。
入力方法が変われば、そこで頭を切り替えやすいのですが。

さて、この段階では、なるべくたくさんの言葉を打ってみることをお勧めします。
『てびき』に載っている例でもかまいませんし、他の言葉でもご自由にどうぞ。
ただ、文章になると、また別の約束ごとが入ってきますので、それはまた後日。







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