茶音頭(山田・茶の湯音頭)
   作曲 : 菊岡検校   箏手付 : 八重崎検校    演奏時間 : 約14分

  〔解 説〕

   茶の湯の事物になぞらえて、男女の恋を述べたもので、歌詞は極めて面白く、調子もよくできている。
   しっくりとした情緒豊かな名曲であり、踊り歌として作られたものなので、お茶のお手前に伴奏される。


  〔歌 詞〕

   世の中に勝れて花は(1)吉野山、紅葉は(2)立田茶は(3)宇治の、都の(4)辰巳(たつみ)それよりも、

   (5)里は都の(6)未申(ひつじさる)(7)数寄(すき)とは誰が名に立てし、濃茶の色の(8)深緑、

   (9)松の位にくらべては、(10)かこひというも(11)低けれど、情けは同じ(12)床飾り、飾らぬ胸の(13)裏表、

   帛紗(ふくさ) (14)捌けぬ心から、聞けば思惑(おもわく) (15)違い棚、逢うて、どうして(16)香筥(ころばこ)の、

   柄杓(ひしゃく)の竹は直(す)ぐなれど、そちは茶杓(ちゃじゃく)(17)(ゆが)み文字、憂(う)さを晴らしの(18)初昔、

   昔し話の爺婆(ぢぢばば)と、なるまで釜のなか冷めず、、緑は(20)鎖の末永く、千代万代へ。


   (1)奈良県の桜の名所。 (2)奈良県の紅葉の名所。 (3)茶の名所。 (4)宇治は京都の辰巳(十二支でいう南西)にある。
   (5)島原遊郭。 (6)島原は京都の未申(十二支でいう南西)にある。 (7)茶の湯その他の遊芸、風流、好事など。
   (8)濃茶と松との掛詞。 (9)遊女最高の職名。 (10)茶室。 (11)松の位の高いのに対する掛詞。
   (12)廓の寝室と床の掛詞。 (13)茶道には表と裏の二流がある。 (14)恋の推量が足らないことをいう。
   (15)茶室の違棚の掛詞。 (16)どうして「こう」と香を兼ねていう、香筥は香の道具を平素納めておく箱。
   (17)あなたがゆがみ文字の恋文をよこした、茶杓の曲りにかける。 (18)茶の銘、遠い昔の掛詞。
   (20)茶釜をつるす鎖、縁との縁語。


  〔通 釈〕

   世の中で花に勝れた山は吉野山、紅葉に勝れた山は立田山、茶に勝れたところは宇治、喜撰法師が古今集に
   辰巳しかぞ住むうたった宇治よりも、里は都の未申に当る島原の遊郭が勝れている。通人・風流人の風流を
   数寄と誰が呼び、評判を高くしたのか、その通人の立てる茶の湯の濃い茶の色は深緑、松の位即ち太夫からくら
   べれば、囲い女郎を茶室の意をもつ「かこひ」と呼んでも身分は低いが、人情の点では生娘と同じ床飾りの美しさを
   もっている。偽り飾らない胸の裏表、裏表の布から出来た帛紗、その扱い方の上手にゆかない心のなやみから、
   聞けば茶室の違い棚のような思惑違い、されば逢って、どうしてこうしてと話してみれば、その香筥の柄杓の竹は
   真っ直ぐなように正しいが、そちらは茶杓の先が曲がっているいるように、ゆがみ文字となって曲がって私に
   苦しみを与えなさる。憂さ晴らしに初昔の茶を飲んで、やがてはありし昔の若かった当時の懐い出話をする爺婆と
   なるまで茶釜の湯のように冷めないで、茶釜を釣った鎖のように、強く末永く変らず千代万代と幾久しく絶えない縁を
   祈りましょう。


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