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やせっぽっちのデリバード



ずっとずっと北の場所、大きな大きな森の中…
はく息が白くなった頃、この森のデリバードは冬支度をしていました。

「ハックション!」
…おや?
「クシュン!……デリ〜…」
深い深い森の中、一羽のデリバードが歩いて...いるけれど、
何だか様子がおかしいみたい。
「クシュ…」
「おいおい、また風邪をひいたのかいビショップ。」
「あっ、父さん…」
このデリバードの名前はビショップ。
他のデリバードと比べるとやせていて、大人しい子。
だけど、氷タイプなのに風邪をひいてしまう悩みを持っています。
「もうすぐクリスマスで、サンタクロースの手伝いをするはずなのにな。
仕方ないから、またあそこの木の烏鷺(うろ)で休んでいなさい。」
「はーい…」
そう、本当だったら今年からサンタさんのお手伝いをして、
子ども達にプレゼントを配るのをお手伝いするはずだったのです。
でもこの調子だと難しそうね…

「ハッ、ヒッ、ヒッ…クシュン!」
木の烏鷺(うろ)にたどりり着いても、
いっこうににくしゃみが治まる気配はありません。
足下にはわらが敷いてあるし、それにさっきやって来た
お友達のルーク君がくれたきのみもあるけれど…
食欲もないので、きのみもあまり食べられませんでした。
「……デリリ〜…」
「うっしょ、あっきのみめっけ!」
急に烏鷺(うろ)の外から誰かの声がしたので、ビショップは振り返りました。
「あ…マース君。」
「ひゃっ!!」
そういった拍子に手を滑らせ、コラッタの姿が急に消えました。
「…お〜い、マース君??」
「ひぃ〜〜…びっくりさせるなよな、もう。」
烏鷺(うろ)からどうにか顔を出して下を見てみると、
ちょうどコラッタは木に必死にしがみついていました。
「まさかここに君がいるとは思わなかったよ。」
「…うん。風邪、またひいちゃったから。」
ビショップは溜め息をついて言います。
それでも登ってきたコラッタのマース君の方は特に気にしていないようで、
何故かきょろきょろ見回しています。
「…きのみ欲しいんだったらもってっていいよ。
どうせ僕、食欲ないし。」
「え、本当!?」
ぱっとマース君の目が輝きました。
どうやらそれが目的だったみたい。
「いや〜、もう寒くなっちゃったからきのみ見つけるだけでも一苦労なんだよ。
もう冬支度しないと、そろそろ体が動かなくなってきそうだし。」
そういって、きのみをかき集めて半分無理矢理口の中に入れました。
「〜、〜〜!」
「何言っているのか分からないよ。それに、手にまで持って大丈夫?
下に落としてから運んだ方がいいんじゃ…」
ビショップがそういうと、マース君は「あ、」と言っているような顔をしました。
それから慌てたように口に詰めたきのみと、手に持っていたきのみを
下に落としました。
「いや〜、全然思いつかなかったよ。…えっと、もうちょっとだけもらっていくよ。
本当はおうごんのみとか、オボンのみとかがあれば、
こんなに持って行かなくてもいいんだけど。」
「オボンのみ?おうごんのみ??」
ビショップは聞き返しました。きのみやこおったきのみは知っていたけれど、
この2つのことは知りませんでした。
「普通のきのみより栄養価が高いんだよ。それで作った木の実ジュースなんかがあれば、
最高なんだけどな。それは熟練したツボツボしか作れないからな。
手に入らない物だけど、それだったらきっとお前の風邪だってすぐ治しちゃうだろうさ。
じゃあ、ありがとな。お大事に〜!」
マース君はそういうと、すぐに木の烏鷺(うろ)からでていきました。
「じゃあね。…ツボツボかぁ。海の近くにいるんだったっけ?ックシュン。」
ビショップはしばらくぼ〜っとわらにうずくまりながら空を見ていました。
空は澄んでいてとっても綺麗だけれど、風はとても冷たいです。
「お〜い、兄ちゃん!」
「キャッスル…」
その空から、一羽の小さなデリバードがやってきました。
ビショップの弟、キャッスルです。ビショップと違って風邪もひかず、元気な男の子です。
「さっき、誰か来てなかった?」
「コラッタのマース君…ヘックシュン!……だよ。きのみ探してたから分けてあげたんだ。
ちょっと話しもしてたよ。おうごんのみとか、オボンのみのきのみジュースだとか…」
「何、それ?」
キャッスルは興味津々にビショップの話を聞きました。
「え〜っと…熟練したツボツボだけが作れる、すごいきのみジュースなんだって。
コラッタ君はそれなら風邪だって治せるって言ってた。」
「え、本当!?」
キャッスルはさっきのコラッタ君と同じように目を輝かせました。
「じゃあ、それがあれば兄ちゃんもサンタさんのお手伝い、できるの?」
「多分…」
ビショップは返事を曖昧にしました。
聞いただけで、本当の事かどうか分からなかったからです。
「じゃあ、みんなに聞いてみる!」
「キャッスル!?」
キャッスルは急にどこかに飛んでいきました。
ビショップは、それをちょっと心配そうに見ていました。

しばらくして、森のデリバードのみんながその事を知りました。
ビショップの友達は、揃って海の方へ出掛けていきました。
キャッスルはついて行こうとしましたが、まだ小さかったのでみんなに止められました。
「大丈夫かな、みんな…ックシュン」
ビショップはわらにうずくまりながら、そんなことを考えていました。
海までは少し遠いのです。
それに、おうごんのみやオボンのみが見つかるとは限りません。
今日もビショップの知り合いがお見舞いに来ました。
でもビショップのお友達は今日は帰ってきませんでした。
ビショップはまたちょっと心配そうに、星空を眺めていました。

次の日も、昨日とあまり変わりませんでした。
だけど、その次の日……
「お〜い、ビショップ!!」
夕方になって、元気のいいデリバードの声が聞こえました。
ビショップは驚いて木の烏鷺(うろ)の外を見ました。
「あっ、ルーク…ハックション!にポーンにナイト、オーショ、クーイ…」
ビショップのお友達です。
「やっとおうごんのみジュースが手に入ったぞ!」
「オボンのみもね。熟成に1日半かかるから、時間かかっちゃった。」
「まぁ、ビショップのことだから心配してたかも知れないけど
この通り元気だぞ〜!」
「それより風邪、悪化しなかったよね??」
みんなはいっせいに顔を突っ込んだので、思わず木の烏鷺(うろ)に
顔をつっかえそうになりました。
「持ってくるための瓶探すのにも時間かかったし。」
「な、ほらこれだよ。」
ルークとポーンが小さな瓶を差し出しました。
色のついた瓶で、青と緑の瓶でした。
ビショップはお礼を言ってから、せっかくみんなが持ってきてくれたので
そのジュースを飲みました。
食欲がなくても飲み物だったので、何とも思わずに飲めました。
まず最初に飲んだ緑色の瓶の方は、何だか不思議な味がしました。
「おいしいね…ありがとう。そういえば、キャッスルはどうしてる?」
ふと、ビショップは聞きました。
この間からそわそわしていて、それに今日は姿を見ていません。
「キャッスル?」
「さぁ…」
「さっき戻ってきたばっかりだしな。」
「ここに直行したんだし。」
「僕たちも見かけてないな…」
「そう…」
ビショップはまた心配をし始めました。
「じゃあ、探してみるよ。」
「早く元気になれよ。」
「またね!」
「明日にはちゃんと一緒にサンタの手伝いしような!」
「ばいばい!!」
5匹のデリバードはみんな一緒に飛んでいきました。
「うん、よろしくね。」
手を振ったビショップはあまり元気がないままだったけれど、
くしゃみは出てきませんでした。

それからまたしばらくして、もうすっかり夜になっていました。
その間にレイドは、もう青い瓶の方も飲んでいました。
それは何だか、とっても懐かしいような味がしました。
「明日、か…」
ビショップは何だか元気になってきたような気がしました。
体ももう寒いと思わなくなっていたし、心もとってもぽかぽかでした。
「ビショップ、ビショップ!!」
そんなところに、急に一匹のデリバードがやってきました。
「あ、クーイ。どうかしたの?」
「大変なの!キャッスルが、“辻風の谷”の方に行ったって、
マース君達が見かけたって……」
「何だって!?」
辻風の谷…風が渦巻くそこはとっても危険で、
物知りのデリバード、チェスじいさんに絶対近付かないように
きつく言われている場所です。
「何でそんなところに…」
「とにかく、今手分けしてみんなでその周辺を探しているところなの。
でも、まだ見つからなくって…」
「僕も探す!」
「ビショップ!?風邪はもう大丈夫なの?」
ビショップはうん、と言うと大急ぎで辻風の谷の方へ行きました。
近くまで来ると、今度は腹ばいになりながら
ゆっくり辺りを探しました。でも見つかりません。
「どこ行ったんだろう?ここまで来ると、もう谷のところにでちゃうし…」
急に木がなくなりました。
地面が土から岩に変わり、所々に草が生えているだけです。
何だか別世界に来たような、そんな感じがしました。
「本当に、来ちゃった…」
ビショップは左手でしっぽの袋をしっかり握りしめました。
風が吹いて、今にも飛ばされそうです。
戻らなきゃ、そう思いました。
「…うわ〜……」
「え?」
何か風が吹く以外の音が聞こえました。
ビショップは気になって、谷の下の方を覗き込みました。
「キャッスル!?」
よく見ると、そこにはビショップの弟、キャッスルがいました。
複雑になった岩の間に、必死になってしがみついています。
でも今にも谷の底に吸い込まれそうです。
「ど、どうしよう…来ちゃいけないのにこんなところに来て……
何も、道具ないし…」
風もびゅうびゅう吹いて、簡単には身動きが取れません。
風が大きな音を立てているので、声を掛けることもできません。
「うあっ!?」
とその時、ビショップの背中に何かが当たりました。
ビショップはそれを何とか右手で掴みました。
「木の枝?」
どうやら森から飛んできたようです。
それを掴みながら、ビショップはしばらく考えました。
「他に、方法ないし…もう一か八かだ!」
ビショップは決心してその木の枝を投げました。
ヒュウ、と谷の底に吸い込まれていきます。
「えいっ!!」
ビショップはしっぽの袋から、たくさんの光の玉を出しました。
「プレゼント!!」
光の玉は勢いよく木の枝を追いかけていきました。
そして、追いつきました。

ドッカーーーン!!

不思議に思ってしまうほど、大きな音がしました。
キャッスルの下で起こったそれは、爆風となって大きな風ができました。
「わっ!」
「キャッスル!!」
爆風は、谷の上へと広がってきました。
ビショップは急いでその爆風に乗って、キャッスルを捕まえました。
そうしてから、急いで森の方へと入っていきました。
「キャッスル!?」
「…う〜〜……」
キャッスルの手は腫れたような赤い色をしていました。
だいぶ長い時間あそこにいたようです。
「どうしよう…マース君が言ったように、木の実なんかこの近くにないし…」
おろおろしていても、近くに他のデリバードはいないようでした。
でもキャッスルはとても苦しそうです。
「プレゼント攻撃は、殆ど使ったことないし…爆発する方の確率が高いのに。」
でも他のことをできる時間はなさそうです。
ビショップはやっと決心を付けました。
「みんなからおうごんのみジュースと、オボンのみジュースもらったんだもん。
大丈夫…絶対、大丈夫……プレゼント!!!」
しっぽの袋から、今度は大きな光の玉を出しました。
その一つの光が、キャッスルの体に当たりました。
ビショップはドキドキしながらそれを見守っていました。
「う…」
「キャッスル!?」
爆発は起こりませんでした。
その光が消えると、キャッスルは目を覚ましました。
「キャッスル!良かった。」
「兄ちゃん?」
ビショップはキャッスルに抱きつきました。
それからしばらくして、そこから帰るときはキャッスルと一緒に
腹ばいになりながら、谷から遠ざかっていきました。
空を飛ぶと、谷に吸い込まれてしまうのです。
しばらくすると、他のデリバード達の声が聞こえてきました。
その頃には、もう空が白み始めていました。

「うわぁ…」
ビショップは空を飛んでいました。
空には月が、下には飾り付けられた一本の木があります。
ビショップが昨日まで休んでいた木です。
森のみんなが、飾り付けてくれたのです。
夜の暗闇の中にいろんな色が、綺麗に輝いています。
「ビショップ、ここにいたのかよ。」
「ルーク…」
ビショップの5人のお友達がやってきました。
「すごいじゃないか、あれだけのプレゼント攻撃ができたなんて。」
「うん…でも偶然だし、みんながあのジュースを持ってきてくれたからだよ。」
「そんなことないだろ。」
ビショップが少し寂しそうな笑いをすると、オーショがそれを否定しました。
「きのみは体力を回復させるけど、強くはならないよ。」
「ビショップってば、いつもシャイなんだから。」
「病は気から、さ。もっと自信を持ちなよ。
そうすればもう病気に何てならないさ。」
「大丈夫だよ。どれだけすごいかは、君自身が一番よく知ってるじゃないか!」
ビショップは、そうだったのかなと思いました。
確かに、いつも自信を持って何かをやったことは殆どありませんでした。
自信がなかったからこそ、谷に近付くとき腹ばいになったりしたのだけれど、
それでも、もう少しくらい自信を持っていいような気がしました。
「ありがとう、みんな。」
ビショップは、こんどはにっこり笑ってそういいました。
そうすると、みんなもにっこり笑いました。
「ほら、早くサンタさんを手伝おうぜ。もうクリスマス・イブの夜なんだから。」

これはとあるデリバード達の、小さなお話。
やせっぽっちだったデリバードの、心のプレゼントのお話。
さて、あなたはどのようなクリスマスを過ごすでしょうか?
メリー・クリスマス!
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