20051015 札幌講演会にて

 

  小耳症とは  第一第二鰓弓症候群の一症状

  ・患側顔面の低形成(骨・軟部組織)→顔のゆがみ、咬合異常

  ・顔面神経麻痺(閉瞼障害、口の歪み、軟口蓋麻痺)

  ・耳介の低形成(小耳症、福耳、外耳道閉鎖・・・)

  ・     巨口症

 

  疫学的事項

頻度:10000人〜6000人に一人(唇・顎・口蓋裂の1/10)ということは全国で年間120150

原因:不明(胎生期の癒合不全)

遺伝性:なし

片側性、両側性、外耳道の閉鎖、狭窄、遺残耳介の大きさも様々・・・各人により状況が違う

 

 聴力改善の手術の是非

 耳鼻科医の立場から・・・5dbでもあがれば成功。
  →しかし実際の本人の聞こえ方は変わらない。

成功率はきわめて低い→たくさんのリスク(感染、顔面神経麻痺・・・)

(内耳はあるのでバランスは正常な場合がほとんど。CT画面を見ながら説明 .内耳はあるがスペースは狭い。普通とは明らかに違う。穴あけは12年でふさがってしまう。 うまくいかないのに薦める医者は経過についてもっと勉強すべき)

 

  耳介形成のための治療方法

手術:肋軟骨移植(ほとんどこれ)、シリコンフレーム、エキスパンダー

擬耳(人工耳):糊で貼る方法、骨にピンを打ちこんでつける

(骨にピンを打ち込むタイプは将来耳介形成術を受けたくなった場合、場所の問題で困難になる。 シリコンは年月がたつととつぜん腫れた感じになったりシリコンが解け出たりする。)

 

   なぜ10歳なのか?

 耳の大きさは5歳でほぼ大人並み→就学前にやってあげたいのだが・・・ひとえに肋軟骨を利用することが問題。低年齢では軟骨が柔らかくて型くずれの恐れ。本当は中学、高校がベスト。でも部活や勉強への影響もある。20歳を超えるとだんだん軟骨は老化する。

(胸郭変形と低年齢では軟骨がやわらかく寝ている間に型崩れ。中高生から20歳までがほんとの適齢期 高齢になると軟骨が硬くなり折れやすくなる)

 

   肋軟骨とは

 骨格を維持する。呼吸をする。心臓と肺の保護

内臓を守っている。早い時期に取ると成長に影響が出る。年齢が小さいほど出る。7歳でも大きく出る。)

 

大人でも子供でも作る耳の大きさは同じなので小さな体からいっぱい軟骨を採ったら大変!しかし少しの軟骨ではまともな形は作れない。低年齢では軟骨が柔らかすぎて形も崩れやすい。

 

手術の時期は 事実を理解して家族のベストを選ぶべき。医者の言いなりになるな!そのためには知識をつけよう!関西では5歳でやるという施設も?!

 

   手術方法:2段階法

   初回手術(肋軟骨移植術)3週間の入院。

  半年以上あけて2回目手術(耳介挙上術)3週間の入院

   遠方の方はゆとりをもって入院期間を。

 

   ちなみに手術費用は?

もし私費で治療するなら 初回6070万円 2回目5060万円

保険適応でその3割・・・月67千円以上かかった額は申請すればあとで高額医療制度で戻ってきます。

育成医療制度:食事代も含めて適応(あまり声を大にして言えない現状でもあります)

 

   初回手術後合併症 
胸:気胸、痛み  耳:皮膚の鬱血、潰瘍、壊死。感染。浮腫

退院後の注意 原則:耳も胸も3ヶ月は注意が必要

(Y先生は勘を頼りに必要な分だけを取っているので2ヶ月で運動が出来るようになる。2ヶ月は激しい運動は避ける)

 

耳:強く擦れると薄い皮膚は危ない。圧迫が続くと血行が危ない。
      暑さが続くと垢が出る。(風呂上りに綿棒でやさしく)

装具使用時:就寝時、スポーツ時の保護 
     大体
3ヶ月くらい?・・・状況によって異なる

胸:強いねじれ、衝撃のかかる運動は禁止

 

   2回目手術後 
移植皮膚の生着は、耳介後面で不良になりやすい。強い浮腫が再び。痛くないから術直後からうるさい。

 (骨の上に皮膚移植は出来ないので 皮下組織まで必要となる。Y先生はは鼠径部ではなく下腹部からとっている。 鼠径部は色素沈着がはげしく黒ずみやすい上に成長と共に傷が下にさがってしまうこともある。 凹凸の出にくい人、極端に出ちゃう人(掃除しにくい)ケロイドも体質でありこれは誰がやっても同じ。やってみないとわからない。 毛根を切り取るオペを2回目で行う。作った耳は軟骨なので柔らかく曲がる。)

 

作りなおしの手術もたくさん・・・医師の技術の差は皆様が考えているよりはるかに大きいものがあります。今も作って一年もたたないうちに駆け込んでくる方があとをたちません。許せますか?

 

  ちなみに・・・そぼくな疑問

     親の軟骨(耳移植)を使えないのか?・・・
   アメリカでやられていたことはあったが・・・
   
  拒絶反応。吸収してなくなる。

  ・     人工軟骨はないのか?・・・常に感染の危険、
   人口のものではなかなかきれいな
形ができない。

  ・     再生医療の可能性は?・・・マスコミに踊らされるな!
 進んでいるのは事実。形は作れるがあっという間に解けてしまう。
形を維持する面では
10年前から進歩なし。 整形外科で一時的で吸収されてもかまわないということで行われている膝などの間接軟骨などの治療には有効

  ・     作った耳の持久性は?・・・もちろんなじんでしまえば一生ものです。

 

  H前大・S幌医大受診患者数(術前)

北海道24人、東北81人、関東49人、中部25人、関西44人、中国四国九州22人 計245

 

  Y先生の術式の特徴として

  ないものをつくるためには、体の他部位の犠牲を強いることになる。
   いかに少ない負担できれいな耳を作るか。

  →精神的苦痛、軟骨の取り方、毛の剃り方の一つまできめ細やかに!
    結果を出すためには愛情が必要。

 

  結論

本人も家族も正しい知識をしっかり持った上で、本人の気持ちを大切に。人によって状態も治り方も体質も皆違います。良いタイミングで自分にあった施設で一発で、すかっと決めよう!

小耳症のオペは難しい。元に戻ろう平らになろう縮まろうとする体の力に逆らうから。

水泳に限らず運動は呼吸器が鍛えられ胸郭の発達にいい。

20051015日に札幌でサークルMIMIとY先生が合体して開催された講演会での内容です。以上のことは 当日の講演会の流れに沿い順に書き出しました。皆様とご家族様のお役に少しでも立てましたなら幸いです。

すばらしい会に参加させていただいたので、私だけに留めておくのはもったいないと思い、皆様に少しでもお伝えできればとがんばってメモしてきましたが、何分にも素人ですのでわからないことは直接Y先生に質問してください。