お医者さんはタヌキなの(神経科)


私は‘病院の子’だったの。小さい頃は、ストレプトマイシンの空きビンをオモチャにして遊んでた。自分の注射器も持ってて、「きょうは疲れた」なんて、B剤打ってるおしゃまな子。

だから、病院に肩入れするところはあるかもしれないけど……。ネットによくある「○○服用体験記」……どう考えても、ちょっとヘン。薬がやたらと変わってるし、量も少なめ。あれでほんとに効くのかな?

たとえば、ある薬をもらって、めまいがしたとする。病院へ行って「この薬飲んだらめまいがしました」と行ったら、お医者さんはどうすると思う?

「ちょっとした副作用なので、気にしないで」と言いたいところだけど、そんなことを言うとすぐに不親切だとかヤブだとか言われる。「そうですか、ではこちらの薬を試してみましょう」なんて言えば、患者のことをよく分かってくれる、いいお医者さんということになる。

だから、同じような薬に変えてみるわけ。でも、また患者が文句を言ったとすると、「では、副作用の少ないこちらの薬にしましょう」とか言って、量を少なめにして出す。これじゃ効かないかな? と思っても、「危ない薬ばかりよこすヤブ医者」なんて言われるよりはマシでしょ?

薬に副作用はつきもの。ちょっとくらい我慢すればいいのに。女の子だったら、「あ……」なんて短く叫んで柱に寄り掛かる、なんて、けっこ色っぽいじゃない?

「おしっこが出なくなりました」なんて……そりゃ膀胱炎ならおしっこが入ってなくても出たくなるんだから……ないもの出せるわけないし、背骨を痛めたりするとほんとに出なくなるから導尿しなくちゃだけど、ちょっとした副作用の場合だったら、指で膀胱を押せば出るのよ。

でも、ただ押せば出るなんて言ったら、また不親切とかヤブとか言うわけでしょ。

「では、こちらの薬を……」なんて言えば、患者のことをよく分かってくれる親切なお医者さんということになる。そこでお医者さんは、「もうこうなったら、効かなくたってかまわない。子供だまし程度の量にして、たくさん出しちゃお」なんて、ひそかに思うかもしれない。

そんなことしてるうちに、いろいろな種類の薬が豪華に出るようになる。でも、実際には効かないの。

お医者さんはタヌキ……あなたは化かされているの。でも、そのタネを撒いたのがあなただとしたら、仕方ないでしょ?

「ちょっとめまいがするけど、生活に支障はないです」。「ちょっとおしっこの出がわるいけど、大丈夫です」……と、ちょっとひとことつけ加えるだけで、結果はかなり変わるのよ。


分岐点へ