不条理劇場 6
「注意書き」
作・真城 悠
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その青年ははちきれそうに膨らんだゴミ袋をやっとこさそのゴミ捨て場に置いた。
やれやれ、不精だとたまのゴミ捨ても一苦労である。
そして…この出す日を間違えてはいけないのである。
最近新しい法律が出来たとか何とか言っていた。やれ分別しろだの半透明のゴミ袋を使えだの。
青年も分かる範囲で賢明に「分別」らしきことをしたが、終いには面倒くさくなってきた。何しろ本気で分類しようとするとどちらに分けていいのかわからないものが多すぎるのである。しかも、よく宛名部分が透明の封筒が来るが、あの部分だけはなんと「燃えないゴミ」らしいのである。普段の都会暮らしがいかに自然に優しくないかの証明だろう。
ともあれ、今日は間違い無いはずだ。きちんと確認してきたのだから。前は何だか頑固じいさんが張っていて、明日は資源ゴミだ!とか何とかわめいていた。まったく鬱陶しいことこの上ない。しかもこの上月に1回は例外があったりする。
まあ、要は癖付けてしまえばいいのだ。曜日のリズムに合わせてあれ出すだのこれ出すだの。一人暮らしだとコンビニ弁当の容器だとかかさばる上に沢山出るゴミが多い。仕事帰りに買ったコンビニ弁当は出勤時に捨てるだの、雑誌は読み終わったそばから積み上げて一定量たまったら縛るだのと。以前はこれを単に積み上げているだけだったからな。
それじゃあ帰るとするか。
そう思って振りかえろうとしたとき、何やら妙な気がした。
…何か違う。
何だろう?今日は単に燃えるゴミの日のはずだが?
そうだ、この本は何だ?これは資源ゴミではないのか?そもそも量が圧倒的に少ない。この時間帯なら、うずたかく積み上げられていてもおかしくないのにたったのこれだけしかない。
不審に思った青年はそのゴミをかがみこんで見て見た。本当はこんなゴミあさりみたいなことなどしたくないのだが、もしもゴミの日を間違えていたらコトだ。
…?何だろう?カラフルな漫画本が多いみたいだが?ビデオまである。とても分別されているとは思えない。
その時だった。
「…?」
青年は何やら身体に違和感を感じた。
それは今までに感じた事の無いタイプの違和感だった。ゆっくりと内臓が動いて行くようなというか…。
「…!!!っ」
信じられなかった。自分の…自分の胸が、胸がむくむくと膨らんできているでは無いか!
「…あ…あ…」
その身体の変容は止まる所を知らない。あっという間にツンと上を向いた形のいい乳房がその胸に形成されてしまう。
続いてふとももがきつくなってくる。
「うわ…あ…」
きゅうっとウェストがくびれ、同時にヒップが張り出してくる。その身体つきが細く端正な女性的造形に整って行く。
思わず立ちあがる青年。
「な、なんだあ!?」
立ちあがってみるとその違和感にまたも愕然とする。視点が低くなっているのは明らかだった。
と、今度は髪の番だった。
何の変哲も無いスポーツ刈りは、つややかなさらさらヘアとなってすーうっと垂れ下がってくる。
「あっ…あっ!……ああっ!」
頭をぶんぶん振ったりするものの、光沢を放つ美しい黒髪がゆらめき、その肌を刺激するばかりだった。
全身がくまなく薄い皮下脂肪につつまれ、ふっくらと柔らかになっていく…。肩幅は狭くなり、そのなで肩ぶりは来ていたシャツが滑り落ちそうなほどだった。
「一体…何が…」
その目の前にかざされた手が、白魚の様にほっそりとした女性のそれに変わって行く…。
「起こったん…だ?」
はっ、として思わず口に手を当ててしまう。自然に出てきてしまうその仕草…もう間違い無かった。ついさっきまで青年だった彼は、今や可愛らしい少女に変わってしまったのだ!
「……あ…」
お腹にまで垂れてくるストレートヘアを自らの小さな手で取るかつての青年。
その時だった。彼女の目に、その注意書きが目に飛び込んで来た。
「萌えるゴミの日」