おかしなふたり 連載491〜450

第491回(2004年01月25日(火))
「ふーん、いいんだ。滅多にないチャンスだよ?」
 ・・・そう言われるとそんな気がしないこともない。
 しかし、男に“憧れの制服”なんてあるのか?
 女の子がスチュワーデスの制服に憧れるとかはよく聞くが、男がパイロットの制服に憧れるか?「パイロット」には憧れたとしても「パイロットの制服」には憧れないだろう。
 女の子がウェディングドレスに憧れるってのはもう耳たこだが、男が「花婿衣装」(?)に憧れたなんて話はついぞ聞かない。気持ち悪いよ。
「お兄ちゃん好きな職業とかある?」
「んー、そうだなあ・・・って小学生かよ!」
 この男の子の口調で鈴みたいな声なのだからたまらない。


第492回(2004年01月26日(水))
「いや、折角服を交換出来るんだから憧れの服にしてみればいいのにとか思ったの」
「そうだなあ、格闘家とか・・・」
 歩(あゆみ)も人並みに格闘技は観る。まあ、クラスの詳しい連中は「ちょっとおかしいんじゃないか?」と言うほど異常に詳しい。それもどの団体の誰と誰は仲が悪いとか、誰が誰の門下生だとかしょーもないことばかり知っている。まあ、男子高校生なんてのはこんなのもなのかもしれない。
 勿論歩(あゆみ)はそういう格闘オタクではない。だから「好き」と言ったって、「テレビでたまに観ることもある」という程度だ。あの何かというと数を数えたり人をビンタで張り飛ばしているおっちゃんが昔プロレスラーだったんだ、というのを最近知った程度の薄さである。
「格闘家ねえ・・・」
 流石に男子高校生姿に小柄な身体を押し込んだ美少女も苦笑する。
 わざわざ柔道着だのリングパンツだのを着替えて喜ぶ男もおるまい。
「あたしはお兄ちゃんの前だったら上半分すっぽんぽんでも別にいいんだけどね」
 さりげなく大胆発言をする妹。


第493回(2004年01月27日(木))
 そうか・・・。
 そう、まあありえないのだがもしもその変身をするということになるとちょっと困ったことになる。
 そうなのだ。服と身体を段階を追って変身させてしまうと、一瞬だが女の身体のまんま半裸を晒すことになってしまうのである。服が先に変わるからね。
 それに今気が付いた歩(あゆみ)。
 ふむ、自分が極悪人だったらそうやって妹をいじめることも出来るわけだ・・・まあ、そんなことはせんけど・・・。
「じゃ、そういうことで」
「うん」
 結局は先ほど歩(あゆみ)が着ていた何の変哲も無い普段着に落ち着いた。
 言われた通り、下着まで男物にしてある。
 今日はどんなガラパンだったかまで思い出しながらだったので間違いは無いだろう、と思う。
 それにしても、普段はそこまで意識しないのだが、今日はあれこれあって結局かなり意識・・・とうかイメージしてしまう。
 自分がどんなガラパンだったかとか、シャツはどんなんだったとかそれこそ「下着」の段階までである。
 しかし・・・我が妹はこんな具合に兄にどんなブラジャー着せるかなどなどをいちいち詳細にイメージしてる訳か・・・ 何ともぞっとしない話だ。と暑いのに冷や汗が出そうな思いになる。


第494回(2004年01月28日(金))
 すぐに服の中の妹を男にする。
 妙な日本語だが誤植ではない。歩(あゆみ)は妹に対して念じるだけでその身体を男にしてしまうことが出来るのだ。
「ふう、出来たね」
「・・・うん」
 目の前に妹の面影を残した美少年が出現する。今自分が生み出した訳だが。
 大分慣れてきたとはいえ、それでも男と女で、今自分が女である。ちょっと意識しないといえば嘘になる。


第495回(2004年01月29日(土))
「じゃーまー早速脱いで」
 聡(さとり)は特に普段から“女言葉”という訳では無い。かといって「ボク」とか言っちゃう様なタイプでもない。
「ここでか?」
 制服少女が驚く。
「じゃ部屋行く?」
「男なんだからお前脱げよ」
 凄い会話だ。
「あたしは別にいーんだけど、脱いだ後着る服がすぐに欲しいもん」
 少し考えれば分かるが、服を交換するということはお互いに一瞬下着姿になることを意味する。
 これまでは念じるだけでお互いの服まで変えてしまっていた。つまりは“着替える”行程が一切無かったので非常に楽だったのだが、今回ばかりはそうは行かない訳だ。

「じゃあこうしよう」


第496回(2004年01月30日(日))
 歩(あゆみ)の提案はこうだった。
 今の聡(さとり)は男なので、少々露出度が高い格好をしていても構わないことにする。本人に確認を取るとそれで構わないという。開けた妹だ。今は弟だが。
 ということでまず男になった聡(さとり)に今着ている服を脱いでもらう。
 今度はその服を持って、今は女になっている歩(あゆみ)が、今いるような開けた場所・・・ダイニングとか・・・ではなくて、それこそ自室に行って、その場で女物の制服を脱ぎ、そして持ち込んだ男物の制服を着る。
 そして、今脱いだばかりの女物の制服をもって、下着姿で待っている聡(さとり)の元にやってくる。 
 そこで今度はその制服を持って聡(さとり)が密閉した部屋に入る。
 ここでお互いにお互いの身体を元に戻す。
 そうすると、“男装の少女”状態になっている歩(あゆみ)は“男装の少年”状態になって元の鞘(さや)に納まり、聡(さとり)は“下着姿の少女”となるので、その状態で目の前の女物の制服を身に付ければ万事OK、と言う訳だ。


第497回(2004年01月31日(月))
 つまり徹底的に「女性の身体」を大事にした方針だ。変身前も後も着替える前も後もきちんと外部の目に晒されないようになっている。
「・・・と、こんなんでどうだ?」
「さすがお兄ちゃん。頭いいなあ」
「てゆーか、お前もこの程度は考えてくれよな」
「ごめんごめん。思いつきだけで」
 お互いに言葉にはしなかったが二人とも一様に思っていた。「これは面倒くさいなあ」ということを。
 いつもなら念じるだけでお互いに服まで変わってしまうので、服装に関する苦労は特に無い。
 その上、実質的に場所を選ばない。
 それこそトイレの中とか、プリクラの中でまで変化させられるのである。まあ、時には走る電車の中とか言語道断な場合もあるが・・・。
 ところが、身体のみが変わって服が一切変わらないということになると、今回のようなことになる。しかも・・・幾ら兄妹とはいえ・・・お互いに年頃の男女である。着替える場所の確保などの問題もあるし、何よりあの多彩な衣装の調達など一回の女子高生にはまず不可能に決まっている。メイド衣装にチャイナドレスにウェディングドレスに・・・こんなのを軒並み持っている女子高生というのはありえないだろう。


第498回(2004年02月01日(火))
 ということで早速そのプランは実行に移された。
 二人はダイニングからお互いの部屋のドアの前にまで戻った。
 もちろん、後から登ってきて歩(あゆみ)のスカートの中を覗こうとする聡(さとり)を問答無用で先に登らたのは言うまでも無い。

 歩(あゆみ)が背中でドアを閉める。
「ふう」
 ここは自室である。
 抜き足差し足で家を出てしまおうと思ってこの部屋から旅立ったのはほんの数分前である。
 またこんなことになっているのだが・・・。
 出て行く時にはどこにでもいる健全な男子高校生だったのだが、帰ってきた時には下着まで含めて女子高生の姿になってしまっていた・・・。
 まずはこれから着ることになる男物の制服をひょい、と無造作にベッドに放り投げる。
 今頃聡(さとり)は自分の部屋でパンツ一丁で待っているはずだ。


第499回(2004年02月02日(水))
 この間聡(さとり)の身代わりとして授業を受けさせられた時にも感じたのだが、そろそろスカートにも慣れて来ている。
 椅子に座りっぱなしになって動かないでいると、ふと自分がスカート姿であることを失念していることが多いのだ。
 よくよく考えてみればそれも当たり前で、男が常に自分がズボンを履いている事を強烈に意識している訳も無い。

 だが、ごく稀に身体を動かすことがあると、その独特の慣れない感触に「自分がスカートを履いている!」ことを思い出すのである。
 今もまあ、そんな風だった。

 とにかく脱がなきゃ・・・。
 歩(あゆみ)はスカートのホックに手を掛ける。


第500回(2004年02月03日(木))
 うう、よく考えたら乱れていた制服を整えた・・・というか“整えようとした”・・・ことはあるんだけど、“脱ぐ”のは初めてなんだよね・・・。
 ええーい、こちとらそんじょそこらの現役女子高生モデル(そんなのいれば)に比べたって身に付けた制服の種類は絶対に負けてないんだ!。
 妙な自信を心の中で打ち鳴らし、身体の脇に位置するファスナーをじじじ、と下げていく。
 前にも思ったのだけども、スカートに「向き」が存在するというのも実は男にとっては結構衝撃的な事実である。ちょっと表現が大袈裟だが。

 大きめになったヒップからも容易に滑り落ちるほど切り開かれたスカートから手を離すとふわりとスカートが地面に落下する。

 ・・・感覚が殆ど変わらない。

 確かに“脱いでいる”のに感触・感覚が“着ている時”と全く変わらない、というのも何ともふざけている。これがスカートというものだ。