よみうり寸評  (読売新聞)

 敗れたりとはいえ、W杯十六強入りの日本の戦いは見事だった。ここまで到達した日本サッカーには、忘れられない恩人がいる◆デットマール・クラマー氏(77)。四十数年前、当時の日本蹴球協会が、東京五輪を目指して、ドイツから招へいしたコーチだ。彼は代表選手だけでなく、全国を回り、少年にサッカーの神髄を教えた◆芝のピッチなど無い時代である。指導を受けた友人によると、教わったのは、正確なサイドキックのけり方など基本の大切さで、あきれるほど繰り返させたという◆もう一つは闘魂だ。彼は「意志のあるところ、必ず道は開ける」と語り、日本人には「ヤマトダマシイ」があるではないか、と激励したそうだ◆底辺を広げる少年サッカーの重要性を語りJリーグの前身の日本リーグの創設を提唱したのも、この人だ。彼の語録には味がある。「本当に友人が必要なのは、敗れた時だ」「試合終了の笛は、次の試合へのキックオフの笛だ」◆来日し今W杯を観戦中と聞く。世界の強豪と対等に戦うまで成長した日本の姿には感無量だったろう。 (2002/06/22)