2001/10/14 北海道新聞 今を読む 山口二郎(やまぐち・じろう=北大教授)
迫られる意識改革 国はもう大樹ではない
「寄らば・・・」に道民意識
北海道へ来て十七年たち、そろそろ今までの人生のうち北海道で過ごした時間が最も長くなる。その意味では、北海道人という意識を持っているのだが、今でもなじめないことがいくつかある。
プロ野球のペナントレースの終盤、いくつかのデパートやスーパーでジャイアンツ応援セールというのをしていた。なぜこのチームに縁もゆかりもない店で、応援セールなどするのだろうか不思議だった。北海道には巨人ファンが多いのだろうが、今年くらい初の道産子監督、若松勉氏率いるヤクルトを応援するのが地元のよしみというものだろう。広島ファンである筆者のひがみかもしれないが、巨人ファンの多さは北港道民の「寄らは大樹の陰」という意識の表れだと思う。
機能よりも目先の利益
仕事柄、毎週のように新千歳空港を利用する。この空港は日本一の欠陥空港だと思う。JRの空港駅を降りて搭乗手続きカウンターにたどり着くまでに、商店街の雑踏を通りぬけなけれはならないからだ。最近では通路に商品を並べて狭くなっており、買い物客や商品を運ぶ台車にぶつかりそうになりながら、カウンターヘと急ぐ。大きな荷物を持っているときは特に厄介だ。筆者は世界各地の空港を知っているが、これはど乗客不在の空港は見たことがない。この空港の設計は、乗客の円滑な搭乗という空港本来の機能よりも、観光客相手に少しでも金もうけをしようという利益追求を優先させた結果である。目先の利益にこだわるところは、北海道の気質というべきか。
別に巨人ファンの人たちや空港の土産物屋とけんかをしたくてこんなことを書いているわけではない。筆者はこのところ構造改革時代に北海道がどうやって生き残るか、考えている。現政権が唱えている構造改革の中身についてはもちろん疑問も多いが、一つはっきりしているのは、もはや国は「陰」を提供する大樹ではなくなったことである。
地域レベルの政策を考える上で、道民の意識改革が大前提となる。多くの道民が当たり前だと思っていることにあえて異を唱えるところから、意識改革は姶まる。
「定番」には満定せずに
野球にたとえれば、既に出来上がった有名選手を金の力でかき集めるという巨人のチームづくりの発想は、これからの北海道にとってはまったく正反対の方向である。小ぶりではあっても個性のある選手をじっくり鍛え上げ、真に野球を愛するファンを感心させるという哲学こそが、北海道における産業育成や特産品の開発に必要である。また、いちげんの客に型にはまった北街道名物を売ってもうけるのではなく、個性的な商品で常連の客を生み出すことこそが課題である。
今回の狂牛病騒動を見ても、国の役人に畜産農家や消費者を守る能力がないことは明らかである。自分の安全は自分で守らなけれはならない時代である。しかし、こういう時代だからこそ、安全、安心を軸に、新たな北侮道ブランドを創(つく)り出す好機が来たということもできるはずである。
定番メニューに満足せず、自分の感覚を研ぎ澄まし、よいもの、面白いものを探すことが危機を好機に変える鍵(カギ)である。