2004/09/09

単独 山形某所



今日のスケジュールは山形だ。友人の厚意に感謝して
早朝、積もる話の結果に目を擦りながら、秋田空港インターをあとにした。
目指すは山形県天童市のクライアント。う〜ん眠い。

移動中の天候は・・・。台風が過ぎ、晴天がやってきていた。
風はまだ強いが夕方には落ち着くのではないだろうか。
高速を囲む山々はいっそう緑を深くして、最後の夏を実りの時期に向けて輝いている。

 

仕事を卒なく終えて、これまた今年最後の山形での灯火を決行することにする。
連日の疲労感があるものの自分にとってまだまだ未開の地域であるこの土地で
日暮れまでに残った時間を少しでも場所探しに費やすことにした。


とあるダムの傍から谷間に見える奥の山がとても魅力的に見えた。
林道もありそうだ。国道を離れ林道を探すとすぐに入り口が見つかった。
暫らく進むとダンプカーが行く手に止まっている。
車を降りて運転手さんに挨拶をする。
「昆虫の採集をしたいので、夜この場所に入っても良いですか?」
事情を話すとその先の工事担当の主任さんに話を取り次いでもらい
快くOKを頂いた。条件は、行き止まりの砕石場の中には入らない事。
崩落の危険がある地形なので現場を知っている人の云うことはしっかり聞いておきたい。

これでまず1箇所は決まりだ。あと1時間程度は走りまわれる。


garagara??

BASYHAAAAN!

 

二本目の林道は遠く○○○山に沿って走る。
途中の光景は最高なのだが、山裾に近づけるベストな場所が見つからない。
川沿いに走る道があったので途中から右に折れた。
やがて谷間に仮設橋が架かっていた。
景観が開けて来た。もう少し走ればきっと目前にすばらしい場所が待っているに違いない。
そう思って、細くなっていく山道を突き進んでいく
突然に

garagara??

BASYHAAAAN!

 

 

汗・・・・・・・・。
車の中まで響き渡る土砂の音に血の気が引いた。
冷や汗が吹き出る。心臓は胸から外に飛び出しそうにバクバク音をたてた。
アドレナリンが全身を駆け巡って、ナイ頭がフル回転し始める。

「このまま車を進めると何処かに出られるのか」

「こんなところ、地元の人でも用がなさそうだし・・・」

「場所柄、山菜もイマイチなのではないか」

「すぐ引き返そう」

「また落ちるかも知れない・・・」

「日暮れになっちまうし」

「イチカバチカだ」

大きく右にハンドルを切って前に進み
今度は左に頭を振って山際に車を傾けながらイッパイに寄せた。
一目散にバックして20Mくらい戻ってから車を降りた。

目が点になった・・・・。

「・・・・    」

ようやく戻った場所か見て見ると通った道の下がすっかり抉り取られていた。
どう見ても重力に逆らっている。さらに崩落するのは時間の問題のようだ。
近くの枯れ枝で道を塞ぎ、そのままグングン、バックして仮設の橋に戻ったところで
車を回した。

「今日はこのへんにしておいてやる!」バックミラーに吐き捨ててみる。
ようやく心臓も落ち着いてきた。


時間がなくなってきたので最初の場所に戻ってすぐにセットにかかった。
工事の関係者の方はとうに作業を終えて帰られたようだ。
入り口の鍵を開けてその先に急いでリフをセット。


次に近くに、前に出会った灯下での採集者から
その辺でオオクワガタを採った事があると聞いていた場所
で以前水銀灯が点いていた場所に向かって行く。
大きな発電機で300wだけ点灯した。

最初の場所に大きな期待を掛ける。
標高はこの辺ではイマイチでカエデに代表される潅木類が茂っている。
しかし、杉林も多い中で自然に近い環境が残されていると判断した場所だ。

待ち、時合を待つ。

アカアシが飛んできた。来たのか”時合”
暫らく待っても、こない何もこない。


「やはり、いない地域なのか」

「このままだと、今年も山形ボーズかな」

「いっそのこと、あの場所か」

「この前のあの場所では??」

 

 

速攻でセットを片付け、車に放り込んだ。
車に鞭打ってヒタスラ飛ばす。
「やっぱり、あの場所でやってみよう」


慌ててセットした。気温はまだ大丈夫だろう。
先ほどの場所と比べると風が吹きぬける分、状況が不利か。

蛾が集まってきた。カメムシも多い。
あと1時間が勝負か。kentさんからの電話では今日の気温は結構高い。
途中で見た携帯の情報でも十分な温度を記していた。
しかし、ここでも来ない。300wでは非力だったかな?

「もう、シーズン終了なのかな」

10月だって採れる時は採れるのに・・・・。

何年も暖め続けていたこの地域はなかなか縁が無い様だ。

残念だがもうすぐ幕切れだ。

「最後に外灯でも見てくるか・・・」

 

灯火を置いておいて、近くの外灯だけを見に行くことにした。
期待はしていなかったのだが、いきなりゲットである。
ちゃ〜ん。

オオクワのはずなのに、少しばかり光が違っている。
オオクワの訳が、符節がおかしい。
オオクワなのに触覚がゲンゴロウのようだ。

結論!
こいつは新種のオオクワだった。外灯には他にこれといった虫もいなかった。


新種のオオクワをゲットして意気揚々と灯火に戻っていく。
周りの外灯も祝福してくれている。
オレンジの外灯もピカピカと輝きを増して見えた。

・・・・

結構な落ち込み加減になってきた。
早く、つくばに帰るべきだった。
「もう、すっかりシーズンOFFなんだ」

 

なんにしても、灯火は片付けなければならないし
その前に、周辺を懐中電灯で一回りする。
ここでも新種のオオクワが飛んでいた。

今度のは、さっきのより少し小さいように見える。
一応写真ぐらい撮っておくか・・・新種だし。

 

 

 

 

 

 

あちゃ?
ありゃま。

「やっちゃたよ」・・・涙。

もう一丁。

妙に元気に飛び立とうとする。

ついに山形産レア産地での初ゲットとなりました。
苦節7年とちょっと。(年間に2回が限度だったが・・・)

初めて生きているソレを確認できた。
タイムリミットとなってきた。自宅へ戻る前提なので早々シンデレラタイムだ。
馬車に乗って、はじめの灯火を片付けに向かう。

 

その後の結果は敗退に終わって工事現場とはノコ2匹だけでお別れした。
馬車がカボチャに変わってしまい、一気に自宅へと飛んだ。