2004/07/08
横向きに走る閃光。
木霊する爆音。
立ち上る水蒸気。
前歯が欠けた男が独り。
出張初日に前歯が揺らぎ抜け落ちてしまったのだ。
まったくついていない。それはともかく
頭上に広がる蜘蛛の糸は電撃を線香花火のように飛び散らかしている。
頻繁に放たれる石火は目線よりも下向きに走ったりする。
今にも自分に火の粉が飛び散ってきそうな危険な状態の中
発電機とガソリンタンクを放り出して車に飛び込んだまま
身動きが取れずにいた。
そこは雷雲の下と言うにはふさわしくない。
中なのだ。
昔、父から音源との距離を測る目安を教えてもらったことがある。
正確かどうか知らないが!!ピカッツ!!となってから4つで1km
だとすると今、200mくらいだろうか?もっと近いかも・・・。
たぶん、そう簡単には止みそうもない。
でも止むかも知れない。冷たい物を感じながら給油をおえたが・・・。
ビビリながら1時間程度待って覚悟を決めて
外に放り出した発電機とガソリンタンクを
車に投げ込んだ。
身体じゅうが濡れたのは振り出した雨のせいばかりではなかった。
何も出来ないうちに帰るのは辛い。
場所を変えて外灯を見て帰ろう。
アカアシが販売機にいた。
移動先では遠くで閃光が走っている。ここまでくれば安心だ。
次の外灯を見ると近くに車が止まっていた。
これでは見にもいけない。どうする??残りの時間をやはり灯火で・・。
着火直後から虫飛びは悪くない。
当然といえば当然。外気温は25度近いと思われた。
しかし、所謂ゴールデンタイムも時期に終わりだ。
水銀灯の上を旋回して甲虫が再び舞い上がって消えた。
20分後になって今度は先ほどのを凌ぐ大きさの甲虫が飛んできて
光源を通過して落ちた。
たぶん・・・。間違いなかったオオクワ♀42mmだった。
車の中での写真は露出不足。
ドクターKを通して安価で購入したペンタクスOptioS4
はコンパクトで高機能だが
マニュアルを読まない私には使い方がまだ分かっていない。
このところ♀は持ち帰りに躊躇する状態だったが
そこそこの大きさだと、タイミングも苦しい時間だけに
やはりいい。嬉しいものだ。
しかし、こうなると欲も出る。
心で念じている。♂よ!!♂よ来てくれ!!
前回もそんな事を考えて結局♀だけ獲得していたし
祈りが通じて♂が飛来するほど甘くないことは承知していた。
大きなカブトムシが光源よりやや私の近くに落ちてきた。
スローテンポな飛びで
もたつきながら、カブトのメスか?
この辺のカブトは里のカブトと違って
そうとう小さいものが多い。
少ない樹液場を押しのけられて夜を彷徨うのは
負け組みなのか??
それとも栄養失調なのか?
どうりで元気のない飛び方だ。
・・・。しばし回想をめぐらす。
ベースキャンプで仕入れたおにぎりを貪りながら
外の様子をぼんやりと見ると・・。
さっきのカブトが潰れてしまっている。
おかしい、まさか熊出現か??それとも野うさぎか?
野うさぎの体重ではカブトが潰されたりするだろうか
そうは云ってもかなりのキック力がありそうだし
もしかしたらカモシカの線も・・・。
車一台通っていないこんな場所で
いつの間に、どうして潰されてしまったのか。
おにぎりを途中で放り出して
特捜
「謎の熊轢逃げ事件」の捜査に乗り出した。
犯人絞込みのため
車外に出てみると・・・。
事件の真相は明白であった。
駆けつけた
鑑識によって遺体の写真が撮られて
実況見分
「大変です!!
害者はまだ生きています!!」
「だ、大歯だ!!」久々の感激
左手で懐中電灯を右手にペンタックスS4を持って
前歯のない男が山の中で小躍りしている。
かなり怪しい・・・。
が多分、熊にしか見られてはいないはず。
ちょっと大きく!
ベースキャンプに戻ってから昨日の成果を撮影。
ノギスがないので物差しで計ってみた。♂は65あまり
家に戻ってノギスで測り直すと67mmであった。
外灯、灯火を含めて自己記録を更新だ。
失った前歯のおかげで
二日間サシスセソが云えなかった。
そして失われた歯は大歯で補われた。