2003/08/22
ーハトーブ序章
この夏の初めから気になっている場所があった。
かつて何度もそこへ行こうと思いながら他の場所に
行ってしまっていた。昼間の下調べは十分だったが度胸が足りなかった。
林道の奥でやってみたい気持ちがあっただけに単独行動の
多い私としては同じ茨城のライターさんに焚き付けられるまで
正直、あまり奥地での灯火をしていなかった。

ここ数年、外灯での採集を通して少し確信めいた物を感じていた。
山奥にはそれなりにオオクワがいる。
だが、それだけではない。
意外な風景の中に実は沢山いたのだ。
仲間内に漏らした採集地情報から端を発して
その後、自分以外の仲間が最大のライバルになってしまった。
ここ3年ばかりの間に、彼の地では数十頭のオオクワがキャッチされている。
そしてここは同じような環境が揃っている。

今年、らいたーさんに一度この場所を勧めた事があったが、
どうも気に入ってもらえなかったらしい。
彼は途方もない山奥でも単独行動をしており熊とお友達らしい。
セットをたたんだ後の林道を駆け抜けるスピードもハッキネンを凌ぐスピードだ。
この夏はだいぶ彼の行動力に刺激を受けた。

張の面持ちで灯火を開始した。

スターはまずまず。アカアシ、コクワ、ミヤマがぼちぼち飛んできた。
クワガタがいることに安心。
飛んでくるのは殆ど♀だった。アカアシだけが4♂だが、ちっちゃ!!
開始早々順調に思えたがすぐに辺りを深い霧が取り巻いてきた。
飛来がぱったりと止まった。
やがてゴールデンタイムたけなわ。

真っ暗な闇の中に不気味に笑う男が独り。
正体は私だった。
やっぱり
「きたー!!」
満面の笑みで彼女を出迎えた。
って云うか拾い上げた。

さほど大きくない個体だったがここにいてくれたことに
感動を覚えた。
続いて、もう1♀。けっこう居るじゃん。

二頭目を撮影している間にバッテリーが切れてしまった。
しばらく撮影できない。
周りの景色は一層見えなくなってきた。
これ以上の霧は勘弁してもらいたい。
ほかに笑っている誰かが其処に居ても見えないくらいで怖い。

まだまだゴールデンタイムは続いているのに・・・。
それから数十分待っていたとこが、霧が一向に引いていかない。
「もう駄目かもしれないなー」

事態を払拭したもう1♀が搭乗、いや
登場した。近くの草むらに落ちた個体が這い出してきたらしい。
そう広くない場所なのでこんな事もあるのだ。
数十分掛けて這い出してきたのだろう。

そして、それからすぐだった。
もう一頭の姿が見えた。
大きなミヤマの♀らしい。
同じように、こいつも草むらに落ちていたのだろうか。
今日はオオ3♀と好結果だしミヤマのことは
ほっておいてセットの片付けに入った。

霧が深く気持ち悪いので
急ごう。
大きいほうから順番に水銀灯を消して
後片付けに1灯を残してコードを畳む。
さっきのミヤマが残りの水銀灯に近づいてきた。
「ありゃ、」
「オオジャン・・・」

でかかった。
これまでの自己記録を簡単にオーバーしていそうだ。
ルアーケースに4♀を突っ込んで
ゴミを始末してその場所を後にした。

下山して行くと一層霧が深い。
あの場所はまだ少なかったほうだ。
tubasaさんがご子息を連れて別の場所で灯火をしているはずだ。
早速、情報交換に出向くことにした。
移動中にバッテリーを充電しながら今日の成果を噛み締めていた。
念願が叶った充実感があった。

眠っているご子息に挨拶して
tubasaさんの持っていたビールを頂き祝杯をあげた。
当然のごとくtubasaさんも2♀ゲットしておられた。
地図を二人で眺めて遅くまで考察を押し広げて
気持良く眠りに着いた。
「次はあそこだ・・・・  ・・・むにゃ・・・。」