2003/05/18

「○×△◇ー」
・・・・。顔を見合わせているうちに
「○×△◇ー」
と再び。


順調なスタートだった。
前回の残雪もほとんど消えて、同じ息切れでも短時間に山頂へ登ることが出来た。
冬山の形相は何もなかった。雪渓の恐怖感もなく安心して新緑を楽しんで来れた。

吹野等も満開だ。春、春、春。次は夏、夏、夏。
「奈良何とかセンター」か何処かのコピーのようだが
確実に夏が近づいている。

早速、前回の遣り残しに着手しようと見渡すと
急速に緑がひしめき始めている。
  
と、そこで
「○×△◇ー」
呻く様な動物の声が繰り返し聞こえて来る。
tubasaさんと顔を見合わせて気配のする方向を凝視する。
声の主もこちらの気配を察知しているに違いない。

かなり近い・・・。

とても怖い・・・。

動けない・・。

正体は
いったい何だろう。

しばらく二人で凍りつきながらやり過ごすと
その声は聞こえなくなった。
一人で来ていたら一目散に駆け下りてしまうところだが
懸命に鈴を鳴らしながら慎重に目的の立ち枯れに近づく。


ドキドキしながら一太刀。
そして一太刀。

「○×△◇ー」
反応している・・・。koe−。凄くkoe−。
何か怒っている気がしてきた。


しばらくして、近くで笛のような音がした。
数人の人がやってくる。一人がホイッスルを吹きながらやってきた。
スポーツ店で売っている笛が正体だった。

山菜取りに訪れた人たちにさっきの声について尋ねると
どうやら熊らしい。
この辺では時折出くわすことがあるそうだ。
「やっぱり・・・。」
tubasaさんと相談して少し離れた場所を確認することにした。
沿道までの距離は相当あり、森林はとても深い。
何処までも続くブナ林。

里山と違って
それなりに見える材があっても
極端な場合には何も入っていないから不思議だ。
人の目には同じように見えていても
クワガタに言わせれば雲泥の差といったところか。


短い夏に向けて
花々がいっせいに咲き競っている。
しばらく歩き回って30mにも及ぶ立ち枯れが目に入った。
長年の積雪や降雨で抉り取られた谷を越えて
その木に近づいていった。


適度に朽ちている部分もあったが
高い場所だった。脚立で届く範囲を少し削り取って見ると
食痕が走っていた。それなりに太い。
辿って見るとコクワガタが飛び出した。
こうした立ち枯れは概観がしっかりしているが芯の部分が抜け落ちていることが多い。
穴の開いた部分を見つけて覗き込むと
やはり芯枯れ状態だった。
しかし、外側が硬く削れない。削っても下から出てくるのは
たいていの場合アカアシだと思われる。

少し上を狙ってみた。
今度は蛹室を作りかけたアカアシだった。

ここで今日は時間切れだ。
下ってきた反対側の尾根を登りながら戻っていく。
遠くでまた、あの声が聞こえた気がした。
足取りを速めて車に急いだ。

今回はオオには出合うことが出来なかた。
機会があればまた来て見よう。
もうじき灯火シーズンだ。
夏は其処まで来ている。