2002/08/13

5

前日に仕事帰りにMさんに電話してみた。
いろいろと公私共に多忙で今年Mさんは一度も出撃していない。
連絡の時点ではお茶を濁しながらも、内心行きたい気持ちが汲み取れた。
詳しく聞いてみると、地元の友人と明日はバーベキューをすることになっているとの事。
そこでMさんにさらに詰問するように聞いてみた。
「バーベキューとオオクワとどっちが大事なんですか?」
「そりゃ、オオクワだよ・・・・」この段階で話は決まったようなものだ。
「でも、準備から後始末までやらないと・・・・」

話は半ばまで聞いて、
「解りました。こちらから適当な時間に迎えに行きます」
夕方、頃合を見計らって今度はMさんから電話が・・・。
「実は早めに上がって来たんだ・・・。」
すぐさま方向転換だ。この日はこんな展開も予想して早朝から仕事をこなしておいた。
すぐにMさんを迎えに行って、檜枝岐周辺へ向かった。


日没間際に到着してみると、途中から意識していた天候の悪化であったが
予想通りの大雨であった。この時期の檜枝岐周辺ではよくあることだが
山の天気は本当に変わりやすい。
到着して暫くすると僅かに晴れ間が覗いた瞬間が・・・。
雨が小振りになった瞬間に慌ててセットを開始した。
(写真は点灯直後で200w2灯のみ。)




















本当は実に迷った。
今夜、Mさんが来ていなければセットどころか尻尾を巻いて退散のパターンだ。
1分に1回くらいの雷鳴で、始終ピカ、ピカやっている。
山が険しいので谷間に落ちるとは思えないものの、生理的にあの音と光は好きになれない。
人一倍臆病な私は先日も茨城県内での単独灯火の際に周囲の落雷で慌てて畳んだのだった。


暗闇が一気に迫って、まだ点灯していない水銀灯が半分残っているが
雨が激しく落ちて来て車に非難する。
Mさんの参加が実に久しぶりなので、今夜は途中で止めるつもりはない。
仕方なく雨が小振りになるのを待ってMさん持参の肴でビールで乾杯した。
クワガタ飛来の最後を見届けてから帰りたいと思って覚悟のための乾杯だ。

れにしても・・・。
山がガスっていて陰影がはっきりしない。
それは当然クワガタからもこちらの灯火が見えないことを示している。
今日はダメなのか??


暫くして、ワイパー越しに視界がはっきりしてきた。
長く続くか心配だが、次にまたすぐ降りだす前に配線を済ませて点灯しなければ・・・。
ドアを開けて大急ぎで残りのセットを済ませた。
折からの雨が広範囲に湿気をもたらして、虫の飛びはいい状態になってきた。
8時30分を回ってアカアシが、ミヤマが飛んできた。
ようやく、クワガタが飛来すると次々とやってきた。
このままもってくれないものか?



















ふと見ると、灯火にヤブヤンマが飛んできている。
大型のトンボに出会うのは初めてだ。
ついでに、大型のオオクワでも飛んでこないものか?









希望に反してコクワガタ、アカアシが飛んでくる。
全ての点灯から30以上経過してまた雨が降ってきた。
セット開始前から比べるとたいした雨ではないが外にいると
肩先がビッショリになるくらいの降りだ。
再び、車の中に非難した。

セブンイレブンのおにぎりを食べて腹ごしらえをする。
キュウリの塩漬けもなかなか美味しい。ポリポリ。
Mさんは落ち着かないようだ。
何しろ外灯、灯火は約1年ぶりにもなる。
雨の止むのを待っていられないようで、しきりに外の灯火を見守っている。
まだ、降り止んでいないがMさんがドアを開けた。
一回りして、ミヤマを見つけてまた、一回りして・・・。
つられて私も外に出る。
そして・・・。


に出てみると、リフレクターの光がしっかりと山に向かっていた。
幸い、先程らいのキリが一時的に晴れているようだ。
到着時点から、風は右から左に向かって吹いている。
霧の移動速度もかなり速かった。
Mさんが一回りして、今度はセットから遠い場所を探して懐中電灯を照らしている。
私はセットの周りを再度確認した。
その瞬間、「いっやった!」
「Mさんちょっときてください!」
「来ましたよ、来ました、オオクワガタ」






オオクワガタ♂61.5mm











ひょうたん型の水銀灯200w2灯の手前に、敷き詰めた防火シートに登る瞬間だった。
どうやらまだ飛来したばかりだ。そして、前回同様におそらくはブラックライトに向かって
歩いているところだったに違いない。今後の採集にブラックライトは欠かせない物となった。
車に戻って携帯で時間を確認したところ、8:48分だった。
上手くすると、今日はまだまだ飛んでくるかも知れない。

今日は、湿気も多くまだ十分に暖かい。次のオオクワガタの飛来を待った。
しかし、待ち時間は以外にも短かった。
それから10分程度たった頃、セットの右2〜3m程度離れた場所に何か落ちた。
近づいて見ると・・・。
「Mさん!Mさん、また来ましたよ。今度は♀です」
「エ?」とMさん。









オオクワガタ♀43mm









それからもセットの周りを周回しては周辺をと繰り返していると・・・。
「あっ、」
「Mさん!また来ました。」
「本当?」とMさん。
偶然にもケンケンパが周回したタイミングが重なった。
今度はまさに落ちたばかりでシートの水の溜まった場所の近くで羽根を畳んでいるところだった。







オオクワガタ♀35mm

















同行のMさんとオオクワガタ。









前足がフセツ欠けになっているが、十分元気だ。
これでケンケンパとしては、やっとこの産地のオオクワガタを手に入れた。
地域的にも、いい外灯が少ないのでベストシーズンには競争者が多く
これまで採ることができなかったので、とても嬉しい。
「これは、まだまだ来ますよきっと!」
二人の会話も弾む。
Mさんもこれまで何度となく同行して頂いているが
Mさんとしては初ゲットと記念すべき日となった。
とりあえず握手。


期待に胸を膨らませてその後も待ったが9時15分を最後に
一向にクワガタが飛んでこなくなった。
リフレクターを背にして山を見てみると
山はかなり広範に霧が掛かっている。飛んでこない理由はこの霧にあるようだ。
時折リフレクターの向きを煽ってみる。
どうやら霧は引かない。
それ以外の条件は決して悪くないので残念だ。
10:15分を回って、今度はMさんが・・・。
「小さいのが何かいるよ」と手招きしている。
近づいてみると、スクリーンにオニがたかっていた。















オニクワガタはとても小さいが、フォルムはローゼンにも似てとても美しい。
この周辺での灯火では度々飛んでくるらしい。


12時過ぎまで粘ってみるが、その後も霧が晴れることは無く
クワガタも時折ミヤマが飛んで来る程度だった。
その頃懐中電灯を持って東京からやってきた二人の採集者がセットを始めたのを
きっかけに灯火を畳むことにした。
本日の成果を集合写真に・・・。