2000/10/03(火)

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シーズンも終わりを告げて久しい。9月の半ばで採集者もほとんど姿を消して、よく見るHPも日中のヒメオオの話題で賑わっている。もうオオクワガタは終わっているようだ。てんとう虫のサンバで有名なチェリシュの「なのにあなたは京都にゆくの」のメロディーがラジオから雑音混じりに聞こえてくる。
カミサンに電話すると、「なのにあなたは会津に行くの・・・・?」続けて「馬鹿じゃない?」
なのに・・・には私も三児の父としての立場もあり、私だっていろいろあるのだ。断じて馬鹿じゃない。クワガタ馬鹿と言う神聖な言葉を語るには、まだまだ・・・かなり中途半端なのだ。

それにしても、カミサンはマトモなのだ。一々言うことが正しいので困る。ただ、そうして反対されると人は余計に行きたくなる心理にもなる。てな理由をつけてやっぱり山へ向かう。心なしか車が少ないように思う。平日だし当り前か?スイスイと高速走行して走りなれたその場所へ向かう。道沿いに突如大きな黒い物体が・・・。気を持たせちゃいけないが、大きな狸の登場。こちらを振り返って一目散に、道の反対側にきえていった。

眠気を何とかしようと、タバコに火をつけ、車の窓を少し空ける。吹き込んでくる風が少し冷たい。ポイントを次々と見て回るが、何しろ涼しい。某有名自動販売機付近などは、半袖の作業服と夏用のスラックスでは寒くて居られない。標高の高いところはもう、今年の採集シーズンがすっかり幕を閉じたかのようだ。いよいよ閉幕か?今日はオオクワには会えないだろうな・・。すこしがっかりしたような気持ちでポイントを後にした。

しかし、折角ここまで来たのだから・・・。習慣づいたルートから外れて帰路の誘惑がチラチラと頭を過ぎる。
振り切って車を走らす。今度は標高の低いポイントへ移動する。民宿の近くの路上で、コクワ♀を発見した。やっぱりまだいるんだー。これでボーズは免れた。かなり貴重なコクワかもしれない。大事にルアーケースへ入れた。ケースの中身も恥ずかしいほど涼しい。ほとんどこんな感じで、何処のポイントもクワガタを見かけない。8月頃まであれだけ沢山いたクワガタやカブトたちは何処に行ってしまったのだろう??勿論、いつまでも生きているわけではないのだが寂しくて、ついそんな想像が浮かんでは暗闇に消えていく。

そろそろ、残りのポイントもあと僅かとなった。お腹もすいていたので、某温泉の駐車場でコンビにの袋を開け遅い夕食を取る。おにぎりをかじりながら、駐車場に降り立った。かなり涼しい。寒いが正解かと思われる。温泉の板塀にそって視線を漂わせて、クワガタシーズンの終わりを、おにぎりごと、思いっきり噛み締めた。買ってきたお茶も冷たく、ホットにすればよかったと後悔しながら飲んだ。3年前にそれまで乗っていたオートバイを全て処分したとき、中古業者に引き取ってもらう前日の夜、眠らなくて夜中にオートバイを置いてある車庫で酒を飲んだ。ついつい朝になって赤い目をしてカミサンにカラカワレタ事を思い出した。同じような感慨・・だった。こちらに来る時から、今年は今日で終わりにしよう。と決めていた。いざとなると、涙が出るほど寂しい。

おにぎりを詰め込んで、あたりを見回したあと諦めて車に乗り込んだ。車のエンジンを掛けて、ライトオン。駐車場をぐるっと回って車を出口に向けた。その時、きらっと黒いシルエットが目に飛び込んできた。すぐに懐中電灯も持たずに再び車を降りた。見つけた、オオクワガタだ。背中にしっかりとスジがある。すっかり諦めかけていたがめぐり合えてとても嬉しくなった。オオクワは♀38mm寒さに硬直していて、怒ったような姿勢で力なくそこにいた。こんなに寒いので、数日前に飛んで来て周辺に隠れていたのかもしれない。
ようやく納得できて、車を帰路に向けて走らせた。2000年の外灯採集の閉幕だ。