2000/08/26(土)

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息子にオオクワガタの初ゲットを先取りされてしまい、正直落胆していた。
仕事も忙しく、暫くはオオクワガタの事を頭の隅に押しやっていた。
友人AS氏にはこの場を借りてお詫びするが、初めてのオオクワは息子が取ったので私ではありません。

もうすぐ子供の夏休みも終わる8月も終わると思ったら、オオクワシーズンも終わってしまうような気がして、突如南会津行きを決行した。月齢は決して良くないが、行くと決めたら行ってみないと気がすまない。採集を経験している人ならば解ってもらえるに違いないと思う。以前はよく釣りに出かけた時期があったが、心境は良く似ていて、「今日は釣れるんじゃないかな?」と思いつつも反面「釣れないかも知れない」結論は釣れてもつれなくても行くのである。オオクワガタも採れても採れなくても行きたいのだ。

いざ車を出して見ると、週末のわりに通行量が少なかったのでスムースに現地入りできた。ポイントに到着すると、女性が一人外灯のあたりに立っていた。時間は8:30頃だったと思う。しかたなく他のポイントへ。週末となれば月齢がどうでも少ないながら、やっぱり採集者がいるのだ。有名販売機周辺でも採集者の車があった。車を停めて何処かに見に行っているようだ。販売機のところでコクワ♀を見つけた。一通りを見て終わり、今度は標高の低い場所を見て回る。橋の欄干のポイントで小さめのコクワの♂を加えた。クワガタの数が少ない。採集者が多いせいか?もっと標高の低いところを狙うか?でも時間が遅くなる・・・。

結果的にもう一度最初のポイントに戻る事にした。到着時点でその場所に女性の姿は無かった。コンクリートの部分を注意深く確認する。アカアシの小さな♂が壁を這っていた。早速ルアーケースヘ入れる??ん・・。そうだった。今日は突然だったので100円ショップのタッパー小とジャムビン(出掛けに懐中電灯といっしょに実家で調達した)しか持ってなかった。あまりにも小さなタッパーの中はクワガタとテッシュで既にグチャグチャになっている。

実家に立ち寄った時、「クワガタなんか構ってないで、一杯やれ。うまい酒があるぞ」と親父。うまい酒の一言にはかなり動揺したものの息子aki(略称)が採ったオオクワ事を無理やり思い出して振り切って出かけてきたのだった。たいしてクワも採れないし、父の言うと通り一杯やっていればよかった。
夕方には母が刺身を買ってあった。オオクワではなくオオトロだった。頂き物の山芋と鰹節で取った出し汁でトロロが用意してあった。その他野菜炒め等々ご馳走が・・・。クワガタ採集の準備に追われ、懐中電灯など探し回って慌てて食事も摂らずに出てきたことを後悔していた。惜しかった。オオトロ、オオトロ!オオトロ!!

ア・・・・・。
その時、食べ逃した食事のことばかり考えていたら外灯の方から停めてあった車のそばをカスメテ甲虫がboonと飛んでいった。オオクワか?飛んでいった先を顔ごと目線で追いかける。オオクワだとするとかなり大きい、カブトの♀か?カブトの♀にしてはとても小さめか?車のドアをあけて放り込んであった懐中電灯を急いで取り出す。再び羽音に耳をそばだてながら外灯を見上げる。しかし音も姿も消えてしまった。いったい何処へ行ったのか?何処か別の光に向かって飛んでいってしまったのか?それとも近くの木にでもタカッタのか?走馬灯のようにいろいろな考えが頭を過ぎる。

どのくらいの時間が経ったのか?30秒くらいだったのか2分くらいだったのか?とにかく恐ろしく長く感じた瞬間だった。アドレナリンが一気に吹き出し、鼓動が早くなる。羽音と同時に飛んでいるその姿を捉えた。今度は懐中電灯で虫を追う。外灯から軌道をそらして大きくカーブして車の上を飛んでゆく。やばい、今度こそ何処かへ飛んでいってしまうかもしれない。必死に懐中電灯の光束を当てる。一度高く飛び上がったように見えてが、次の瞬間懐中電灯に急接近していきなり視界から消えた。見失ったか???ポトリ!!。「落ちた・・・。」ちょうど車と私との間に落ちた。一目散に近づいて拾い上げる。駆け寄る間にスジがあることに気づく。額の血管まで脈打つのが判る。「やった、オオクワガタだ」大きな♀である。さっきまでコワバッテいたが思わず表情が緩む瞬間だ。深夜に自分の鼓動だけが鳴り響いている。

着地に失敗してひっくり返ったオオクワ♀

まじまじと眺めて見る。オオクワは驚いた顔をして、足を全部引っ込めている。撮影のため起こしてやるとまもなく動き出す。

慌ててピンぼけ。

こちらを牽制している。いたって元気な♀だ。

一度例のゴッタガイのタッパーに入れたが、他のクワガタに噛まれてフ節が取れたりしたら大変である。思い直してもらい物の入っているビニール袋を取り出した。そこには味付けピーナツが入ってたアクリル容器があったのだ。トランクからドライバーを取り出し、ビニールのふたに控えめに穴をあけてティッシュを詰め込み先ほどのオオクワをいれた。ほっとしたところで一服。もう暫くここで粘ってみる事に・・・。1時間近くいたと思うが一向にクワガタの姿は見られなかった。12時を回っていたが、家に電話をする。すぐさまカミサンが受話器を取った。「採れたよ。オオクワガタ・・・。」「明日akiに言っておいて」
カミサンは「子供と勝負してんの?わかった言っておくよ・・・」ってな会話だった。

電話をきったら一気に空腹と睡魔が襲ってくる。
眠気を振り払って一気に栃木の実家へ車を走らせた。何度かガードレールや壁にブツカリソウニなりながら無事到着した。泥棒のようにこっそりと忍び込む。キッチンに潜入してライトアップ。オオオ!!。テーブルに、例の野菜炒めやトロロなどとスタンバイしているではないか。冷蔵庫を開けるとオオトロが顔をのぞかせる。ついでに福島の酒?「やえもん」が・・・。深夜ではあったが、小鉢にトロロをあけ、早速オオトロの脇にオオクワを置き祝杯をあげた。やたら空腹だった事も、オオクワが採れて事も手伝ってとても美味い晩餐となった。またもや一気に睡魔が襲ってきたので居間にいって横になった。目覚めるともうお昼になっていた。