高速道路 建設に関する公開要望書

2005年7月10日

要 望 書

国土交通大臣 北側 一雄 様

溪慈(keiji)

 今日も各地で旧態然と推し進められる高速道路などの建設は、非効率かつ選民的なクルマ中心社会への転換を加速するなど、まさに時代に逆行する矛盾に満ちた忌々しき行為です。

 道路を増やす政策が、総じて非効率で時代に逆行してしまう理由は、電車に比べてクルマは路上で非常に大きな場所を占有する(輸送密度が低い)為、道路に電車一台分の輸送能力を持たせるためには、幅100mといった非現実的なサイズが求められ、しかも既存の公共交通を運行するエネルギー消費に、マイカー利用による消費が加算されるため、どれだけマイカーのエネルギー効率が改善されようとも エネルギーの消費は減り得ず、諸所の交通問題も解消し難い点にあります。参考Web Site:まちをこわす「クルマ『中心』社会」、まちをつくる「LRT」 http://www.ic-net.or.jp/home/takaiken/index.htm

 そうしてマイカー利用が進めば進むほど 公共交通は苦境に追いやられ、エネルギー資源と公費の浪費も加速されるという悪循環が進んで、行政サービスの質は低下し、京都議定書に掲げる温暖化ガス排出の削減目標の達成は 更に困難となり、やがて世界への求心力さえも失なうでしょう。それはクルマ中心社会の推進が招く、日本沈没の図です。

 現に、本州と四国を結ぶフェリー航路は次々と廃止・休止されており、その原因が本州四国連絡橋の建設と、それに附随する高速道路の拡伸であることは誰の目にも明らかなのです。また、殆んど客も乗っていないバスが、多くのマイカーの中を虚しく走っている光景は、もはや日常のものとなりました。鉄道だって同じです。このまま公共交通に苦境を強いるクルマ中心社会を押し進めれば、高知県の宿毛や兵庫県の尼崎で起きたような事故だって続くでしょう。通過点と化した地域の衰退も無視できません。

 さらに、真の社会基盤とも云うべき自然環境が建設工事によって大きく破壊されると同時に莫大な量のエネルギー資源も費やされます。

 高速道路は震災時の避難路として有効であるとする意見も一部で見かけますが、震災時のクルマによる避難は渋滞の原因となり、緊急車輌の通行すら妨げられるなどの理由で避けるべきであることは、阪神大震災の教訓で得られています。

 また災害時における陸の孤島化という問題については、単純に考えれば、輸送経路が一本増えることで 救援物資の運搬面で有利になることは疑いようがないものの、狭範囲の孤立は高速道路では防げませんし、既存の道路網を活かせば広範囲が孤立することは防げます。

 「便利になる」「根拠は無いが、経済発展が期待される」それは「必要」ではなく、ただ闇雲に「欲しがっている」に過ぎず、代償として社会全体を傾けることが許される訳ではありません。国を潰さず 真に豊かで持続可能な社会を築く為に、私の全生命を懸けて次のとおり強く要望いたします。

 更なる高速道路や高規格道路の建設は、例えば山間部の4車線化工事なども含めて全て凍結(市街地で既に橋脚などの主な骨格まで出来ている区間は、バイパス等として活用する)し、建設工事に充てていた予算は、公共交通の利用促進やモーダルシフトの推進に振り向けていただきます。

 モーダルシフトや公共交通の利用推進に向けた具体的な施策については、補助ほか様々な案が考えられましょうが、それは幅広い意見を取り入れ適切にご検討ください。既存の高速道路の料金収入も、基本的に上記の施策に活用することは提案致します。

 なお、本要望書は請願法に基づく要望とし、2005年7月末日迄に、本要望書に対する国土交通大臣 北側 一雄 様のご対応についてご返答いただくことを求める公開要望書とさせて戴きます。(公開Web Site: http://www7.plala.or.jp/keiji/request_3.htm )

以上

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