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2004年秋号
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「手紙を書きました」
もう秋風が吹き、くらくらするような暑さの夏も遠い記憶の中に消えていきます。
元気で暮らしていますか? あなたの旅立ちの時、言葉をかけることが出来ず少し心残りでした。
初めて会ったとき君は19歳でしたね。新任職員の私は漬物製造所に住み込みで働く君を「実習先訪問」の仕事で訪ねました。施設で暮す人にとって「就職」は目標だったし、君もそのように思っていたのでしょうか。お願いして「実習させていただいている」状況でしたね。辛いことがあってもがんばるよう励ますのが私の役目だったのでしょうか。帰途なぜか殺伐とした気持ちで車を走らせていました。二度目の訪問は同じ施設からきていた同僚と君の休日をともに過ごすことでした。いい外出でしたか?わたしには仕事でした。
この暮らしが施設で暮す人の目標なんだろうか、君が若い女性として持っていた夢でしたか?「就職」は本当の君の望みだったでしょうか?
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お互いに様々ことがあって再会したとき、14年の歳月が流れていました。君が育ってきた過酷な状況、君の傷ついた心は君自身と周りの人たちを引き裂くように叫び声をあげていました。満たされない思いはいつも敵をもとめ憎しみの塊をぶつけているようでした。
「家族」って言葉はいい響きではなかったのでしょうか?吐き捨てたい決して受け入れることの出来ない言葉でしかなかったのでしょうか?
かなの家での暮しの中で、君のとびきりの笑顔が多くの人を惹きつけました。同時に多くの人に傷も残しました。自分ではどうすることもできない「激しい憎しみ」に翻弄されて揺れ続けていましたね。「あんたは気楽でいいね」そんな風に言われて一瞬「ムッ」としましたが、確かにその通りかもしれないと今思います。君は自分の生きる場をいつも探していたようでした。多くの制約や限界のある現実の中で、断念を繰り返してきたのかもしれませんね。恋もしたかったし、結婚を夢見たことも、そして眠れない夜を過ごした事もあったでしょうね。「思いどうりにはならないものね」そう何度も自分に言い聞かせたのでしょうか。守られながら、でも自由を叫び続けて。
「嬉しいこともあったし、楽しい思いでもたくさんあったよ」 そう君が振り返ってくれるそんな期待は一方的な感傷でしょうか。君はべつの生きる場を願い求め旅立って行きました。落ち着いたら「お客さんとして遊びに来るね」そういい残しながら。
何度かヴァレンタインディにチョコレートをくれました。そのお返しをなぜか出来ませんでした。君に手紙を書くのも初めてです。
寒くなってきました、きらきらした輝きの季節…すぎて落ち着いたときが訪れますように。
選択を迷いながら、様々な波に押し流されて今君はかなの家を離れました。みんなで時々君の話をします。仲間たちはきみを思い出し懐かしみ心配しています。そのことだけ伝えたいと思います。お元気で。
コミュニティリーダー 林 孝一
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新(あたら)しいかなの家(いえ)のなかま −きみこさん―
夏(なつ)からつどいの家(いえ)で暮(く)らす きみこさん。早起(はやお)きで、歌(うた)が好(す)きで、手紙(てがみ)を書(か)くのが好(す)きで、絵(え)を描(か)くのも好(す)きで、夕方(ゆうがた)
台所(だいどころ)にやって来(く) ると必(かなら)ずなにか手伝(てつだ)おうか、と声(こえ)をかけてくれる
きみこさん。まだ始(はじ)まったばかりの新(あたら)しい生活(せいかつ)で きみこさんにも不安(ふあん)なことが
いっぱいあっ て、アシスタントのほうもどう受(う)けとめていいのか試行(しこう)錯誤(さくご)している状態(じょうたい)で、あなたと
私(わたし)たちは出会(であ)ったばかり。
きみこさんから つどいのみんなと 作業所(さぎょうしょ)のみんなへお手紙(てがみ)です。
私(わたし)は はじめてきたけど やさしい かつみくんです。
やさしい のむらくんです。みんな ありがとう。
みんな 私(わたし)みみがきこえないけど
大(おお)きい声(こえ)をだしてね。
げんさんといっしょにうたをまっていたのにうたえなかった。
まっていました。あきこさん 色々(いろいろ) おしえてね。
みわさん 川(かわ)へいってありがとう。
みのる君(くん) やさしくいってね。
私(わたし)は はじめてだけど はじめて やるけど
みんな やることを おしえてね。
あさと ごごの仕事(しごと)を やることをおしえてね。
あんまり仕事(しごと)を できないけど がんばるね。
この手紙(てがみ)を私(わたし)といっしょに読(よ)み返(かえ)していると、きみこさんの目(め)からぽろぽろ涙(なみだ)が…。「なんで泣(な)くの?」と聞(き)くと「なんでかわからない…。」と答(こた)えるあなた。
早朝(そうちょう)からの演歌(えんか)のうた声(こえ)にうんざりしたり、あそこが痛(いた)い、ここが痛(いた)いという訴(うった)えに耳(みみ)をふさぎたくなったり、そのままのきみこさんを受(う)けとれないでいる私(わたし)ですが、どうぞ私(わたし)の側(そば)にいて下(くだ)さい。ひとりひとりの涙(なみだ)とほほえみがこの家(いえ)には必要(ひつよう)です。
かなの家(いえ)のなかま ―実(みのる)さん―
かなの家(いえ)が始(はじ)まった時(とき)から暮(く)らすなかまのひとり実(みのる)さん。この秋(あき)、二(に)年(ねん)間(かん)つどいの家(いえ)で生活(せいかつ)したアシスタントの秩父(ちちぶ)さんがここを離(はな)れることになり、たくさんの人(ひと)を見(み)送(おく)ってきた実(みのる)さんにどんな気(き)持(も)ちなのか聞(き)かせてもらいました。
秩(ちち)父(ぶ)さんが去(さ)っていくのは、寂(さび)しいことは寂(さび)しいけど…。今(いま)までだってみんな去(さ)っていった。「秩(ちち)父(ぶ)さんやめないで。」って言(い)ってるなかまもいるけど、僕(ぼく)は泣(な)いたりしないよ。慣(な)れちゃってるから。また新(あたら)しい人(ひと)が来(き)てくれる。ラルシュは来(き)たり去(さ)ったり当然(とうぜん)なんだし。秩(ちち)父(ぶ)さんにはお金(かね)の計算(けいさん)を手伝(てつだ)ってもらったり、月(つき)に一回(いっかい)土曜(どよう)の午後(ごご)、一対一(いったいいち)で話(はな)す時間(じかん)をとってもらった。みんなの前(まえ)ではだめだけどいろいろ話(はな)せた。子(こ)どものころの思(おも)い出(で)とかね。朝(あさ)のお祈(いの)りには早(はや)くきてたね。ロザリオをもって。秩(ちち)父(ぶ)さん、これからまた自分(じぶん)で歩(あゆ)んでいくんでしょ。いろいろ大変(たいへん)なことあると思(おも)うけど毎日(まいにち)元気(げんき)でいてほしい。
確(たし)かに実(みのる)さんと秩(ちち)父(ぶ)さんの二(に)年間(ねんかん)が重(かさ)なりあって、三度(さんど)の食事(しょくじ)
おなじものを食(た)べて、同(おな)じろうそくの灯(あかり) に照(て)らされて…。さいごに手(て)をふって送(おく)り出(だ)すそんな瞬間(しゅんかん)も大事(だいじ)なんだろうなと思(おも)いました。
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粉せっけん作ってます
かなの家の石鹸工場では毎月一度、粉せっけん約2トンを作っています。準備から製品になるまで2〜3週間かかります。
まず準備です。粉せっけんの原料は植物油ですが、私達は学校給食センターで揚げ物に使った大豆油を使っています。毎月一度2トントラックにドラム缶を積み込んで、約1000リットルの油をいただいてきます。そして油をせっけんに変える働きをする苛性ソーダと助剤の炭酸ソーダ25Kg入りの袋40袋を倉庫からせっけん工場に移動します。女性のNさんは、「わたし力ないからダメダメ…。」と言いながらも、25Kgの袋と同じくらいの小柄な体でしっかりと抱えて運んでくれます。Iくん、3年前にやってきた時、25Kgの袋は重すぎて一人では持てませんでした。でも少しずつ力をつけ今では軽々と運んでくれます。若い二人にはかなの家の将来も担ってもらわねば…。
そして、せっけん炊きです。直径2m、深さ2mの大釜に入れた油をボイラーの蒸気で過熱しながら、少しずつ苛性ソーダを投入して反応させていきます。2日間かけて質の良いせっけんに炊き上げます。危険を伴うので一人だけの作業です。若いアシスタントからは「おこもり」などと言われるのですが、少しずつ変化していくせっけんの様子を見ながら、昼ごはんも一人で大釜のそばで食べるのです。仲間のOくんは「いっしょに食べてあげようか」とやさしい言葉をかけてくれますが、Eくんは「ひとりでさびしい? 泣きながら食べな…。」とからかいます。まどい作業所の昼ごはんは、30人以上でいっしょに食べるのでしゃべり声や笑い声でにぎやかですから、工場での一人ぼっちのご飯はさびしいとも感じますが、時には、気楽で良いなとも思ってしまうものです。
炊き上がったせっけんは3日目にとり出します。ベテランのTくんがまだ熱いせっけんをひしゃくを使ってバケツへと汲み出します・・・かなの家のせっけん工場はほとんどの工程が人力で行われているのです。仲間の汗と思いが込められています。(つづく、またいつかこの後の作業をお知らせします。)
石けん工場担当・家庭責任者:西田正志
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かなの仲間が心をこめて作った粉せっけん・・汚れが良く落ちます。
年末の大掃除・・・いろんなところで活躍します・・
特に換気扇の油汚れは、せっけんパワーにおまかせください・・・!!!
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三人の住まい
9月半ば 、かなの家のリトリートが行われました。 指導者のビル・クラーク神父様が静かな語り口で言われたこと。
「あなたもイエスとマリアとヨセフの家を訪ねてみてはいかがですか?」
すぐに行ってみたいと思いました。どんな家だろうと想像してみたり。壁の感触とか、コップの重みとか、その日の湿度とか、部屋の明るさと暗さの量とか。私が戸を叩くとマリアが静かにその戸を開き、やさしいほほえみをもって「ようこそ。どうぞ中へお入りください。」と招いてくださるにちがいありません。奥からヨセフがやってきて「どうぞここへお座りください。」と、たぶん手作りであろう木の椅子をすすめてくださるのではと思います。そして私が座る目の前の机の上にはマリアが温かな飲み物を置いてくださるのです。そのうちにイエスが現れて、そのたたずまい、眼差しはマリアとヨセフと同じもので、正しく三人が揃い、私の心の内はやっぱり来てよかったと安堵することだろうと思います。しかし長く歩いてきた私は疲れていて何も語らないかもしれません。しばらくしてこの方たちにだったらと固まっていたものが解けてゆき、私の喜びも悲しみもいっしょに分かち合ってくださいと言葉にできるかもしれません。
リトリートのあいだ、夜風にあたりながらこんなことをぼんやり考えていました。今日もまた誰かがかなの
の家の戸を叩くとき、なかまの内にいらっしゃるイエスやマリアやヨセフが必ず迎え入れてくださるのだなあと思います。はじめの日
、私を迎えてくれたように。
橋本恵理子(いぶき家庭アシスタント)
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編集後記
稲刈りが終わり、田畑は冬へ。今年の米は豊作でした。私たちも「秋」になれば実っていくのでしょうか。
今まで生きてきたこと、今生きていること、これから生きていくことを考えさせられた秋でした。
瀧智也(仕事アシスタント)
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