日帝呪いの鉄杭


 中国と同じく朝鮮でも昔から風水信仰が盛んで、現在でもガチの信者が大勢いる。風水信仰とは、要するに土地の吉凶が人の幸不幸に影響を及ぼすという迷信で、よくあるのは墓地の風水的特性が子孫の栄華没落をもたらすとか、町や村の風水的特性がそこの繁栄衰退を決定するというものである。風水的特性とは要するに山河の配置で、村山智順『朝鮮の風水』(1931)によると看龍だの藏風だの得水だの占穴だの複雑怪奇な理論体系があるらしい。しかしここで重要なのは、人為的な土木建築工事によって風水的効果を圧勝(無効化)できるという観念である。このような行為を「圧勝術」「圧勝風水」などと言う。

「邪悪な日帝が穴脈に鉄杭を打ち込んで民族精気を殺した」という韓国の迷信は、「日本人が圧勝術を駆使した」と主張するものである。風水説によると土地も人体も似たようなもので、あたかも人体に鍼や灸を施すように地面に鉄杭を刺したり焚き火をして、地の精気を活かしたり殺したりできるという。実際、村山智順によると風水では精気が最も集中する地点を「穴」というが、これは人体で鍼灸を施すべき所を「穴」と言うのと同一観念から出たものだという。

『八域誌』には、文録・慶長の役(1592〜97年)の時に慶尚北道善山に来た明の将軍が、朝鮮にこんな人才の多く輩出する所があってはならないとして、善山邑の裏山で炭を炙き、鉄釘を打ち込んで行ったという話が出ている。また『俗離山遊記』によると、俗離山を訪れた中国人が亀石を見て、中華の文物が朝鮮に流入するのはこの亀のせいだとして、その頭を叩き落とし甲羅に十層の塔を建てて圧勝したという。

 これらは中国人による「風水侵略」の事例と言えるが、風水を信じていない日本人がわざわざ朝鮮人の迷信に付き合うとは思えない。しかし風水信者たちは、日本人は自分たちが信じてもいない風水を利用して韓国人に敗北意識を植え付けようとするほど悪辣だったと主張する。なぜ風水を知らない日本人が鉄杭を打ち込むべき穴脈を的確に探し出せたのかと問えば、韓国の優秀な風水師を悪辣な手段で籠絡したのだと答えるだろう。オカルト信者というのはそういうもので、議論しても無駄なのである。


金泳三政権の鉄杭抜き事業

 いくら何でも大部分の韓国人は、「日帝呪いの鉄杭」など迷信だとわかっていると思いたいところだが、韓国ではいまだに大手マスコミが大真面目に報道し、1990年代には国家予算を投じた大々的な「鉄杭抜きプロジェクト」が推進されたのが韓国の恐ろしいところである。これでは日本政府がノストラダムスの大予言を信じて、防衛省に恐怖の大魔王から国土を防衛する対策を命じたようなものである。

 金泳三政権は戦後50年に当たる1995年の力点推進事業として「民族精気回復事業」を大々的に展開した。その内容は「日帝が打ち込んだ鉄杭を抜くことと、日本時代に改名された地名を元に戻すこと」だった。朝鮮日報の金容三記者の特集記事「日帝の鉄杭を探して」(『月刊朝鮮』1995年10月号)によると、これは慶尚北道が始めた事業に感銘を受けた大統領府が全国に広めたものだという。

 地名復元はともかく、鉄杭抜きに関しては「迷信を助長する」「反日感情を煽る」といった懸念が出された。しかし慶北道庁の오장홍文化体育課長は、「日帝は朝鮮の風水信仰を利用しようと、巧妙な意図で鉄杭を打ち込んだ。これを行政が調査するのは当然だ」と懐疑的な公務員を説得した。李義根青瓦台行政首席秘書官は、慶北の民族精気回復事業を全国的に拡大しようと提案し、鉄杭除去事業を進めていた「われわれを考える会議」の구윤서会長に諮問した。구윤서会長は「民間団体が趣味で抜くならともかく、政府が乗り出せば日本との外交問題になりかねない」と懸念を表明した。

 それでも青瓦台の意を受けた内務部は、全国の行政機関を動員して、「日帝が打ち込んだ鉄杭」の調査に突入した。半年の間に韓国全土から439件の情報提供があり、13地域で18本の鉄杭が抜かれた。鉄杭を発見するために公務員たちが山野をさまよい歩き、浦項では海兵隊500名が動員された。

 朴裕河『反日ナショナリズムを超えて』(2000=2005)によると、1995年当時この政府事業に懐疑的だったジャーナリストは金容三記者が唯一だった。朝鮮日報を含む他の記者は、韓国の山々の「脳天」に鉄杭を打ち込んだ日本人の「奸巧性」を繰り返し強調した。金容三記者が現地で聞き込んだところでは、精巧なボルトが付いた最近のものだったり、船の係留用や方位測定用だという証言があったにもかかわらず、強引に「日帝の鉄杭」にされてしまった。鉄杭引き抜きが国を挙げての運動となり、公務員の実績と見なされるところまで行ってしまったからだという。


蘇閠夏社団法人民族精気宣揚委員会会長

 金泳三政権の国家的プロジェクトの終了後も、韓国マスコミは「また日帝呪いの鉄杭発見!」「邪悪な意図に人々の怒り!」式の報道を続けている。たとえば2005年10月28日、公共放送であるKBSは「今度は南漢山城…鉄杭大量に」という報道で、10月17日の小泉純一郎首相の靖国神社参拝で盛り上がった反日感情に油を注いだ。インタビューを受けた(社)民族精気宣揚委員会の蘇閠夏会長は、「清い機運が作られるべき所に鉄杭を打ち込んで妨害した。腐食を防止しようとすること自体が呪詛である証拠だ」とコメントした。

 金泳三時代の「われわれを考える会議」の구윤서会長に代わって、2005年以後はこの蘇閠夏会長がよく登場する。筆者が読んだ中で蘇閠夏会長が登場するのは次の記事だが、特に朝鮮日報(2009年5月23日付)とマネートゥデイ(2013年8月15日付)は蘇会長への単独インタビュー記事である。

[테마뉴스] 이번엔 남한산성 쇠말뚝 무더기로 [KBS TV 2005-10-28]
[Why] "금강산에 일제가 박은 쇠말뚝 뽑는게 마지막 희망" [조선일보 2009-05-23]
안양삼성산 삼막계곡서 일제 쇠말뚝 10개 발견 [연합뉴스 2009-12-10]
"일제 쇠말뚝 뽑아 민족 氣 회복해야죠" [세계일보 2010-02-08]
민족정기선양위·안양 향토문화연구소, 일제 쇠말뚝 제거 [연합뉴스 2010-03-01]
안양 삼막천 계곡서 일제 혈침 추정 "쇠말뚝" 추가 발견 [뉴시스 2010-05-16]
부산 금정산서 일제 쇠말뚝 10개 발견 [연합뉴스 2012-10-25]
세종시 정부청사 인근 일제 설치 추정 쇠말뚝 발견 [뉴스1 2012-11-14]
지독한일제쇠말뚝,더 독하게 뽑아낸 뚝심 [머니투데이 2013-08-15]
울릉도 북면 섬목서 일제 강점기 추정 쇠말뚝 발견 [헤럴드경제 2017-07-09]

 韓国語版Wikipediaによると、蘇閠夏は1944年生まれで、1966年に龍華ヘ教祖の徐白日を殺害して自首した。龍華ヘというのは全北金堤を拠点とする新興宗教で、蘇閠夏はその信者だった。しかし教祖の徐白日が信者から金品を詐取し女性信徒を強姦しているのを知った蘇閠夏は、激憤のあまり殺してしまったらしい。10年前後で出獄したらしく、朝鮮日報によると1970年代にはガラス製造会社とエアコン設備会社で働いていた。鉄杭抜きをはじめたのは1985年からで、以後は生計は食堂で働く妻に任せて全国を飛び回っているらしい。2009年時点で、京畿道果川の33m2(10坪)の半地下の賃貸アパートで暮らしていた。朝鮮日報の記事では「これまでの資料を集めて本を出す計画」と言っているが、ISBN付の著書は確認できない。マネートゥデイによると「日帝穴針試論」という文を書いたそうだが、出版されていないらしい。民族精気宣揚委員会のホームページは見つからなかった。

 もちろん朝鮮日報もマネートゥデイも殺人の前科には触れず、蘇閠夏会長の愛国的活動を肯定的に取り上げている。蘇会長はマネートゥデイの박상빈記者に、「敗戦後も日本は反省もせず、周辺国家に暴言を吐き続けている。気が塞ぎ鼻が詰まることだ」と反日感情を吐露している。持ち前の思い込みが強い性格と反日感情が、一文にもならない活動を続ける原動力らしい。そんな反日的姿勢が共感を呼んだのか、この記事には「わ...尊敬します┬┬」「蘇閠夏様は大韓民国の本当の人間文化財d^^b」といった感動と称讃のコメントが付いている。


風水信者たち

 蘇閠夏以外にも、作家やジャーナリストや大学教授など多くのオピニオンリーダーが、「日帝呪いの鉄杭」などという迷信を明らかに信じて日本糾弾に熱をあげている。大河小説『土地』で知られる作家の朴景利(1926〜2008)もそのひとりである。死後「日本散考」という遺稿が発見され、東亜日報に全文が掲載された。日本に対する偏見と怨念に満ちたおどろおどろしい文章だが、日本人の祖先は半島から追放された兇悪な罪人たちで、故郷に恋い焦がれながら絶望し、追放した韓国人を憎んで切歯扼腕したのだという妄想を語っている。その中で日本人が鉄杭を打ち込んだことを「薄気味悪い」としているが、そんな迷信を信じられることの方がよほど薄気味悪い。

日帝のとき迷信を掃討するとして巫女たちを圧迫した彼らが、一方では朝鮮の脈を断つと峰ごとに鉄杭を打ち込んだ薄気味悪いそのことが連想される。どんな理由で彼らはそのように狂乱しなければならなかったのだろうか。その狂乱の根は何なのか。
故 박경리선생 유고 '일본산고(日本散考)'발굴 첫 소개 [동아일보 2008-07-18]

 韓国の毎日新聞の하국근編集委員は、「하국근の風水紀行」という連載で慶北清道郡の走狗山を取り上げた際、次のように書いた。

日帝は朝鮮侵略のために数十年にわたり韓半島の地形と朝鮮人の風水観を調査したという。全国から収集したその資料を土台に、穴と見なされる所に鉄杭を打ち込んだり神社をたてた。また道路や鉄道を通して脈を断った。大多数の朝鮮人が信じた風水を逆利用したわけだ。風水でしばしば言及される日本人村山智順の著書『朝鮮の風水』も、その刊行目的にはこのような政治的意図が多分に含まれていたと見られる。
[하국근의 風水기행] 청도 주구산 [매일신문 2008-08-16]

 マイニュースコリアの하재석発行人は、高校教育課程の2009年改定で韓国史が必修から選択に変わったことに憤慨し、「とんでもない誤謬」だと罵倒した。その中で李明博政権の四大江事業を、「呪いの鉄杭」になぞらえて糾弾した。

この地の主人は大統領でも数々の政治屋でもない大韓民国の国民なのに、国民の70%がするなという四大江事業を川の水質を生かすという名目で強行している。これは日帝治下で韓半島の要所要所に鉄杭を打ち込んで韓半島の脈を断絶し、韓半島の気象を折ろうとした日帝治下でよりさらに残忍に韓半島の胸を掘削機を動員して断ち切っている。これはもしかしたら日帝よりさらに酷い蛮行を、国民の税金で恣行しているのだ。
역사는 선택이 아닌 필수다 [마이뉴스코리아 2010-01-03]

 2012年の光復節(日本の終戦記念日)に、全南海南郡で鉄杭が発見され抜かれたというニュースがYTNで放送された。その中でインタビューを受けた木浦大学の변남주教授は、「日帝呪いの鉄杭」に間違いないと断言した。

「鉄杭の周辺部を石灰石で覆い、5cmほど露出した部分を隠すためにセメントで密封した方法は、(典型的な)日帝の手法です。」
70여년만에 뽑힌 일제 쇠말뚝 [YTN 2012-08-15]

 この鉄杭除去式には、民主統合党(当時)の丁世均議員が参加した。しかしその甲斐もなく、丁議員は党内の大統領選候補の予備選で文在寅に大差で敗れた。

丁世均候補は全南海南郡玉梅山で開かれた日帝鉄杭除去行事に参席した。丁候補は「独島問題、歴史歪曲問題、慰安婦おばあさんなど日帝の残滓が鉄杭のようにわが社会を押さえ付けている」とし、「こういう残滓を解消しようとするなら反日感情に便乗するのでなく、今よりさらに冷静で緻密に対処しなければならない」と強調する予定だ。
민주 대선주자, 광복절 '민심잡기' 주력 [연합뉴스 2012-08-15]

 驪州市の추성칠弘報チーム長は、仁川日報に寄稿した「わが故郷自慢」で、驪州周辺の名所とそれにまつわる逸話を紹介した。その中で、2009年に紫山で鉄杭が抜かれたことに触れ、ここが日帝が注目するほどの風水的吉地だったというねじくれた自慢をした。

2009年驪州郡は第64周年光復節をむかえて、紫山の中腹に日帝が打ち込んでおいた鉄杭を除去した。日帝は韓半島の気脈を断とうとあちこちの吉地に穴針を打ち込んだが、ここがそれだけ名山で絶景であるためだろう。
[기획 - 내고장 자랑] 19. 남한강 비경의 백미 '여주 자산' [인천일보 2016-10-17]

 韓国と同様、「日帝呪いの鉄杭」の迷信は北朝鮮でも脈々と生き続けている。聯合ニュースによると、2011年10月27日に北朝鮮の労働新聞は、開城付近の松岳山、天馬山、ムカデ山で日帝が打ち込んだ鉄杭が合計6本発見されたと伝えた。労働新聞は、「極悪な日帝の悪行」を口を極めて罵った。

この媒体は「日帝は朝鮮のすべての地脈を生きている人体と見て、主な山と地点に鉄杭を打ち込む前代未聞の妄動を冒した」として「極悪な民族抹殺策動を敢行した日帝こそ、天下に二つとない悪漢で卑劣さこの上ない強盗」だと非難した。
개성 송악산등서 일제 쇠말뚝 6개 발견 [연합뉴스 2011-10-27]

 このニュースを報道したKBSも、ガチガチの風水信者の立場から日本非難を重ねた。

日帝がわれわれの民族精気を断とうと各地に打ち込んだ鉄杭が、最近北韓の開城で大挙発見されました。日帝の悪行にもう一度開いた口がふさがりません。……去る2005年、南漢山城付近で発見された鉄杭だけで74個、日帝強占期時代日本人たちが打ち込んでおいたものです。わがの民族の精気を断とうと日帝が行った悪行は、北韓でも例外でありませんでした。……風水説を考慮して日帝が名山や脈になる地点に打ち込んでおいた鉄杭は、南韓で183個、北韓で182個に達します。
일제 쇠말뚝, 북한 명산에서도 대거 발견 [KBS 2011-11-19]

 上の丁世均議員以外にも、多くの政治家や高官が日帝の風水侵略を信じ、あるいは信じたふりをして迷信を助長している。聯合ニュースによると、2009年の光復節に行われた京畿道驪州郡の「穴針除去行事」には、驪州郡守と国会議員が参加した。ちなみにこの鉄杭は、上の仁川日報(2016年10月17日付)で言及されているものである。

京畿道驪州郡は第64周年光復節をむかえ、15日康川面康川2里の紫山で山の中腹に日帝が打ち込んでおいた鉄杭(別名穴針)を除去する行事を行った。この日午前11時から始まった「穴針除去行事」には、이기수驪州郡守と李範觀国会議員等300名余りが参列する中で、1時間の間進行された。
여주 강천면 자산서 일제 쇠말뚝 제거 [연합뉴스 2009-08-15]

 2013年6月12日に行われた釜山広域市影島区の「蓬莱山発福祈願祭」には、影島区長が参加した。

「日帝が打ち込んだ鉄杭のために詰まっていた明堂の気運、広く広がるようにしてください。」釜山影島蓬莱山発福祈願祭推進委員会は12日、釜山影島区の蓬莱山ヘリコプーター着陸地周辺で어윤태区長、各級社会団体、地域住民等300余名が参加した中で発福祈願祭を開いた。発福祈願祭は影島区が2009年蓬莱山祖峰前の明堂に日本強占期間に打ち込んだ鉄杭を発見して除去したのを契機に、明堂の気運を解いて釜山と影島区の繁栄と区民の無事安寧を祈る行事だ。
부산서 일제 '쇠말뚝' 제거 기념 발복기원제 [연합뉴스 2013-06-12]

 もとウリ党・統合民主党議員の柳宣浩は、2016年4月の国会議員選挙では無所属で立候補した。柳候補は、木浦の儒達山に残る鉄杭、弘法大使像、不動明王像といった「日帝の亡霊」を片っ端から除去することを公約としてかかげた。しかしその甲斐もなく、柳候補は落選した。

柳宣浩全南木浦予備候補は16日、「木浦随一の風景を誇る儒達山に日帝の残滓が今でも残っている」とし、「20代国会で『民族魂を立て直す特別法』を制定し、国家的次元で儒達山に漂う日帝の亡霊を必ず除去する」と明らかにした。柳予備候補はこの日報道資料を通じて、「儒達山は霊験ある気運が湧き出す岩山で、観光客が真っ先に訪れる木浦の顔だ」として、「日帝の鉄杭が露積峰の所々に打ち込まれており、日本仏教の象徴である弘法大使像と日本人が神と崇拝する不動明王像が岩に刻まれている」としながら、このように明らかにした。
[총선 정가] 유선호 후보 "유달산 일제 망령 바로잡겠다" [뉴시스 2016-03-16]

 国民安全處はセウォル号沈没事故を受けて2014年11月に新設された部署で、海軍大将の李聖浩が初代長官に就任した。2016年11月の任期満了を前に、金泳三政権の内務部自治企画課長として鉄杭引き抜き事業を推進した박승주が二代目長官に内定していた。ところが共に民主党は、朴候補者が同年5月の「救国天帝祈祷会」に臨席したという報道に噛みつき、こんなオカルト信者を長官にすれば外信も韓国を「シャーマニズム国家」と嘲弄するとして反対した。結局朴候補者は長官になれず、李聖浩が2017年6月まで留任した。

共に民主党は7日、박승주国民安全処長官内定者が光化門広場で開かれたお祓いに参席したという報道と関連、「国民の安全を云々する基本資質と素養さえない人だ」として辞退を求めた。奇東旻民主党院内代弁人はこの日国会ブリーフィングで「恥ずかしくてみっともなくてこれ以上話すのも嫌だ」と朴候補者を猛非難した。……奇代弁人は「主要外信までわが国を『シャーマニズム国家』とあざ笑うだろう」とし、「国民安全処長官候補者という人がお祓いに動員され、前世体験をしたと公然と騒ぎ立てる恥ずかしいことが2016年大韓民国で堂々と広がった」と慨嘆した。
민주당 "외신도 샤머니즘 국가비웃어"... 박승주 안전처 장관 내정자 쇠말뚝 뽑기 사업으로 해명? [스타서울TV 2016-11-07]


懐疑論者たち

 日帝の風水侵略をガチで信じたり、または真偽に触れず報道する記者が多い中で、金容三記者のようにそうした風潮に異議を提起するジャーナリストもいる。ハンギョレの吉倫亨記者(2014〜17年東京特派員)は、2005年4月に実学者の丁若縺i1762〜1836)の墓から鉄串10本が発見された際、新聞各紙が一斉に「日帝が聖賢の墓に鉄杭を打ち込んで民族精気を断とうとした」と反日報道を繰り広げたことを批判した。吉記者は綿密な取材に基づき、韓国人の風水信者が生気を自分の方に向けようとした所業だと断定した。代表的な事例として、1994年に祈祷師の梁順子(当時48)が忠武公李舜臣の墓に包丁56本と鉄棒66本を刺して逮捕された事件がある。梁順子は警察で「忠武公が夢に現れた後、頭が痛くてその子孫らの気を断つためにことを起こした」と陳述した。吉記者は韓国社会の病理的な側面を次のように指摘した。

みな合理的な常識に従い行動しているように見えるが、もしかしたら大韓民国皆が梁順子ではないのか? 名前の分からない祈祷師は茶山(丁若縺jの墓にきて「祈福」のために鉄串を刺し、これを発見した人夫と公務員は「日帝が民族精気を殺すために冒したことだ」と躊躇なく話す。マスコミが確認せずこれを報道する過程で、われわれの中の梁順子はますます拡大再生産され、より大きな力を得ることになる。
쇠 꼬챙이에 흥분하지 맙시다 [한겨레21 2005-05-11]

 国民日報の김원철記者は、都市伝説の一例として鉄杭を取り上げた。

ソウル市都市計画局長をつとめた손정목前ソウル市立大学教授は「ずっとその問題(日帝の鉄杭)を研究してきたが、何ら根拠がない。一方的にする声だ。そんな行為をしたとすれば、大韓民国のどこかにそんな行為をしたという資料、たとえば予算が通過したとかいうものがなければならないが全くない」と話した。
도·시·전·설 우리가 만들고 우리가 속는다... 인터넷 떠도는 '진실 같은 거짓' 어떻게 만들어지나 [국민일보 2011-03-31]

 アジア経済の김봉수記者は、江華島摩尼山で文化財保護のために打ち込まれた鉄杭に対し、ある檀君関連団体が民族精気を害するとして撤去を要求した顛末を報道している。この事例では風水信者らも、日帝関連のものでないと最初からわかっている。オカルト信者がいかに狂信的で、迷惑至極な存在かがよくわかる。

この団体は数年前から江華郡側に垣根の撤去を要請したが受け入れられないと、今年6〜7月が撤去に最も良い期日だとし、無断で撤去すると宣告した。……これに対し江華郡では、今月中に文化財毀損に対する警告版を設置し、常時監視員(2名以上)を配置するなど、文化財保護活動を強化する予定だ。
강화도 마니산, 난데없는 '쇠말뚝' 철거 논란 [아시아경제 2011-07-19]

 鉄杭を抜いた後で日帝と無関係と明らかになった事例もある。韓国日報の윤형권記者によると、2013年2月に世宗市の転月山で日帝の鉄杭が発見された。民族精気宣揚委員会の蘇閠夏会長が出張って来て、鉄杭8個を抜いて告由祭を執り行った。ところが一週間後、問題の鉄杭は韓国軍が訓練時にロープをつなぐために打ち込んだものと明らかになった。

地域の郷土史研究会幹事である임재한氏(55)は、問題の鉄杭が日帝が打ち込んだのでなく遊撃訓練場のロープ用と確認されたと7日明らかにした。……임재한氏は「最初は日帝が打ち込んだ鉄杭だと思ったが、町内の年寄りたちが遊撃訓練のときロープを結んだ鉄杭だと強く主張してもしやと思い、事実を明らかにすることになった」とし「考証をおろそかにしたまま騒動を起こし、結局行政力だけ浪費した」と述べた。
일제 쇠말뚝 아니라고? [한국일보 2013-03-07]

 又石大学の金ドゥギュ教授は、鉄杭怪談の背景について次のように書いた。この記事は日本語版から引用する。

つまり、「鉄杭」のうわさは国を奪われた人々の「主人意識の欠如と被害意識の産物」なのだ。では、現在はどうだろうか。全国の霊山の頂上にはどこにも高さ数十メートルという送受信塔が無数に建っている。これこそ大きな鉄杭ではないか。掘削機を使って山を平地にするなどということは全く話にもならない。地脈を完全に断ち切ることになるからだ。流れる川をふさぎ、山並みを壊して生態系を乱す行為だ。「李如松や日本人の鉄杭」に激怒する人々の中で、こうしたむやみな開発を懸念する人は少ない。これもまた、自分たちの土地を大切にしない「主人意識の欠如」ではないだろうか。
風水で朝鮮の「気」断とうとした? [朝鮮日報 2013-12-29]

 日本人が打ち込んだことになっている鉄杭を問題視しながら、国土開発による山河の破壊を問題視しないダブルスタンダードは、朴裕河も指摘していたところである。

とはいえ、風水説を信じるならば、直径が数センチしかない鉄杭のことでなく、山の尾根などが掘り返され、ひっきりなしに高層マンションに変貌していく状況をこそ憂慮すべきではなかろうか。それらの中に「名山」は含まれていなかったのか、あるいは民族の精気が秘められた「脳天」を切断してしまいはしなかったのか。ところが、そういうことに気を配る建築業者が存在するという話は、もちろん耳にしたことがない。
朴裕河(安宇植訳)『反日ナショナリズムを超えて』河出書房新社,2005.

 小説家の이문영も、圧勝風水に関する文献や山下奉文陸軍大将に関する噂を検証した上で、次のように結論した。

では山から抜き出したという鉄杭はいったい何か? これには色々な説明が可能だ。軍事用テントをたてる時使用されたもの、祈祷師たちが呪術儀式で刺しておいたもの、測量用に刺したものなどが混在していると見られる。こんな話は今まで何度も指摘されたのだが、帝国主義日本がこんな悪行をしないはずがないという思い込みが、この怪談に生命力を与え続けているのだ。
조선의 맥·인물 끊겠다는 일제강점기 '쇠말뚝 괴담' [매일경제 2016-07-18]



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