カバラ数とは、出生年月日の各桁を加える操作を繰り返して最終的に得られる1桁の数で、しょうもない数占いに用いられる。カバラ数占いには姓名のアルファベットに与えられた数を用いるものもあり、これと区別するために誕生数、運命数、宿命数などと呼ばれることもあるが、ここではカバラ数で通すことにする。ここで興味があるのは数学的特性だけで、占いについては知ったことではない。
1. カバラ数の定義と性質
出生年月の最大8桁を合計し、2桁になったら結果が1桁になるまで合計する操作を繰り返す。
例.1987年6月5日なら、1+9+8+7+6+5=36、3+6=9でカバラ数は9となる。
本来は1〜9以外に11と22を特別視して、これらのゾロ目が現れたら桁ごとに加える操作を中断するものらしいが、それは後回しにして、1桁の数しか認めないバージョンを先に考察する。もう終了したが、日本テレビ系の「お願い!モーニング」で使われていたのはこのバージョンで、モー娘。ファンとしては当然こちらを優先する。
この場合のカバラ数は、生年月日を6〜8桁の自然数とみなし、それを9で割った余りと同じで、違いは9で割り切れる場合の「余り0」を9と読み替えていることだけである。10進法で表された自然数の各桁の合計が9で割った余り(+9の倍数)に一致することは、「九去法」と呼ばれる定理に関連している。
九去法の定理.任意の自然数の各桁の合計が9の倍数なら、その数は9で割り切れる。
証明.任意の自然数を N = x1 + 10 x2 + 100 x3 + 1000 x4 + ... で表す。このとき、
N = x1 + (9+1) x2 + (99+1) x3 + (999+1) x4 + ...
= (x1 + x2 + x3 + x4 + ...) + (9 x2 + 99 x3 + 999 x4 + ...)
第2の( )内は9の倍数で、9の倍数に別の9の倍数を加えた結果も9の倍数である。従って第1の( )が9の倍数なら、Nは9の倍数になる□
上の第1の( )内をm, 第2の( )内を9nと置けばN=9n+mだから、mを9で割った余りがNを9で割った余りに一致する。それがカバラ数(ただし0は9と読み替える)である。
九去法のポイントは、各桁が9で割った商と余りに分解できる点で、従って順序に依存しない。たとえば123でも321でも132でも、9で割った余りはいずれも6である。
また年月日をどこで区切っても、結果は同じである。たとえば1987年12月25日を198と71225のように、上3桁と下5桁に分けたとする。一般に上3桁をx6 + 10 x7 + 100 x8、下5桁をx1 + 10 x2 + 100 x3 + 1000 x4 + 10000 x5と表すと、
上3桁 = (x6 + x7 + x8) + 9の倍数
下5桁 = (x1 + x2 + x3 + x4 + x5) + 9の倍数
ここで(x6 + x7 + x8)を9で割った余りと、(x1 + x2 + x3 + x4 + x5)を9で割った余りを加えると、(x1 + x2 + x3 + x4 + x5 + x6 + x7 + x8)を9で割った余り(+9の倍数)になる。生年月日をどこで分割しても、いくつに分割しても、最後に問題になるのは全桁の合計(x1 + x2 + x3 + x4 + x5 + x6 + ...)を9で割った余りである。従って生年月日を最初から8桁までの数とみなして桁ごとに加える操作を繰り返した場合と、結果は変わらない。
さらに1〜9しか認めないバージョンでは、年月日のいずれかに11、22が現れた際に桁ごとに加える操作を中断してもしなくても結果は同じである。たとえば出生年の各桁を合計が22になった(1966年、1975年、1984年など)として、出生月をx2 + 9m、出生日をx1 + 9dと表す。ちなみにmは0か1、dは0〜3の範囲にある。ともあれ、この場合のカバラ数は22 + x2 + x1を9で割った余り(0は9と読み替える)だが、22=4+9×2だから、これは4 + x2 + x1を9で割った余りと同じである。
以上をまとめると、最終的に1〜9しか認めないカバラ数には次の特性がある。
@カバラ数は生年月日の各桁の合計を9で割った余りである。ただし0は9と読み替える。
A生年月日の各桁を入れ替えても、カバラ数は変化しない。
B生年月日をどこで区切っても、カバラ数は変化しない。
C各桁を加える途中でゾロ目を特別視しても、カバラ数は変化しない。
2. 分布
まず出生年月を無視し、出生日だけのカバラ数を考える。28日まではどの月にもあり、28=1+9×3だから、ここまででカバラ数=1は4×12=48回、2〜9は3×12=36回登場する。ここでは閏年以外を想定し、29日(カバラ数=2)は年に11回しかないとする。30日(カバラ数=3)も年に11回、31日(カバラ数=4)は7回である。従って出生日のカバラ数の分布は、次のようになる。
カバラ数 | 出現頻度 | 分布(%) |
1 | 48 | 13.2 |
2 | 47 | 12.9 |
3 | 47 | 12.9 |
4 | 43 | 11.8 |
5〜9 | 各36 | 各9.9 |
出生月のカバラ数は、10〜12月がカバラ数1〜3に対応するので、1〜3が2回出現するのに対し、4〜9は1回しか出現しない。これを出生日に加え9の剰余をとると月日のカバラ数が出る。場合分けがややこしいので、結果だけを示す。
カバラ数 | 出現頻度 | 分布(%) |
1 | 39 | 10.7 |
2 | 41 | 11.2 |
3 | 42 | 11.5 |
4 | 41 | 11.2 |
5 | 42 | 11.5 |
6 | 40 | 11.0 |
7 | 41 | 11.2 |
8 | 39 | 10.7 |
9 | 40 | 11.0 |
出生日だけの場合に比べ偏りはかなり緩和されるが、特定年生まれの人のカバラ数にはまだ偏りが残っている。上の表は、出生年のカバラ数が9でしかも閏年でない年(1998年,1989年,1971年,1962年,…)にそのまま当てはまる。一般にカバラ数がyの年については、上の表の1が1 + y、2が2 + y、…のようにシフトする。もちろんyを加えた数が9を超えたら、9を引く。閏年ならその年の2月29日のカバラ数(2000年2月29日なら6)の出現頻度を1つ増やせばよい。
出生年の範囲を広くとるほど、分布は一様分布に近づく。以下は20世紀生まれ(1901年1月1日から2000年12月31日まで、合計36525日)のカバラ数を、VBAでプログラムを書いて数え上げた結果である。
カバラ数 | 出 現 頻 度 | 分 布(%) |
1 | 4056 | 11.1 |
2 | 4058 | 11.1 |
3 | 4057 | 11.1 |
4 | 4059 | 11.1 |
5 | 4059 | 11.1 |
6 | 4059 | 11.1 |
7 | 4060 | 11.1 |
8 | 4058 | 11.1 |
9 | 4059 | 11.1 |
3. 2月29日生まれのカバラ数
2000年が閏年だったため、20世紀には閏年が25回あった。つまり2月29日は20世紀内に25日存在するが、そのカバラ数は1と5が2日ずつ、それ以外が3日ずつである。
閏年は4の倍数という規則性を持ち、そのカバラ数には偏りがありそうに思える。しかし4と9が互いに素であるため、閏年を9で割った余りに偏りはなく、従ってカバラ数も均等に分布する。もし閏年が3年おきや6年おきに出現する暦法があれば、カバラ数は大きく偏るだろう。
4. ゾロ目を特別視する場合
カバラ数で特別視するのは11と22で、ゾロ目でも33以上は考慮しないらしい。これは年月日を別個に扱う場合、33以上のゾロ目が生じる可能性がないに等しいためだろう。日は31まで、月は12までだから、そのままでは33に達しない。2桁の合計の最大値は、日では29日の11、月の場合は12月の3で、33には遠く及ばない。年の場合は、これまで西暦11年から1111年まで19回ゾロ目が存在したが、次は2222年だから200年以上先である。4桁を足して33以上になる年は、6999年まで来ない。
最終的に11と22を生じる手続きには、いくつかの可能性がある。まず年月日を別個に扱う方法としては、次の3つが区別できるだろう。
@11月、11日、22日については2桁を加える操作を行わずに他の数に加える。
Aまず各桁を合計し、結果が11か22になったらそれを保存して他の数に加える。
B各桁の合計が11か22になっても保存せず、1桁の数に直してから合計する。
これらに加えて、年月日を別個に扱わない方法が考えられる。この場合には、33以上のゾロ目も可能である。
C年月日を8桁までの自然数とみなし、各桁を合計する。
まず@の場合だが、おそらくこれがカバラ数の正統な出し方と思われる。すなわち11月、11日、22日に対しては、2桁を合計する操作を行わずそのまま保存する。上で使ったプログラムをちょこっと改造し、20世紀生まれの人のこの手続きによるカバラ数の分布を求めたら次のようになった。
カバラ数 | 出 現 頻 度 | 分 布(%) |
1 | 4056 | 11.1 |
2 | 2185 | 6.0 |
3 | 4057 | 11.1 |
4 | 2941 | 8.1 |
5 | 4059 | 11.1 |
6 | 4059 | 11.1 |
7 | 4060 | 11.1 |
8 | 4058 | 11.1 |
9 | 4059 | 11.1 |
11 | 1873 | 5.1 |
22 | 1118 | 3.1 |
上述のように、最終的に1〜9しか認めないのであれば、カバラ数はゾロ目を特別視してもしなくても変わらない。従って表4-1の11と22は、1〜9しか認めないバージョンではそれぞれ2と4になる。このことは、表2-3と比較すれば直ちに確認できる。
手続きAは、11月、11日、22日に対しても各桁を合計する操作を行う。その結果が11か22になれば、それを保存して他の数に加えるという規則である。結果は@の場合に比べ11が増え22が減る。11の増分の方が大きいので、ゾロ目の合計2310+830=3140(8.6%)は、@の場合の1873+1118=2991(8.2%)を上回る。
カバラ数 | 出 現 頻 度 | 分 布(%) |
1 | 4056 | 11.1 |
2 | 1748 | 4.8 |
3 | 4057 | 11.1 |
4 | 3229 | 8.8 |
5 | 4059 | 11.1 |
6 | 4059 | 11.1 |
7 | 4060 | 11.1 |
8 | 4058 | 11.1 |
9 | 4059 | 11.1 |
11 | 2310 | 6.3 |
22 | 830 | 2.3 |
手続きBは、途中経過では11,22を保存せず、最終的に11,22になった場合のみ認めるというものである。実はこの場合がゾロ目の頻度が最も大きく、2713+693=3406で、全体の9.3%を占める。
カバラ数 | 出 現 頻 度 | 分 布(%) |
1 | 4056 | 11.1 |
2 | 1345 | 3.7 |
3 | 4057 | 11.1 |
4 | 3366 | 9.2 |
5 | 4059 | 11.1 |
6 | 4059 | 11.1 |
7 | 4060 | 11.1 |
8 | 4058 | 11.1 |
9 | 4059 | 11.1 |
11 | 2713 | 7.4 |
22 | 693 | 1.9 |
年月日を8桁までの自然数とみなして合計するCの手続きでは、33以上のゾロ目が現れる可能性がある。20世紀生まれに限れば、各桁の合計の最大値は1999年9月29日生まれの48だから、44まで4つのゾロ目を考慮しなければならない。プログラムでこれらのゾロ目の出現頻度を数え上げてみたら、33が意外に多かった。しかしゾロ目の合計は34+1298+1922+65=3319(9.1%)で、Bの場合を下回る。
カバラ数 | 出 現 頻 度 | 分 布(%) |
1 | 4056 | 11.1 |
2 | 4024 | 11.0 |
3 | 4057 | 11.1 |
4 | 2761 | 7.6 |
5 | 4059 | 11.1 |
6 | 2137 | 5.9 |
7 | 4060 | 11・1 |
8 | 3993 | 10.9 |
9 | 4059 | 11.1 |
11 | 34 | 0.1 |
22 | 1298 | 3.6 |
33 | 1922 | 5.3 |
44 | 65 | 0.2 |
この方法では11がえらく少なくなるが、2000年以外で11が不可能なことによる。1999年まででは上2桁の1+9で既に10に達し、残りの桁の合計を1以下にできないためである。44になるためには、年4桁の合計が24以上でなければならない。これを満たすのは1959年、1968〜69年、1977〜79年、1986〜89年、1995〜99年の15年しかない。
このように手続き@〜Cによって、カバラ数は異なる。しかし33以上のゾロ目を認める流派はおそらく存在しないだろうから、カバラ数が2と4の人以外は、カバラ数は計算法に依存しないと考えてよいだろう。その場合、11と22はそれぞれ2と4から派生したと考えるべきである。この関係を重視するなら、2と11、4と22の人の間に類似性がなければならない。