上記のそれぞれについて、ハードウェアに対する基本的な考え方や仕組みを通して理解する。
普通教科「情報」では、技術面ではなく社会的観点からも学習を展開し幅広い認識をねらう。
現在のコンピュータ(ノイマン型):入力機能・出力機能・記憶機能・演算機能・制御機能から構成。
機械語プログラム(2進コードのプログラム)においては、記憶装置のアドレスを指定することにより記憶装置とそれ以外の装置の間で命令の出し入れができる。
記憶装置から取り出した命令は「命令レジスタ」に格納され「命令解読器」で解読され、実行。この取り出し・解読・実行が規則正しく繰り返されていく。
コンピュータは高速な動作ではあるが、逐次動作に過ぎないことを理解させる。
CPU内の演算装置では、論理演算(AND,OR,比較,一致など)、算術演算(可・減・乗除算)、固定小数点演算、浮動小数点演算などを行う。
演算の基本は加算であり、減算は負の数の加算で実現、乗算は加算の繰り返し、除算は減算の繰り返しで処理。
指導者として、論理回路の基礎について把握しておくこと。
符号化:文字に2進数を対応させること。
1バイト文字:英文字、数字、記号、制御文字
2バイト文字:漢字、ひらがな
負の数:最上位のビット(符号ビット)は、正負を区別するために用いる。「2の補数表現」とは負の10進法の符号をとった数を2進数に変換して1を加えた数。桁あふれを無視すると加算ができる。
小数:固定小数点表示と浮動小数点表示がある。浮動小数点表示で仮数部の左端の数字を0以外にすることを「正規化」という。
AD変換器・DA変換器:アナログ情報(連続的)とディジタル情報(離散的)を電気的に変換する装置。
ディジタル化のメリットは、
ディジタル化のデメリットは、
標本化(サンプリング):時間を一定時間間隔に分割し数値化する操作。
量子化:数値化(標本化)された数字を整数にすること。
符号化:量子化された数字を2進数にすること。
標本化定理:正弦波の山と谷だけを標本化すれば波の情報が保たれるという原理から、「最高周波数の正弦波の2倍以上の周波数で標本化」すればよい。
ディジタル情報量の計算:毎秒当たりのビット数×周波数×チャンネル数[bps]
WAVEファイル:波形の標本化により、忠実な録音再生可能。容量が大きい。
MIDIファイル:音程、音長、音量、音色だけの情報により、用量が小さい。演奏には音源(波形情報)が必要。
サンプリング周波数8000Hz。量子化の段階は8bit(2の8乗)。毎秒当たりの情報量(bit数)は何bps(bit/s)か。
人間の耳に聞こえる範囲20Hz〜2000Hzを保証するサンプリング周波数を用いる。さらに量子化の段階として16bit(2の16乗=65536)とすればオーケストラの楽器の音の強弱の微妙な違いも表現できる。左右2チャンネルのステレオ録音。CD1枚には74分の情報量が記録可能。情報量は何MBか?
音声が時間的サンプリングであるのに対し、画像は空間的なサンプリング(画面上を一定間隔で色や濃度のレベルを取り出す)であり、その後の処理は同様。
ラスタ形式:画素単位で色や濃度を数値データとして表現。
ベクタ形式:形状を線分で表し、座標という数値で表現。
ディジタル情報機器では、数値、文字、画像、音楽などのあらゆる情報が、1と0の組み合わせで表現され、記憶、伝達、編集などの処理が行われている。1と0だけの情報を統合的に取り扱えることを理解させる。
ディスプレイ:加法混色RGB。フルカラーでは1画素あたり24bit(1670万色)の情報量。
プリンタ:減法混色CMY。
ディジタルカメラ:CCD(光を電気信号に変換)からの情報をAD変換器を通しCPUで画像の処理。
イメージスキャナ、ビデオカメラ、IC録音・再生機、モデム、TA、携帯情報端末(PDA)
情報機器とコンピュータを接続する機会が多いと考えられるため、指導者は接続インタフェースの特性と種類、メリット、デメリットについて把握しておくことが望ましい。
例:USB、IEEE1394、RS-232C、SCSI、拡張スロットバス(ISA,PCI,PCMCIA)
ここには記載しないが、講習会テキストp222から生徒実習例が載せられている。(1)@〜Cについては、高校生がこのような活動を熱心に行うとは考えにくい。(2)@〜Bについても高校生が興味をもって実習することは難しいと思われる。
そこで、実習例の改良を考えてみた。
「ハードウェアの基礎」は、多くの生徒に興味をもたせることが難しい分野であると思われるので、ゲーム的要素を入れる方が前向きに取り組める可能性がある。次のような実習例を考えてみた。
アナログチームとディジタルチームに分かれて情報を与えられた時間内に正確に伝えるゲーム。
テキスト(3)ABの実習例も、対高校生となると、さらに工夫が必要であろう。@はカラーディスプレイのしくみをうまく伝えることができる。そこで、もう少し工夫を加えることを考えてみた。
じっくりとテキストを読んでみると読み取りにくい表現が何ヶ所かあった(特にp210からp213)。このページを閲覧された方のご意見も聞けるかもしれないと思い、ここに挙げることにした。
まず、p212の1バイト文字の記述で「大小英文字、数字および記号の表現に用いる」と断定したあとに半角カタカナの話が出てきて、最後の行は「制御文字なども含まれている」とあり、制御文字が1バイト文字に含まれているのかJIS8ビットコードに含まれるという意味なのか読み取りにくい。細かい話ではあるが、半角カタカナには、NECのPC98シリーズ機種依存ではあるが、1バイトの半角カタカナに加えて、2バイトの半角カタカナも存在している。一時、パソコンといえばPC98シリーズという時代があったことから、当時は自然に使っていたものである。その存在理由、コンピュータで日本語を扱うしくみや工夫・苦労などについては、興味深い点もあり、高校生にはレベルは高いかも知れないが、生徒の層によっては授業で触れてもよいかもしれない。
次に、2の補数表現の記述であるが、テキストのように4バイトで考えるなら次のように説明するのはどうだろうか。私はコンピュータ内部の動きを知らないので、生徒に理解させやすいという観点からだけ考えてみたものであるが。
「2の4乗=16」なので、0と1の組み合わせで16個のものを表現できる。もちろん、すなおに0から15までの10進数を対応させてもよいが、-7から8までの15個の数を対応させることも可能。そこで0から8を2進数の0000から1000に対応させ、さらにその先は-7から順に対応させた表を書く。数字が1対1対応であることを強調し、その表を用いて負の数が入った計算を教える方が、わかりやすいのではないか。2進法の加算については、桁あふれも含めて全くテキストと同じことが可能であり、表を使った対応により見やすくなると思われる。天下り的に1を加える必要もなくなる。
2進数 | 0000 | 0001 | 0010 | 0011 | 0100 | 0101 | 0110 | 0111 | 1000 | 1001 | 1010 | 1011 | 1100 | 1101 | 1110 | 1111 |
10進数 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | -7 | -6 | -5 | -4 | -3 | -2 | -1 |
例えば上の表で、8+(-5)を計算する場合、1000+1011を行い、桁あふれを取り除くと0011であり、結果の3と一致する。なお、この表を使った操作も、われわれにとってわかりやすい10進法(アナログ)をコンピュータ用(ディジタル)に変換(AD変換)してコンピュータに計算させたあとDA変換していると説明を付け加えることも可能だと思う。
-1234の浮動小数点表示は、なぜ-0.00123456×・・・としてから指数部をずらしていく説明なのか。高校生にとっては、理科などの既習事項との関連から、-1234を直接最終的な形に持っていくほうが自然なはずで、授業でも段階的にしないほうがわかりやすいと感じた。
コンピュータが数字を扱う順序を忠実に再現するためなのかもしれない(私には不明である)が、そうであるとしても、同じページの上段で、負の10進数を正の2進数に変換するという説明をしており、この説明の意図がつかめなかった。テキストの上の例については整数値の話しであったと解釈しても、小数値であってもやはり0と1だけの表現に替えなければならないはずなので、話に飛躍がないだろうか。生徒も同じような疑問を抱き、スムーズには理解しがたいのではないかと感じた。
音のサンプリングはWINDOWS付属のアクセサリアプリケーション「サウンドレコーダー」からできる。サンプリング周波数は3種類の設定が可能となっている。従って、作ったWAVEファイルの音を聞き比べ、ファイル容量を目で確かめることにより、音質とデータ量の関係をつかむことができよう。
サンプリング周波数を数値で指定できるようなソフトウェアを使用できれば、さらに授業展開を工夫できるだろう。
日常生活の中から教材を見つけ出す目を持つことは、教科「情報」に取り組む上で非常に重要である。
平成13年度新教科「情報」現職教員等講習会テキスト(1) 文部科学省
高等学校学習指導要領解説 情報編 文部省
パソコンにおける日本語処理/文字コードハンドブック 技術評論社
以上 2001.9.7作成 (1行目に戻る)
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