情報と生活

目的

情報と身近な生活とのかかわりについて学習する。

 

特に関連する分野

「情報A」(4) 情報機器の発達と生活の変化
ア 情報機器の発達とその仕組み
情報機器の発達tの歴史に沿って、情報機器の仕組みと特性を理解させる。
イ 情報化の進展が生活に及ぼす影響
情報化の進展が生活に及ぼす影響を身の回りの事例などを通して認識させ、情報を生活に役立て主体的に活用しようとする心構えについて考えさせる。

 

内容

19世紀半ばから急速に発展してきたグローバル・コミュニケーションの拡大と、それが市民社会に及ぼした影響を振り返りながら、コンピュータと情報通信ネットワークによる社会の高度情報化の現状を考える。

 

情報機器の発達と生活の変化

情報機器の発達とそれがもたらした生活の変化を概観する。

グローバルコミュニケーションの歴史

欧米

1837年 サムエル・モースによる有線電信システム(いわゆるモールス信号を使用)。

1845年 ボルチモア・ワシントン間の遠距離電気通信の成功。

1850年 英仏海峡や大西洋に海底ケーブルが敷設され国際通信の時代が到来。

1876年 グラハム・ベルによる電話の実用化。

1895年 マルコーニによる無線通信。

1920年 米国でラジオ放送開始。

1939年 米国でテレビ放送開始。

日本

1869年 東京・横浜間で電報が実用化。

1890年 東京・横浜間で電話交換が実現。

1900年 街頭公衆電話登場。

1925年 ラジオ放送開始。

世界同時性

グローバル・コミュニケーションの拡大を特徴とする20世紀は「世界同時性」と表現できる。

世界同時性は、テレコミュニケーション技術に伴い、今日ますます進展。

 

コンピュータの登場とコミュニケーション手段のディジタル化

フランク・ケルシュ「インフォメディア革命」より。

ア メインフレーム・コンピュータの時代

1946年 ペンシルヴェニア大学で真空管を用いたコンピュータENIAC(Electronic Numerical integrator and Calculator)が完成。

1964年 IBMが大型の汎用型コンピュータシステム360型機を市場に出す。

1960年にゼロから興ったメインフレーム市場は70年代中期までに1000億ドル市場に成長した。

イ 拡大する情報網

バッチ処理からオンライン・ディスプレイ・ターミナルへ転換にともない、データ通信は飛躍的に進歩する。

1970年代はミニ・コンピュータの登場によりコンピュータのダウンサイジング化も進む。一方、大量データの高速処理のためメインフレーム機の大型化も試みられ、情報処理センターが銀行や大企業で設立される。

ウ パーソナル・コンピュータの誕生

1973年 インテルがパーソナル・コンピュータ用「8008型」チップを発売。

1995年以降、日本でもパーソナル・コンピュータを含む電子工業市場が急速に拡大。

エ 融合メディア時代の到来

インターネットは非常に短時間で我々に身近な情報環境となり、国境などの物理的制約を意識せずにコミュニケーションができ、電子商取引や電子マネーが可能となるだけでなく、マスメディアが果たしてきた機能を代替したり、遠隔医療や在宅勤務・学習のための手段が提供された。

未経験の社会問題の発生が懸念されるが、インターネットは次世代の情報通信システムとしての期待を背負う。

 

日常生活の中の情報システム

身近な情報環境
日常生活で利用される情報システム

 

マスメディアの多様化と情報環境の変化

通信と放送
放送
電気通信の中でも、ラジオやテレビに代表される公衆(不特定多数)向けの一方向型情報発信
通信
放送以外の電気通信。特定者間の双方向型情報交換である電話のほか、様々な一方向型情報発信も含まれる。

インターネット出現までは、通信・放送の形態・概念は明確に区別されていた。

通信と放送の融合

インターネットの出現が象徴するように、今日では、通信・放送の情報伝送路の共用化が進むとともに、情報活動の変化(情報の生産・発進力の向上や情報蓄積の高度化)により、通信・放送の中間領域的サービスが出現。これらは、高度情報通信社会の実現に貢献する動きである。

マスメディアでは、製作過程のディジタル化の進行に加えて、発信形態のディジタル化(オンライン出版、マルチメディア新聞など)が普及しつつある。

電子図書館(ディジタル・コンテントを収集・蓄積)も出現してきた(例:2002年に開館する国立国会図書館関西館)。

 

情報化とグローバル化にともなう生活の変化

労働環境の変化(米国商務省の報告書「ディジタル経済の台頭」より)

コンピュータと通信産業の急速な拡大は、プログラマ、システム・アナリスト、コンピュータ科学者や技術者に対応する需要を大きく伸ばしてきた。

企業売り上げに占めるWeb上での販売比率が拡大すると、財・サービスの生産や配送に対する労働力構成は変化する。

この予測は、労働形態の変更を迫るもの。例えば柔軟な組織構造である「在宅勤務」。米国では700万人の労働者が自宅の「仮想オフィス(SOHO)」で働く。このような就労形態は日本でも増加しつつある。日本の労働者の意識にも変化が起きようとしている。

 

情報の収集・発信に伴う個人の責任

サイバースペースにおいて、マナーやルールをどのように形成していくかは緊急の課題である。

個人情報保護

プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告

1980年、OECD(経済協力開発機構)が、「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告」を採択。

この勧告には個人情報保護のための8原則が掲げられている。

  1. 収集制限の原則
    個人データの収集は制限すべき。適性かつ公平な手段によって、適当な場合には、本人に通知し又は同意を得た上で収集すべき。
  2. データ内容の原則
    個人データの 内容は、利用目的に必要な範囲内で正確、完全、最新に保たれるべき。
  3. 目的明確化の原則
    個人データの収集目的は、収集前に明確化すべきであり、その後のデータ利用は、収集目的の達成又は当該目的に矛盾せず変更の度に明確化された他の目的の達成のために限定すべき。
  4. 利用制限の原則
    個人データは、本人の同意又は法令の規定による場合を除き、明確された目的以外の目的のために利用されるべきではない。
  5. 安全保護の原則
    個人データは、紛失、危険(不当アクセス、破壊、使用等)から、合理的な安全保障措置により保護されなければならない。
  6. 公開の原則
    個人データに係る開発・運用・政策は一般公開すべきであり、個人データの存在・性質・利用目的及びデータ管理者の身元を容易に知ることができるようにすべき。
  7. 個人参加の原則
    個人は自己に関するデータに合理的かつ容易にアクセスする権利を有し、アクセス拒否の場合には理由提示を請求し、異議申し立てができ、意義が認められた場合には、データ訂正権を有する。
  8. 責任の原則
    データ管理者は上記すべてを実施するための措置に従う責任を有する。
個人データの自動処理に係る個人の保護に関する条約

1981年、「個人データの自動処理に係る個人の保護に関する条約」がCE(欧州評議会)条約として締結された。

個人データ処理に係る個人の保護及び当該データの自由な移動に関する1995年10月24日の欧州議会及び理事会の指令

1995年、EU指令として「個人データ処理に係る個人の保護及び当該データの自由な移動に関する1995年10月24日の欧州議会及び理事会の指令」が出される。

日本では

「個人情報保護条例」を1975年以降、地方公共団体など約1600団体が制定し、1988年には「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」が施行された。

しかし、民間企業に対しては個人情報を保護するための立法は行われていない。

個人情報、特にディジタル化された情報は複製・改変が容易であるために取り扱いには可能な限り慎重でなければならない。

 

情報モラルの確立

個人は、情報ネットワークから恩恵を蒙ると同時に侵害されることもある。恩恵と侵害とのバランスをどのように保つかは、今後更に議論を深めていかなければならない。創出する情報社会のヴィジョンを明確にしなければならない。

 

指導上の留意点

講義だけにならないこと。インターネットを利用して情報収集したり、収集したデータをシミュレーションして将来予測を試みるなど、コンピュータとネットワークをできるだけ活用する。

その結果をプレゼンテーション・ツールを使って発表させる。

 

感想等

テキストの生徒実習例には、(1)情報機器の発達と生活の変化、(2)情報の収集・発信に伴う個人音責任、(3)情報技術における人間への配慮 の3項目に分けて、調べさせたり比較させたりする問題が数問ずつ載せされている。

これらは実際に調べさせ、発表させるとテーマをよく理解させることができそうだ。我々自身も、生徒になったつもりで課題に取り組むと理解が深まりそうな気がした。

 

将来の情報社会を考える第1歩として「住基ネットについて調べる」課題もいいかもしれない。インターネットで検索すると資料が多すぎて困ってしまうほどだが、調べやすい上に、問題点が整理されたページが多いので、高校生の調べ学習には使いやすいと思う。必要ないだろうが、私が開いたページのURLを3つほど挙げておく。

住基ネット全国センターホームページ http://www.lasdec.nippon-net.ne.jp/rpo/juki-net_top.htm

住民基本台帳ネットワーク http://www.jj-souko.com/elocalgov/contents/c101.html

住民基本台帳ネットワークシステムの構築 http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/

 

参考文献

平成13年度新教科「情報」現職教員等講習会テキスト(1) 文部科学省

高等学校学習指導要領解説 情報編 文部省


以上 2002.8.11作成 (1行目に戻る)

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