第5回 文芸と書の世界展 (1)

   書人・橋本聳山   文人・光城健悦 (詩)   
陽傘的少女把指甲印罩著太陽 陳千武譯
<日傘の少女爪の印を陽に翳す>
          「爪」より 
  書人・菊谷寒鴎   文人・光城健悦 (詩)   
地吹雪は地を走り/凍てる浜寒い
          「トッカリショウ哀愁」より
   書人・黒須祥華   文人・浅野 清 (童話)   
すっかりうれしくなった あいちゃんは なるみせんせいの かおをみながら
あたまで ひょうしをとり おおきなこえで かわいらしくうたいました。
「ねっこ ねっこ ねっこちゃん ねっこちゃん ねっこちゃん あなたは だあれ?」
          「ねっこ ねっこ ねっこちゃん あなたは だあれ?」より
   書人・新井山蘭牛   文人・井村 敦 (小説)   
世界中を見ると飢えでいる子がいるのは分かっている。
だけど、今晩何を食べよう、と思いますでしょ
          「その色」より
   書人・橋本聳山   文人・おだ多朴 (小説)  
空は雲一つない快晴であった。城内の森では蝉の声が鳴り響いていた。
今日も暑くなりそうであった。
          「松本大変」より
   書人・文野杏華   文人・こしばきこう (詩)
小さな悲しみが浮きあがる五月の空へ/舞いあがった菜の花の花粉
          「五月の空へ」より
  書人・高橋魁山   文人・さとう惇子 (小説)   
木の根元は、淡いピンク色のじゅうたんを敷き詰めたようになっている。
          「なごり雪」より
   書人・岸 幸牛   文人・水木 有 (小説)   
破線になって見える漁火が斜めになる。撥ね上がった波の飛沫が一瞬白く光った。
          「黄色い長靴」より
   書人・新井山蘭牛   文人・原子 修 (詩)   
宇宙のおごそかな理(ことわり)へと/もの静かにかえっていく衣(きぬ)ずれ
          詩集『受苦の木』から「鎮魂」部分




<招待詩人>
原子 修 (はらこ・おさむ)
   日本文藝家協会会員。日本現代詩人会会員。日本詩人クラブ会員。
   札幌大学名誉教授。北海道文学館副理事長。
   北海道文化賞受賞。北海道芸術新賞。北の児童文学賞特別賞。
   

   書人・文野杏華   文人・斉藤征義 (詩)
イタル イカ カツケン/エサ オマ カツケン/ポン カツケン/かあお かあお かあお
          「星の位置」より

<招待詩人>
斉藤征義 (さいとう・まさよし)
   日本現代詩人会会員。現代英米詩学会員。宮沢賢治学会理事。
   北海道詩人協会賞受賞。