『君と出逢えた奇跡…。』





夢をみていた
そよ風のかけぬける 朝焼けの空のしたで

街をかけぬけるバイオリンの音色が 僕の心にはいってゆく

今でも覚えている   心に響く 懐かしいメロディ

―― パッヘルベル「カノン」 ――

「いつ聞いても…いい曲だな……」


ふと見上げると、空をかけぬける閃光が  らせんのように奇跡を描いて 街に堕ちてゆく
それは、とても綺麗で   まるで天使が舞い降りたかのようだ


僕は走り出していた  追いかけていた 不思議な光を・・・。
やがて光は遠くの空で消滅した。

「今の光は・・・」

・・・ずっと空を見上げていた。

見渡せば、僕は誰もいない公園にいた。全てが空色に染まっている。

「ここで何してるの?」

「え?」

振り返ると、少女がいた…。
オレンジ色に染まった朝焼けの空のしたで…
長い髪を風にのせて 涼やかな瞳で 僕だけを見つめていた。
それは とても幻想的な光景だった…。

「珍しいね…。こんな時間に…一人で公園を散歩なんて」少女は静かに笑う…。

「空が、とても綺麗だったから…写真を撮ろうと思ったんだ…」不思議なときめきを感じた…。
「ふふっ、わかるな…その気持ち」
「僕は、椎名耕平…。天河大学の大学生だよ。君は?」
「たまき…中山たまき。運命の人を捜していたの」
「運命の人?」
少女の瞳を見ているだけで 僕は空に吸い込まれそうな思いを抱いていた
まるで この世界の人間じゃないように…

「何てね…。こんな事、キミに言っても意味ないよね…。」
そして悪戯っぽく少女は笑う。まるで天使のように…。

「ねえ…。お願いがあるんだけど…」
「何?」
僕は思いのままに、少女に近づく。
魅力的すぎた。言葉では表しきれないほどに・・・。

「モデルになってくれないかな?君を撮りたいんだ」

僕の瞳は…キミにさらわれてゆく。

「ありがとう…気持ちは嬉しいよ。でも、時間がないの…。もう行かなきゃ…」
「そう…。君はここの人じゃないんだね…」
「まあね。久しぶりに旅に出てみたの…。ここは景色が最高だっていうから…」
「僕もそう思うよ。ほらっ、空をみて…」


遥か彼方の上空で  真っ白な白鳥が   翼をひろげて 空を羽ばたいてゆく

「綺麗だね・・・。」
少女は、大空に手をのばして 優しい瞳でささやく。

写真を撮ることすら忘れていた…。
何もかも全て 彼女の想いに身をまかせていた。
言葉なんていらない   ただ、思いのままに 僕を行動にかりたてる

「耕平は、この街の人なの?」
「いや、たまたま合宿でさっ♪ホテルから抜け出してきたんだ…」
「一人で?」
「ああ。やっぱ早起きは最高だよ。こうして君に会えたんだからさ」
「うふふっ、面白い人ね」
二人でこの街を眺めていた。
木漏れ日に照らされた道を歩いて、広がる彼方に誘われてゆく・・・。

「じゃあ、耕平はこの街のこと何も知らないんだ…」
「まあね」
「この先で最高の景色がみれる場所があるの・・・一緒に来ない?」
「行くよ!えっと・・・」
「”たまき”でいいよ・・・。耕平」
「たまき・・・。キミは、不思議な娘だね・・・。」


そして僕は 奇跡をみた・・・。   終わらない旋律のメロディを・・・。

僕はそのメロディに身をまかせると  この果てしない空に飛びこんだ 

無限の世界に  この大空に…   キミとともに・・・

「ありがとう…今日は楽しかった」
「僕もだよ…」
「また、会えるといいね…」
「必ず会いに行くよ。今度は僕が・・・」

けれど、さよならは言わない…

夢のなかで  記憶のなかで   キミの街で・・・

また、何処かで君と逢えるから…



「Goodluck、耕平…。今度はキミが映した景色を見せて…」



                  新しい世界のはじまり  夢は 終わらない…  




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