魔法の性奴隷の宿敵
ひみつのちづるちゃん |
「つるはせんねんかめはまんねんのひみつ」
「…ね…姉さん…。…出てきては…」
「…いいのよ、ちづる。キングさんは既にカラクリに薄々気付いていたようです…」
「…そうだね…」
「…ちづる…。あんたの繰り出す攻撃は異質すぎた…」
「…瞬間、瞬間に現れるもう一人のお前の姿…」
「…あれは分身や残像、幻影の類ではない…」
「…確実に別の場所にお前とは別の殺気、別の闘気が現れていた…」
「…だからこそ見切れず、惑わされてしまったわけだけど…」
「…先程仕掛けた飛び道具からのユリとの連携はそれを確かめたかったためでもある…」
「えっ、そうだったッチ?」
「…わたしはある男と闘い、既に命を散らせています…」
「しかしわたしはまさに倒れるその瞬間…」
「…神楽の家に伝わる神器…『八咫の鏡』の中にその魂を宿しました」
「八咫の鏡だって…。まさか…」
「他国の方にしてはお詳しいのね…。そう…多分あなたが想像しているとおりのものよ…」
「マキ姉さんは死してなおわたしを守護してくれている…」
「いえ…生前にも増して常にわたしに寄り添い、力を貸してくれているのよ…」
「そういう意味ではあの男…、ゲーニッツにはもちろん恨みも抱いているけど…」
「…ゲーニッツ…、それが仇の名前か…」
(…んー?…なんか聞いたことがあるような…)
「わたしたち姉妹にもう二度と離れることはない深い結びつきを与えてくれたという意味では、」
「あの男に感謝している部分もあるのよ」
「例え肉体は滅びようとも、姉さんの魂と意志は永遠…」
「…裏面壱活・三籟の布陣…」
「神聖にして強大なる神器の力と、鏡を守護し、操る神楽の力が合わされば…」
「短時間とは言え、姉さんを現世に呼び戻し、実体化させることが出来る…」
「姉さんは死んではいないのよっ!」
涙を流しながら熱く訴えるちづる。
作品始まって以来、はじめて訪れた感動的なシーンに思わずキングちゃんたちももらい泣き…。
「ちづる…、あんた…」
「うぅぅぅ…、エエ話や…」
「キングさん、ユリさん…」
「ちづるはたしかに陰湿でわがままで嫉妬深く、おまけにプライドが高いという困った性格の持ち主です」
「ちょ…いきなりっ!マキ姉さんっ!何を失礼な…」
「しかしそれは神楽一族の当主として生まれついたこの子の悲劇!」
「存在自体を秘匿とされ、他者との接触を避け続けなければならない神楽の家…」
「外の世界で友人と関わることなど許されません」
「神楽は世界有数の財閥でもあります」
「幼き頃より帝王学を叩き込まれたこの子の周囲にいたのはすべて目下の者でした」
「そして身内以外…つまり外で関わる人間すべては、いずれも神楽の権力を欲する狡猾な敵ばかり…」
「この子は同年代の友人と対等に触れ合う方法を知らぬまま育ち…」
「いつしか相手を支配し、下に置くことでしか完全に信用することが出来なくなってしまいました」
「ちづるがここまで歪んでしまったのは側にいたわたしの責任でもあります」
「ま…マキ姉さん。わたしそこまでダメ人間じゃないと思う…」
「いいえ、ちづるはダメな子です!」
「うん、ちづるはダメな子だね」
「ちづるはちょうダメな子ッチ」
「くッ、あんたらァ…」
「確かにちづるのいびつなやり方は間違っています」
「しかしちづるには強く、信頼出来る仲間が!チームメイトが必要なのです!」
「それも早急に…」
「…何かわけあり…なのか…」
「…オロチよ」
「オロチ?」
「前大会において復活したルガールがまとっていた強大な力…。そして八神庵が振るう憎しみの蒼き炎…」
「彼らの操る力…。その本質はいずれもオロチによって与えられた邪悪なものなのです」
「八神は元々わたしたち神楽と同じ…、オロチに対抗する一族だったのよ…」
「しかし彼らはよりによって敵であるオロチと交わり、禍々しい力を手に入れた…」
「八神のチームメイトだったマチュアとバイスとかいう女…」
「彼女たちからも強いオロチの力を感じたわ」
「あれは八神のような借り物ではない…。おそらくは正真正銘のオロチの血族ね」
「おそらく彼女らは八神庵の力を利用しようとしているのでしょう」
「あ…あいつらが…」
女性格闘家チームが2回戦であたった相手こそが八神チーム。
八神は新しいチームメイトとして、なんとあのルガールの元秘書…、
マチュア(初代)とバイス(二代目)のふたりを引き連れていました。
得体の知れない敵に、思わず先発を買って出たキングですが、しょせん相手はただの秘書。
いずれもそこそこの力は持っているものの、キングの相手をするにはいかんせん技のキレがいまひとつです。
最後に控える八神に少々手こずったものの、キングはあっさり3人抜きを決め、
結局は危なげなく見事な勝利を飾ったのです。
「フフフ、貴方はやっぱり私の思っていたとおりの人。…気に入りましたわ…」
「…いいねェ、お前みたいな威勢のいいヤツの悲鳴は大好きだよ…」
「フン、減らず口は勝ってから言うんだね」
「…なに、キサマァ…」
「バイスッ!抑えてっ!」
「見たところ、アンタたち、まだ余力が残ってるみたいだからね」
「なんなら今ここできっちりケリをつけてやるさ」
「フフ、威勢のいいこと。でも私たちは敗者。この場は素直に退かせていただきますわ」
「…クックック、次は必ず壊してやるよ…」
「…また逢いましょう。御機嫌よう…」
(…そのままあいつらは倒れた八神をひきずって去っていった…)
「たしかにあいつらの闘いぶりには不審な点があった…」
「実力を隠し…様子を見られていたと言うことか…」
「そしてマキ姉さんの命を奪ったゲーニッツもオロチの者…」
(…ゲーニッツ…やっぱりなんか聞き覚えが…)
「マチュアとバイスの暗躍を見ても分かるとおり、オロチは復活に向けて既に動き出しています」
「わたしたちもそれを手をこまねいて見ているわけにはいかない…」
「マキ姉さんを失い、一人になってしまった今のわたしに、オロチに対抗出来る力はないわ」
「わたしには強く…そしてなにより信頼出来る仲間が必要だったのよ!」
「…なるほど、それがこの大会を開催した真意か…」
「…キングさん…わたしは最初からあなたを狙っていた…」
「…あなたには女性を惹かれさせる不思議な魅力がある…。その周囲は常に華やかだわ…」
「羨ましかった…。妬ましかった…。それはわたしにはないものだったから…」
「いえ、わたしは誰よりもあなた自身に惹かれていたのよ」
「あなたの心を手に入れるため…。ただそのためにだけに今大会を開催した…」
「…そ…そんなバカバカしい動機で…」
「わたしの心の中にはいつもあなたがいた…」
「わたしはずっと幻影を追っていたわ」
「あなたを…、そして美しいサプライズローズの舞いを!」
大粒の涙を流しながらぐっと拳を握るちづる…。なんだか目がイッちゃってきてます。
(…なんかユダ様みたいな事を言ってるッチ…)
(…完璧な自己陶酔型だな…)
(…ああ…またちづるの悪い病気が…)
長い口上に呆れる一同を余所に、ちづるの一人芝居は佳境に入ってきました。
「だけどとうとうわたしはあなたを手に入れることが出来なかった…」
「ふっ、わたしが心から美しいと認めてしまったもの…」
「その前でわたしは無力になる…」
「キングさん…、わたしがただ一人この世で認めた女性…」
振り返ったちづるはとつぜん欲望に血走った目でキングを見つめ…
「えっ!?」
「せめてッ!その胸の中でえええええええええっ…」
両手を広げたままキングに向かってものすごい勢いで駆け寄ってきました。
「う…う…うわああああああああああああ!」
本能から来る恐怖を感じ、思わずサイレントフラッシュを繰り出すキング…。
まともにアゴを打ち抜かれたちづるは彼方上空へと吹き飛び、星になりました…。
「ともあれ、わたしたちに残された時間は(ちづるの長話のせいで)少ないわ…」
「ユリさんの力を封じているわたしの零技の礎…」
「そしてマキ姉さんを実体化させているわたしの三籟の布陣…」
「わたしたちの術が効力を失うまでに瀕死のあなたたちを屠ることが出来るか…」
「それともわたしたちが最後まで立っていられるかってわけだな。面白い。乗らせてもらうよ」
不敵に笑い、拳を構え直すキング。
「わたしは瀕死でもなんでもないッチ」
そして胴着の帯を締め直すユリ。
「残りのラウンドタイムは…と。ふーん、あと…たったの20秒足らずか…」
「これがあんた達の技の効力が切れるタイムリミットってわけだ」
「そうですね。互いに残る力を振り絞り、最後の一撃で勝負を付けましょう…」
「ああ…。守るなんてハナから考えちゃいない。きっちり白黒付けてみせるよ!」
「ユリさん…、お相手いたします。力を封じたハンデはあれど、あなたの力は決して侮りません」
「わたしの奥義をつくして全力でいかせていただきます」
「フフン…、ちづるさんじゃ弱すぎてわたしの相手にはならないけど…」
「クッ、何ですって!」
「お姉さんの方はちょっとは歯ごたえがありそうだッチ」
「わたしも絶対にお姉さまは譲れない!渡すわけにはいかないの!」
「ちづる…、わたしたちも決着を付けよう…」
「おまえの行動原理には理解しがたいものがあるが…」
「ともかくわたしを高く買ってくれていることには礼を言うよ」
「おまえの期待を裏切らないためにもベストをつくそう」
「フッ、わたしにはやはり力ずくで手に入れることしか出来ない」
「必ずあなたを屈服させその心を手に入れてみせるわ」
「さあ、はじめましょうか!」
「おおおおおお!」
「断つっ!…えっ!?」
最後の攻防…。
ダッシュで懐に飛び込んできたキングを百活・天神の理で迎撃しようとしたちづるですが、
確かにキングを捉えたはずのちづるの対空技を、なんとキングはバック転でかわしてしまいました。
キングはダッシュでギリギリまで懐に潜り込むことでちづるの天神の理を誘い、
刹那の見切りで’94バージョンの無敵イリュージョンダンスを発動…。
ちづるの攻撃をスカらせることに成功したのです。
「きゃああああああああ!」
対空技をかわされ、無防備な姿をさらすちづるに打ち込まれるイリュージョンダンスの乱打。
そして…勝敗は付きました…。
ギリギリの勝利にへたり込むキングにゆっくりとユリが歩み寄ってきます。
「ユリ…お前も勝ったか」
「いえ…お姉さまがちづるさんを倒したから…」
「そうか。ちづるの術が解けて…」
「ええ…マキさんは消滅してしまいました」
「たぶん…鏡の中に戻ったのでしょう」
「ユリ…」
「はい…」
「お前が来てくれなかったらわたしは間違いなく敗れていた…」
「そんな…」
「ありがとう…。あなたがいてくれて本当に良かった。愛しているわ、祐巳…じゃなくてユリ…」
「わたしも…わたしも…お姉さまが一番大好きです!」
「祐巳…じゃなくてユリ!」
「お姉さまー!」
思わずお姉さまの胸に飛び込む祐巳…じゃなくてユリであった…。
姦じゃなくて完
次回予告です↓
キング「えっ、次回なんてあるの?」
ちづる「ふふん、あるせいで今回が長かったのよ」
ちづる「マチュア&バイスの女オロチが回想でちらっと出てたでしょ」
キング「ああ、あれは唐突だったなあ。前回までは全く記憶になかった闘いなんだが…」
ちづる「…というわけで次は本当に最終章…。’97のオロチ編です」
ちづる「昨日の敵は今日の友…という格闘マンガの法則に則り…」
ちづる「次回からわたしとキングさんのドリームタッグが大活躍!」
キング「えー、わたしは嫌だよ?そんなの」
ちづる「え…」
キング「だってわたしはあんたのことあんまり好きじゃない…つーかぶっちゃけ嫌いだし…」
ちづる「そ…そんな…」
ユリ「そうですよー。ちづるさんみたいなダメな子はわたしたちのチームには必要ないんですー!」
ちづる「…ひ…ひどい…」
キング「…まあ、そういうことだ。悪いね、ちづる」
ちづる「…う…う…」
ユリ「あっちいけっ!イーだ!」
ちづる「う…うわーーーーーーーーーーん!マキねえさーん!舞ー!」
キング「あーあ、行っちゃった…。ふふ…なかなかからかい甲斐のあるやつだね」
ユリ「そうですね。思ってたよりずいぶんおちゃめな人です」
ユリ「あ…そうそう、お姉さま」
キング「ン…何?」
ユリ「ちづるさん達が言ってたゲーニッツって人なんですけど…」
キング「ああ…例のオロチの男だね。…マキさんの命を奪ったという…」
ユリ「そうです。どっかで聞いた名前だったと思ってたんですけど…」
キング「何か知ってるのかい?」
ユリ「ええ…実は…」
キング「実は…?」
ユリ「エヘヘ…。その人って多分わたし、殺っちゃってます…」
キング「えッ!?エエエェェェェッ!?」
ユリ「いや、お姉さまのピンチに慌ててお面付けてスタジアムに入ろうかと思ったら…」
ユリ「入り口のところになんかでっかい神父のおじさんがつったって通せんぼしてて…」
ユリ「わたしもお姉さまのことで気が立ってたもんだから…つい邪魔くさくって…」
キング「…つい邪魔くさくって…?」
ユリ「お父さんのマネして飛燕鳳凰脚の後に覇王翔吼拳を1ダースぐらい…」
キング(…タクマはMAXでも3発しか撃ってないぞ…)
ユリ「その人が自分のことをゲーニッツとか言ってたような気が…します…」
ユリ「ちゃんと聞いてなかったからよく覚えてないんですけど…」
キング「あとでちづるとマキさんに確認してみよう…。でもたぶんそいつがゲーニッツだろうな…」
ユリ「最後、なんか動かなくなってたからちょっと心配してたんですけど…」
ユリ「なーんだ。悪い人だったんですね。心配して損しちゃったッチ。テヘっ」
キング(………)
キング(…最後の最後までこんないい加減なオチでいいのだろうか…)
次回、魔法の性奴隷 ひみつのキングちゃん
「ぶるーまりーさんのひみつ」
期待せず待てッ!!