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第三楽章  ゴラム(スメアゴル) Gollum (Smeagol)



 さぁて、第三楽章なんだけれども、一番難しい人物の解説なので、うまく書けるかどうか不安なのだ。 ところで私、人物と書いたよね。 でも旅の仲間に この名前はなかった。 では敵か、それとも味方か、どっちなんだ?  まぁ、少なくとも、一つの楽章を与えられるくらい、非常に重要なキャラクターであることには間違いないのだが・・・

ゴクリ(ゴラム)

Gollum 彼の本名はスメアゴル(Smeagol)という。 彼はいつもゴクリ、ゴクリと のどを鳴らしているので、ついたあだ名がゴクリ(120KB)なのである。 辞書を見ても載っていないので確認できないけれど、たぶんイギリスでは このことをゴラム(gollum)と言うのでしょう。 ということで、これ以降は彼のことを``ゴクリ''と呼ぶことにします。 だがしかし、彼は自分のことを「わしら」と言い、ただ一つの指輪のことを「いとしいしと」(いとしいひと)と言っている。

一つの指輪

 ゴクリは指輪所持者であった。 しかし実はこの指輪、最初は冥王サウロンのものだった。 サウロンはエルフの金銀細工師たちに力の指輪を造らせ、自分はオロドルイン(サウロンの本拠地、モルドール国にある火の山)で一つの指輪を鍛えた。 エルフは、この一つの指輪が彼らの造ったすべての指輪を統べるものだと気づいた。 エルフたちの三つの指輪は隠され、エルフとサウロンの戦いが始まる。 そして2000年近くにわたる戦いの末にサウロンは倒され、指輪は外された(第二紀の終わり)。

 指輪を奪った一行が旅をしているときに敵の兵隊たちによる襲撃を受け、一つの指輪は大河の中に没してしまった。 敵も味方も一つの指輪を探したが見つからず、2000年以上の時がたった。 この頃、敵の勢力が強くなったことに気づき、サウロンが復活したのではないかと感じ始めた。 そんな中、ストゥア族のデアゴルが一つの指輪を見つけるが、同族のスメアゴルが彼を殺害し、指輪を奪う。 ところでこのストゥア族、ホビットたちと祖先を同じくするものらしいのだ。

 指輪を奪ったスメアゴルは洞窟に隠れ、洞窟内にある湖の魚を生で食べて長いこと生きていた。 そして誰かが迷い込んできたとき、指輪をはめて姿を消し、襲いかかっては喰らっていた。 そう、今初めて明かすけれど、この指輪をはめると、その姿が消えるのだ。 しかし、フロドの養父であるビルボが洞窟に迷い込んだとき、大切にしていた一つの指輪を奪ってしまった。 そうして彼は奪われた指輪を探しに中つ国を徘徊することになる。

エミン・ムイルの悲劇

 旅の仲間たちは、ロリアンを出発してから誰かにつけられていることを感じ始めていた。 そう、後をつけているのはゴクリである。 しかし彼は非常に用心深いので、一定の距離を置いて追いかけている。

 旅の一行がエミン・ムイルに着いたとき、悲劇が起こった。 人間のボロミアが「指輪の力で敵を倒そう」とフロドに詰め寄り、フロドは逃げた。 ちょうどそのとき敵が現れてボロミアが討たれ、一行は離ればなれになる。

 指輪には暗い力があり、よほど強靱な精神力を持った者でなければ、くらやみのなかにつなぎとめられてしまう。 指輪の力があれば何とかなると考えたボロミアを責めることはできないだろう(私は、人間の弱さというものを見せつけられた気がした)。 フロドは「このままでは皆に迷惑がかかる」と、一人で指輪を始末しに行くことを決めた。 しかし、旦那(フロド)の心を知るサムが それに気づき、旅のお供をする。 そしてゴクリも その後をつけていく・・・・・・

第三楽章

 第三楽章では痩せこけて奇怪な生き物であるゴクリが描写され、いやしくて用心深い存在がソプラノ・サックスで表される。 孤独な洞窟生活が長かったせいか、独り言を言い、「ス、ス」と声を立てて舌をもつれさせ、鼻を鳴らして忍び笑いをする。 彼は みじめで意地が悪く、自分が大事にしていたいとしいしと(いとしいひと=指輪)を取り戻す執念だけで生きている。

 さて、フロドとサムがエミン・ムイルの荒れた斜面を下っているところで、再びゴクリの気配がした。 二人はゴクリを捕まえようと、岩陰に隠れた。 ゴクリは岩の斜面に吸い付くようにして降りてきている。
「いてて、ス、ス、ス! 気いつけろ、いとしいしと! 急がば、まわれ。 わしら、首根っこ折るようなしどいことしちゃなんねえぞ、いとしいしと、なんねえとも、いとしい---ゴクリ!」 「どこだ、どこだ、いとしいしと、どこだよ、いとしいしと? わしらのだよ、わしら、ほしいんだよ。 どろぼう、どろぼう、きたねえちびのどろぼうめ、いとしいしとを持ってどこに行った? ちくしょうめ! 憎んでやる。」

 ゴクリは器用に岩場を降りてきたが、ついに足掛かりとなるものがなくなり、フロドたちが待ち伏せているところに墜落してしまった。 二人はゴクリを捕まえようとしたが、思いのほかゴクリは素早かった。 サムの背後に回り込み、体を締め上げた。 しかし、フロドの剣(つらぬき丸)により、結局は捕らえられる(85KB)ことになる。
「しどいことしないでくれよう! わしらをしどいめにあわせねえでくれよう、いとしいしと? このしとたち、いいホビットさんたちだよ、わしらにしどいことしねえかよ? わしら、しどいことしるつもりなかった。 だのにこいつらが跳びかかってきたのよ。 かわいそうなねずみに跳びかかる猫みてえによ、いとしいしと。 わしらとてもさびしいのよ、ゴクリ。 こいつらに親切にしてやろうよ。 とても親切によ。 こいつらが親切にしてくれればだよ、そうよ、そうだよ。」

 フロドは、かつて「ゴクリは死んだっていいやつです。」と言ったとき、 「死んだっていいとな! たぶんそうかもしれぬ。 生きている者の多数は死んだっていいやつじゃ。 そして死ぬる者の中には生きていてほしい者がおる。 あんたは死者に命を与えられるか? もしできないのなら、正義の名においてそうそうせっかちに死の判定を下すものではない。」 と応えたガンダルフの一言を思い出していた。
「われわれはお前を殺したりはせぬ。 だが、お前はわれわれと一緒に来なければならぬ。 それだけのことだ。」
「いいホビットね! わしらこのしとたちと一緒に行くよ。 暗いところでも安全な道見つけてやるよ。 そうだよ、見つけてやるよ。」

 こうしてフロドとサムとゴクリによる奇妙な三人の旅が始まる。 フロドはモルドールへの道案内のために、ゴクリは隙あらば指輪を取り戻そうとするために。

 そして三人による旅の最終地は、冥王サウロンの本拠地、モルドール国にある火の山である。 この火の山、オロドルインで鍛えた指輪はオロドルインでしか滅ぼすことはできない。 結局、指輪は・・・・・・  いや、言えない。 これは推理小説ではないのだが、それでもやっぱり言えない。 この曲の最後はたぶんあの場面を指していると思うのだが、どうしても言えない。
「いとしい、いとしい、いとしい!」
「いとしいしと! ああ、いとしいしと!
いとしいしとおお

 えっ、「これのどこが三楽章の説明なんだ!」って?  ほら、トランペットとホルンによる細かい音の刻みはあの場面だし、捕まった後のみじめなゴクリはソプラノ・サックスとトロンボーンだし、最後は・・・ 説明できないけどアレだしさぁ。


 最後に、おまけの画像をつけておきましょう。 これは別画面には出ないようにしてありますので、見た後はブラウザのボタンで戻って下さいな。

王たちの柱、アルゴナス(エミン・ムイルの入口:76KB)

死者の沼地を行く(74KB)

今ならいとしいしとを・・・(115KB)

モルドールの城門(118KB)


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