KSB logo
KSB非公式ホームページ

第一楽章  ガンダルフ(魔法使い) Gandalf (The Wizard)



 まず最初は、旅の仲間たちが頼りにしている指導者、灰色のガンダルフについて書くことにしましょう。


ガンダルフとは何者?

Gandalf  第零楽章の中で、ガンダルフを人間として紹介したよね。 しかし、どうも人間ではなさそうなんだ。 「指輪物語」の補足の中に次のことが書かれてある。

 一千年くらい経った頃であろうか、最初の影が緑森大森林をかげらせた頃、イスタリすなわち魔法使いたちが中つ国に現れた。 後世になって伝えられるところでは、かれらはさい果ての西の地から来た使者であり、サウロンの力に抗し、かれに抵抗する意志を持つ者たちすべてを結び合わせるために遣わされたということである。 しかしかれらはサウロンの力に力をもって対抗することも、あるいは弾圧と恐怖によってエルフや人間を支配しようと試みることも禁じられていた。

 それゆえかれらは人間の姿に身をやつしてやって来た。 といってもかれらは初めから全然若くはなく、年をとるのも緩慢であった。 そして知的にも技能的にも様々な能力を持っていた。 (以下、略)

 ということなのだ。 ちなみに一千年とは第三紀が始まってから一千年であり、「指輪物語」そのものは第三紀末である三千年以降の話だから、ガンダルフの年齢は少なくとも二千歳以上ということになる。 まあ、ほとんどのエルフたちはもっと前から生まれていたから、驚くには当たらないかもしれないけれども。


魔法使いガンダルフ

 では、曲の説明に入ろう。 おっと その前に、上の絵をクリックしてちょうだい。 凛々(りり)しいお姿のガンダルフ爺さまの絵(140KB)が、例によって別画面で現れます。

 第一楽章は物語の内容を表すと言うよりも、魔法使いガンダルフの音楽による(この絵のような)ポートレートという感じかな。

 金管のファンファーレによって「指輪物語」の幕が上がる。 そしてこのテーマが「指輪物語」そのもののメイン・テーマとなっている。 ファンファーレに続いてバスーン、ユーフォによる``魔法使いガンダルフ''のテーマがホ短調でゆったりと流れていく。 この旋律はトランペットに受け継がれるけれど、調も和音の動きも全く同じなんだ。 ところがトロンボーンを中心とした低音に旋律が渡されるとき、そのテーマが長調(ホ長調)に変わる。 そこでは短いファンファーレも鳴り響くのだ。 前者を知恵に秀でた思慮深いガンダルフとすれば、後者は指導者として信頼を受けている、誇り高きガンダルフを表しているのだろうか。

 曲はいきなりアレグロ・ヴィヴァーチェになり、灰色の魔法使いに降りかかる、予期できない運命を暗示するような場面になる。 彼は美しい灰色の愛馬、飛蔭(とびかげ:Shadowfax)にまたがり、厳しい戦いの旅に出る。 そして馬を止め、暗きこの世の先を見つめる姿は堂々としている。 そう、別画面の絵、この凛々しい姿がコラールで表現されている(しかし、なぜか不吉ながら、レクイエムの様にも聞こえてしまうんだなぁ)。

 さて、ガンダルフのテーマが再び流れてきた。 しかし、今度は低音から高音へと、音がどんどん上昇していく。 これはガンダルフの何を表現しているのだろうか・・・・・・
そして曲は、最初に出てきたファンファーレが再び現れ、第一楽章の終わりとなる。


 ということなんだけれども、一つだけ分からないことがある。 馬を駆けさせるときには鞭(むち)が必要と言うことで、この曲でも飛蔭にまたがって疾走する場面には鞭の音が使われている。 だがしかし、物語の中で``飛蔭は鞭を打つ必要がない''と書かれているのだ。

 飛蔭は乗っている人を疲れさせない。 つまり、背中の上下動は大きくないんだ。 しかも彼は、三日三晩走り続けることができる。 さらに、どんな早い馬で追いかけても、追いつかないスピードで駆け続けるんだ。
 こんな名馬に鞭を打つ必要は全くないのだよ。 作曲者、これを読み落としたのか、忘れたのか、はてまた違う意味で鞭の音を入れたのか・・・・


一駅前へ   始発駅へ