その昔、一杯のかけそばなる話があった。 映画化もされ、ご記憶の方も多いと思われるので、その内容については省略することにしよう。 さて、今回の主役は長距離ドライブが好きな人物である。 彼は車で津軽海峡さえも渡ってしまう(もちろんフェリーを使ってだよ)ので、仮の名前を渡としておこう。 「一杯のかけそば」は大晦日の話であったが、「一杯の水」も年末に近い、クリスマス・イブの話である。
彼女いない歴○○年の渡氏は、ある店で酒を飲んでいた。 しかし、この日はクリスマス・イブの夜である。 何組ものカップルが向かいあって楽しそうに話をしている。 いたたまれなくなった渡氏は店を変えることにした。
次の店も結果は見えている。 そう、やはり店内はカップルで溢れかえっていたのだ。 寂しさを感じた渡氏は男でもいいから話がしたいと思い、歩いてO(オー)氏のアパートへ向かっていった。 酒を飲んではいたが心は寒く、そして夜道も寒い。 彼は鼻水をすすりながら一人寂しく歩いていた。 やがてO氏のアパートが見えてきた。 彼は部屋の明かりを確認するとホッとため息をつき、「これで暖かい部屋で(たとえ相手が男であろうとも)話ができる」と思った。 そして玄関のチャイムを鳴らす・・・・・・
O氏がでてきて戸を開けた。 渡氏はO氏を見てホツとしたが、靴を脱ごうとして下を向いたとき、O氏の彼女の靴が目に止まった。 そう、クリスマス・イブなのである。 別にホテルに行ったり飲みに行ったりすることだけが、この日のカップルの過ごし方ではない。 彼は目の前が真っ暗になり、ただこう言うより他はなかったのだ。
『あのぅー、すいませんが、水を一杯だけ頂けますか』
教訓: クリスマス・イブの日に、彼女がいるって分かっている人と遊ぼうなんて考えちゃダメよ。
補足: O氏まで仮名(かめい)にすることはないのだが、O君と書くと普段 我々が呼んでいるあだ名とほとんど変わりがないしぃ・・・
ちなみに このO氏、今では上記の彼女と結婚して幸せに暮らしている。
そして渡氏は今までの悪行三昧がたたり、札幌へ左遷(人によっては栄転とも言うけど)されてしまったのだ。