Document

Input-Output Analysis「産業連関分析の覚え書き」



2. 国際産業連関分析
2.2 競争輸入型
2.2.6 通貨換算

 ここまで、各国通貨の違いについて特に触れずに来たが、当然統一価格(例えば米ドル)で表示されているものとしての議論である。実際には、各国表は各国の通貨で表示されており、この変換を施す必要がある。
 さらに、輸出入品目に関しては IO、貿易統計それぞれに扱い方が異なるので、これを考慮する必要がある。

輸出国生産者価格 --- 輸出国IOの輸出額
    ↓ +商業マージン及び国内貨物運賃
購入者価格 = FOB (Free on Board)価格 --- 貿易統計の輸出額
    ↓ +国際貨物運賃及び保険料
CIF (Custom Insurance and Freight) 価格 --- 貿易統計の輸入額
    ↓ +関税及び輸入品商品税
(≒輸入国生産者価格)
    ↓ (通貨換算)…換算レートが不安定
輸入国生産者価格 --- 輸入国 IO の輸入額


 実際には、さらに輸送中の欠損、加工による別の財への転換、輸出から輸入のタイムラグ等の複雑な要因が絡んでくることになる。

 しかしながら、これら全てを網羅するのは不可能なため、入口(輸出国IOの輸出額)と出口(輸入国IOの輸入額)で比をとり、便宜的に換算係数を作成する。
I 国表における Q 国からの輸入 MQI 及び Q 国表における I 国への輸出 EQI を次のように表す。
MQI
= TQI
=
MQI1
·
·
·
MQIn
EQI =
EQI1
·
·
·
EQIn
  (Q = 1,...,Z かつ Q ≠ I)
(2.2.37)
さらに、 I 国輸入 MQI ( I 国通貨 ) から Q 国輸出 EQI ( Q 国通貨 ) への換算係数行列を次のように定義する。
^
C
QI =
( EQI1 / MQI1 )0
·  
 · 
  ·
0( EQIn / MQIn )
(2.2.38)
このとき、EQI は次のように与えられる。
E QI
= ^
C
QI
M QI
= ^
C
QI
T QI
(2.2.39)
(2.2.28)式より
E I
= ΣQ ( ^
C
IQ
· TIQ
) + TIR
= ΣQ { ^
C
IQ
· ^
T
IQ
· ( A Q
· X Q
+ Y Q
) } + T IR
= ΣQ { ^
T
cIQ
· ( A Q
· X Q
+ Y Q
) } + T IR
ただし、 ^
T
cIQ
= ^
C
IQ
· ^
T
IQ
  (Q = 1,...,Z かつ Q ≠ I)
(2.2.40)
(2.2.29)式より
E
=
0
^
T
c12
· · ·
^
T
c1Z
^
T
c21
·  
 · 
  ·
·  
 · 
  ·
·
·
·
·
·
·
·  
 · 
  ·
·  
 · 
  ·
^
T
c(Z-1)Z
^
T
cZ1
· · ·
^
T
cZ(Z-1)
0
· (A · X + Y) + Er
(2.2.41)
となる。ここで、
T =
I - ^
M
1
^
T
c12
· · ·
^
T
c1Z
^
T
c21
·  
 · 
  ·
·  
 · 
  ·
·
·
·
·
·
·
·  
 · 
  ·
·  
 · 
  ·
^
T
c(Z-1)Z
^
T
cZ1
· · ·
^
T
cZ(Z-1)
I - ^
M
Z
(2.2.42)
とおけば、(2.2.30)式と同様のバランス式が得られる。
X = ( T - ^
T
r
) · A · X + ( T - ^
T
r
) · Y + E r
(2.2.30)'


参考文献
  1. 総務庁『平成2年産業連関表 総合解説編』、平成6年3月
  2. 宮沢健一著『産業連関分析入門』、日経文庫、日本経済新聞社
  3. 新飯田宏著『産業連関分析入門』、東洋経済新報社
  4. 清水雅彦他『多国広域経済圏における「経済と環境」の相互依存関係』日本学術研究会未来開拓推進事業Discussion PaperNo.7,平成10年
  5. 吉岡完治他『環境分析用産業連関表』慶應大学産業研究所環境問題分析グループ,1996.3.31


< Prev Document Top