「風のシルフィード」は、週間少年マガジンに連載されていた本島幸久氏が描いた競馬漫画です。
この作品は10年以上前のものですが、今見ても楽しめる作品であると自分は思います。
この漫画が自分に与えた影響は大きく、競馬ゲームをプレイすると関連の名前を馬につけてしまうほどです。
初めて実験的にFLASHアニメの題材がこれだったのも、それが大きいといえます。
漫画レビュー第一弾にふさわしいと思いますので、早速進めていきたいと思います。
この作品は、主人公・森川 駿(もりかわ はやお)の父が経営する森川牧場で一頭の馬が誕生するところから始まります。
しかしそれは競走馬として活躍した母馬の犠牲の上に立ったもので、なおかつその仔馬の脚には競走馬として決定的なハンデを背負ったものだったです。
そこから駿とその仔馬”シルフィード”の戦いがスタートします。
彼らの前には強力なライバルや困難な壁が立ちふさがります。
中でも天才騎手と呼ばれる夕貴潤(ゆうき じゅん)、優秀な血統とセンスを見込まれ三億円の値で購入された馬”マキシマム”、そして
そのオーナーである馬を見る天才・岡恭一郎ら”マキシマム”陣営との身を削るような対決は、やはりこの作品の内容を深く濃いものにしています。
ライバルとの戦いを通じて駿とシルフィードは成長していきますが、その度に彼らを困難が襲うのですが、持ち前の努力と根性で乗り越えていって
栄光を掴むという図式はまさに少年漫画の王道ともいえるものです。
<必殺技>
シルフィードには脅威の武器を持っています。それはレース終盤に発揮する奇跡の末脚『白い稲妻』です。
それが少年漫画の王道である”逆転勝利”とマッチし、強敵やハンデを乗り越えて追い込んだシルフィードが勝利すると読者は爽快感を味わうことが出来ます。
競馬に必殺技を盛り込んだのは、非常に作品自体を魅力的なものにした点だと思います。
<特徴づける”二つ名”(あだ名)>
作中の馬名などを考慮すると、おそらくガンダムの影響を受けていると思われますが、馬主・騎手・馬・そして必殺技には
たいてい”あだ名”がついています。これがそれぞれの特徴をわかりやすいものにしていて、感情移入しやすいものにしています。
<洗練されていない絵>
後半はずいぶん落ち着きますが、それまでは絵が安定せず非常に雑で汚く見える点です。
馬体のバランスも悪く、馬というよりは豚に近い時も多く存在します。
手にとって一巻から読んでみた時に離れてしまう可能性があるように思えます。
これは仕方ないことではありますが、そこで読者が逃げてしまうのは非常にもったいないです。
<競馬界の状況が今と違う>
連載当時と現在の競馬界での常識が大幅に変わってしまっているため、今読むと違和感があります。
レース名やスケジュールなどはもちろんそうですが、近年の日本馬の飛躍により当時は難しいと思われた海外GI制覇や奇跡のレコードタイムは現在は過去のものです。
もう10年以上前の作品ですので仕方ない話ですが、今を知る人にとっては時代のずれを感じるかもしれません。
気になる点で挙げた部分が気にせず「ああ、当時は困難だったこともシルフィードに出てくる馬や人のように乗り越えていったんだな。」
と感じられるのであれば、違和感なく読み進められる良作だと思います。
熱くて泣ける漫画が読みたいとお考えでしたら、自分はこの作品をお勧めします。
展開や設定などはロボットアニメやゲームが好きな方にも受け入れやすいものだと思いますので、機会があればぜひ読んでみてください。
なお、この作品には続編『蒼き神話マルス』という作品もあります。シルフィード誕生秘話やシルフィードに登場した人物も多数出てますので
『風のシルフィード』を読み終わった後に続けて読むことをお薦めします。(この作品については後日レビューいたします。)
『白い稲妻』の雰囲気を味わえるという意味でお薦めなのは騎手のシミュレーションゲーム”ギャロップレーサー”シリーズです。 一時期は製作側がライバルを意識しすぎて迷走していたようですが、独自のラインを取り戻しつつあります。