「鋼の錬金術師」は荒川弘氏が月刊少年ガンガンで連載中の人気漫画。
TBS系列でTVアニメになり、漫画とは独自の路線を進みながらも、大人気を博しました。
この作品は続編を意識した形で終了したTVアニメの続きを描いた劇場版です。
非常に多くのファンに望まれたこの作品をレビューしてみたいと思います。
オープニングはエドとアルのエルリック兄弟が見慣れた姿で登場。この作品の中で一番”ハガレンらしい”とも言える場面。
キャラも生き生きしているような印象です。ここではおなじみの「等価交換」とあの「扉」が出てきます。
敵は作中にありがちな研究者という感じの男を配し、ある意味「ハガレン」の短い紹介という位置づけでしょう。
これで作品自体を知らない人がわかるかどうかは微妙ですが、少なくともキーワードを散りばめつつ、ファンにも懐かしい
という気持ちにさせる効果は充分だと思います。
この作品のテーマソング はL'Arc-en-Ciel-Site(ラルクアンシエル)の「Link」。
TVアニメ版ではOP「READY STEADY GO」を唄っていた彼らですが、非常に作品にあった
彼ららしい楽曲で個人的に好きです。
それとリンクするのは過去のDVDジャケットを元に加工した映像で、これが結構かっこいい
です。シンプルに見せながら結構複雑という感じは、作品の特徴をうまく現していると思います。
TVアニメの時点でも高いレベルで安定していましたが、この劇場版はさらにレベルが上がっている印象です。
スピード感も充分にあり、この点に関しては文句はありません。暗い場面が多く、見づらいのが気になった程度です。
さすがBONES(ボンズ)といったところです。
背景も実に美しく、世界観をうまく表現しています。
これがこの作品を語る上で最大のポイントでしょう。「従来の世界」と「不穏な動きが高まる1923年ドイツ」という
2つの世界がリンクしているという部分が肝になっています。TVアニメ後半でもこれについては出てきましたが、今回は
どちらというとドイツを前面に押し出し、その世界観を表現することに力を注いでいるように感じます。
そしてドイツの世界では、死んでしまったキャラたち(ヒューズやキング・ブラッドレイ)が違う立場で登場します。
周りを取り巻く環境が違うため、以前出ていた彼らとは印象が変わりますが、ファンには嬉しいところかと。
ただ「あれはヒューズじゃない!」と思う方もいらっしゃるとは思います。そういう意味では中途半端な印象も受けます。
全体としてのクオリティは非常に高いものがありますが、世界の比重を「ドイツ」に重く置いたことで、作品の良さである
ファンタジックで朗らかな部分が薄らいでしまったと感じられたのが最も残念でした。
なぜそこまであの時代のドイツにこだわっていたのかが、イマイチ釈然としません。
普段の世界が出ると、安心するような時もありました。
作品のテイストの一つである残酷なシーンも相変わらずですが、それほど必要性を感じられませんでした。
最終的な流れもなんというかドイツ側に出た新キャラにあまり共感ができないというか、すごくキャラ造形が薄いというか
生きていない印象を受けました。もちろん最後の敵についても同様です。そのため作品全体がどうにもスッキリしない。
観ていて、「尺が足りないのかなあ?」と感じることも少なくなかったです。
また最後のオチもハッピーエンドなのですが、どうにも納得がいかないものでした。
あの兄弟にとってはいいだろうけど・・・という感じはあるのですが。
TVアニメの時とある意味変わらない印象です。スッキリ楽しませないというか、必ず裏切りがあるというか・・・ 絵や声優の演技については非常に高いレベルで、その点を重視するならば、大満足です。 制作側がこだわりすぎた部分がディープなために、受け入れにくいようになってしまったという印象を受けました。 ですがTVシリーズを観た方は、ぜひその最後を見届けて欲しいとは思います。 原作ファンも「別のハガレン」として観るのも充分ありですね。
原作のイラスト集
・鋼の錬金術師 公式サイト:SONYミュージックによるアニメ公式サイト。
・劇場版 鋼の錬金術師公式サイト:劇場版の公式サイト。
・ハガレンweb研究所:ガンガンの公式サイトです。
・鋼の錬金術師 予告編ライブラリー:TVアニメ版の予告編を集めたサイト。
・ハガレンゲームウェブ:BANDAIによるゲーム公式サイト。