このゲームの目的は、世界樹の下に展開する迷宮を探索するというシンプルなものです。
一応シナリオはありますが、プレイ中にそれほど入りこんでこないのです。
近年ではシナリオ重視で主人公などのキャラがしゃべりまくってシナリオが進むきらいがありますが、今作ではそれを排除しています。
主人公はキャラメイクで作成し、キャラ自体は一切しゃべりません。
まさに初期のウィザードリィ(以下ウィズ)を髣髴させます。
また町の人々も話をしている風に受け答えするので、行間を読む楽しみも味わえます。
そういう意味ではゲームブックやテーブルトークRPGを思わせる部分も多く、
最近の主張しすぎる主人公に辟易しているプレイヤーにとっては懐かしい印象を受けるかも。
プレイしてみて、まず感じたのが”キャラクター作成”がウィズよりもシンプルな点。
ウィズだとキャラメイキングには運要素でパラメータのポイントが上下します。
ですが、この世界樹の迷宮ではすでに初期パラメータは決定しており、運要素はありません。
選べるのは名前と職業、そして各職業のグラフィックを4つから選択することだけです。
キャラクターの設定をあれこれつけすぎている、いわば他人から押しつけられいないので
逆に作成したキャラに愛着がわくといういい流れを作っています。
個人的にはキャラデザインが狙いすぎていて、気になるところはありますが・・・
比較的無難なグラフィックも用意されているので、それを選べば問題ないでしょう。
ゲーム開始をしてすぐにキャラメイクを済ませてゲームに入れるというスムーズさは、実は予想以上に快適に感じるものであることに気づかされました。
このゲームのキャラの個性は、スキルポイントの割り振りで取得するスキルによって出てきます。
同じ職業では初期パラメータが同じで、レベルアップによって得られるスキルポイントも同じだからです。
そして各職業に用意されているスキルは1人のキャラで全てを取得させることができません。
(たとえスキルポイントボーナスを多くもらえる方法「引退」を使っても)
取得できるスキルの中にはかなり役立つものとたいして効果がないものが存在します。
じゃあ役立つスキルばかり取得すればいいと思われるかもしれませんが、そうなるとスキルポイントが足りない。
その役立つスキルというのも局面によって変わります。
各スキルはあるスキル取得が条件になっているものもあり、ある程度考えて取得していかないと、最後にスキルポイントが足りずに中途半端なキャラになってしまうという難しさもあります。
その微妙に足りない感じが、逆にキャラへの愛着や実験してみるという楽しさを得ることができます。
このゲームではキャラを最大5人で1つのパーティを組む形になります。
本家のウィズでは最大6人な分、少し足りないという印象がより顕著に現れています。
またこの組み合わせのパーティでないとクリアできないということがないので、自由度が非常に高いと言えます。
そういう意味では「少し足りない」という感覚が常にあるので、キャラやパーティを完璧な強さにして楽しむという人には向かない部分かもしれません。
近年難易度が下がっている業界の流れに反して、このゲームの難易度は高い方に位置します。
たとえ最高レベルの70になっていても、通常モンスターに全滅させられることもあります。
また一度は倒せた敵でも、運が悪ければ・・・ということも多々あります。
通常このゲームでは戦闘に入るのはドラクエのようなエンカウント方式で、敵が近づいているというのはわかりません。
ですが強力な敵F.O.Eだけは、ロマンシング・サガ1のようにプレイヤーの動きに合わせて動き、場合によっては近づいてきます。
そういった方式を2つとも採用しているのは、現代風でなおかつ”他の敵とは違う”という感覚を出す演出に一役買っています。
場合によっては理不尽なまでのダメージを受けて全滅することも多く、罠も多く潜んでいます。
ある意味このゲームをクリアした方で、全滅したことがないということはないだろうと思うほどです。
ですが、それもある程度準備しておけば回避できることも可能です。
そこらへんのさじ加減が非常にうまく、攻略法も謎の一つという形になるのでTryしてみようという気持ちになります。
BGMはイースやソーサリアンを手がけた古代祐三氏。
曲のイメージも過去を思い起こさせるものも多く、非常に美しいサウンドとともにこのゲームを彩ります。
様々な雰囲気に合わせて曲が用意されており、ある場面では鳥肌モノでした。
これもこのゲームを語る上では欠かせない要素と言えます。
このゲームの移動は基本的に3Dダンジョンです。
かつての3DダンジョンRPGはマップをノートに書いてその対策をした方も多いと思います。
それをニンテンドーDSの機能ペンタッチを使って、ゲーム内でマッピングができます。
その作業が意外と楽しく、自分なりの攻略法を書き込むこともできます。
完成したマップを見ると、結構個性が出ますね。
そういう意味では、DSならではの要素といえます。
このゲームは基本的に不満と感じる部分は非常に少ないですが、考えられる不満点を挙げておきます。
1.バグや記述ミスなどが多い
武器・スキルの説明で間違いがあります。また説明書の内容も間違いが多いのは困りました。
攻略本まで間違いだらけというのもすごいですが・・・
バグはあるクエストに集中している感じもしますが、致命的ではないのでまだ救いがありますね。
2.作成キャラ数・所持アイテム数が少ない
これは非常に自由度が高いこのゲームの特性を考えると、本当に残念な部分です。
職業が多いのにも関わらず16人までしかキャラを作成できないため、実験キャラを作りにくいのです。
またアイテムもシナリオアイテムを入れても60までしか持てないのはさすがに少なく、不満が残りました。
3.運の要素が若干強い?
ゲームには運というランダム要素が強く存在しますが、このゲームの場合は少しそれが強いと感じます。
それゆえに運悪く全滅ということも多々見られるシーンです。それが気に入らないと感じる人には向いてないでしょう。
4.インターフェイスが洗練されていない
ゲームの快適度に関わるインターフェイスがまだ洗練されていない印象です。
たとえばギルドのキャラの並び順を変えられなかったり、キャラパラメータを連続で見ることができない、LRボタンの使い方などがどうも使いにくいんですよね。
そこはやはり気になるところ。
ウィザードリィ、女神転生、イース、ソーサリアンというゲームを以前遊んだ人にはシステムやBGMで回顧をうながし、キャラは今風という形で
融合したこの「世界樹の迷宮」は最近の中では不思議な魅力を持つRPGです。
プレイ時間ややりこみ要素もかなり歯ごたえがあります。
「前のRPGはこうだった」と久しぶりにRPGを遊んでいるという感覚が見事に甦りました。
難易度が低いゲームが最近多すぎるというプレイヤーにもおすすめです。
続編の発売を期待しています。
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・世界樹の迷宮公式サイト:メーカーの公式サイトです。
・世界樹の迷宮公式ブログ:製作者裏話が楽しい公式ブログです。
・世界樹の迷宮wiki:困った時に便利なwikiです。