■下のお話はサモンナイト3番外編のストーリーを軸に作られています。
 アティ先生が外の世界に助けを求めたのは、実はサイジェントにいる誓約者、ナツミだった(笑)
 ……という捏造から作られています。折角きたので帰る前に交流を深めてみよう、という、
 その数日の間の設定でのお話です。
















「そんなの簡単だって。キミの兄弟子にお願いすればいいのよ。"協力して"って」
「んな……っ!?」
冗談半分でからかうナツミだが、トリスは何を本気にしたのか、珍しくナツミに喰ってかかった。
「……へぇ〜、じゃあナツミも勿論言えるんでしょうね? ソルに」
「!」
うっ、と詰まる。
まさかそう切り返されると思ってなかったナツミは、声にならない呻きを小さくあげる。
「あれぇ? なによ、ナツミ。さっきの勢いは?」
珍しく形成逆転といいたいところだが、元来の負けず嫌いの性格が災いしてか、 したり顔のトリスを見たナツミは、まるで売り言葉に買い言葉というかの如く叫ぶ。
「モチロンよ! 言えるわよそのくらい!!」
あったり前でしょ、と高らかに笑って。
それはもう意地なのかヤケクソなのか。
ともかく、ナツミはトリスの腕を無理やり引っ掴み、猪突猛進の勢いで恋人の下へと走った。
『え? 私もですか??』と、状況に不釣合いなのんびり口調のアティも連れて。




パートナーとその重要性  - 協力技(?)−



その頃。
そんな女同士の戦い?が展開しているとも知らず、ソル・ネスティ・ウィルの三人は、自分達に起こった出来事の 不思議な関連性について興味深く語り合っていた。 元々探究心が強い三人だ。 盛り上がらない筈もなく、専門用語を激しく飛び交わせ、熱心に各々の見解を書きとめていた。
「不思議なものだね……僕らがあの時オルドレイクを討てなかった事で、こうして君達と出会い、語り合う事が出来た」
「そうだな、あんた達がヤツを生かしてくれていたから俺は存在している。皮肉な話だが感謝しないとな」
「ああ。そしてソルが居なければ誓約者(リンカー)の復活も有り得なかった。無色の野望は食い止められず、僕らも 生きてはいられなかっただろう」
運命という名の皮肉な星の巡り。だが青年達の中に異議を問う者はいない。
数々の苦難はあった。しかしその繋がりがあったからこそ、真に愛しい者に出逢えたのだから。
「そう言ってもらえると助かるよ。先生はそういう事を気にする人だから」
が。
そんな穏やかな空気が流れる中、それをぶち破るようにドタバタとこちらへ向かってくる足音。
ドアを蹴破るかの勢いでなだれ込んできたのは、予想通りの三人娘(?)。
「おい、一体何がどう――――」
「……はぁ…はぁ……」
ネスティのみならず、ソルもウィルすらも絶句した。
ナツミの眼に宿る、不穏の色。
彼女によって連行されたであろう後ろの二人は、声を出す事もままならず、その顔に恐怖の色を浮かべていて。
何かに操られたのではないかという不安が彼の心を過ぎり、ソルは彼女の肩を掴み、乱暴に揺さぶる。
「おい、一体何があったんだ?! ナツ―――」
「ソル……」
「? どうした?」
「ソルはあたしのパートナーだよね…? 何があってもあたしを助けてくれる?」
「何を今更……当然だろ?」
ナツミはその言葉を聞いて安心したのか、俯いていた顔を上げ、声高に叫んだ。

「じゃあ胸、大きくするの手伝って!!」

その場の空気が凍りつく。絶対零度の永久凍土……までとはいかないが。
「 は ?」
とりあえずもう一度。
聞き間違っているに違いない、そうであって欲しいという微かな祈りにも似た願いを込めて聞き返す。
「だから、胸! 大きくするのを手助けして欲しいの!」
一旦口にしてしまえば恥ずかしさも無くなるのだろうか。
開き直ったのか、両手を腰にあて、まるでふんぞり返ったようなナツミに周囲の人間は閉口するしかなかった。 ……ただ一人を除いては。
「で? 一体どこからそんな話になったんだ?」
ふう、と溜め息を一つ。
長い付き合いではないが、ナツミの性格を十分すぎるほど把握しているソルは、おそらくその場の雰囲気に 流されたゆえでの申し出?だろうと予測し、話し始める。
「大体、刺激するだけで大きくなるんなら、とっくにネスティが試してるんじゃないか?」
ソルはこれっぽっちも躊躇する事無く、トリスを指差した。
全員の視線がトリスに集中し、そしてまたソルとナツミに戻る。
「………え? ちょっと、今のどういう意味?!! 皆、どうして納得してるのよ!!」
一呼吸置いてからその意味に気付いたトリスは、一気に顔面を紅潮させ、叫ぶ。
「どうせあたしはちっちゃいわよ〜!」
ネスティはぎゃあぎゃあ子供のように喚くトリスの頭をぽんぽん、と、あやすように撫でた。
「トリス、そんな事をしなくても大きくなる方法があるから心配するな」
「え? 本当! ネス、知ってるの?」
「ああ。ご希望ならパートナーとして協力するが?」
普通ならここで警戒するだろうに、トリスには兄弟子に対しての学習能力が欠如しているのだろうか。 コクコクと激しく頷く妹弟子に、彼はそっと耳打ちする。いたって真剣な顔つきで。
「母親になればいい」
「――― は い?」
「妊娠すれば大きくなるだろう?」
「〜〜〜〜〜〜〜っ、ネスの馬鹿ぁ!! 変態エロ眼鏡!!!」

怒りの矛先がネスティに向いているようなので、ナツミは二人をそっとしておく事にし(責任逃れともいう)、 その様子を唖然と眺めているアティにこっそり尋ねた。
「先生はどうだった? やっぱり刺激すると大きくなるもんなの?」
「ええっ?! な、何ですか、一体……」
「先生は元々大きいから参考にはなりませんよ」
「「…………」」
困惑するアティを助けようと思っての台詞だったのかもしれない。
しかし、実際は二人の関係がたやすく想像出来る深読み可能な言葉。
当事者であるアティもウィルも全く気付いていなかったが。

「……話を振ったのはあたしだけど……なんっか、みんなバカップルだよね…」

(人前で"胸を触れ"って言うお前も、十分その部類に入ってるよ、ナツミ……)
あえて口にはせず、ソルは心の中でそう答えた。


当事者というものは何だかんだいって、自分の事は気づかないものである。



イイワケ。

胸ネタばっかりでごめんなさい……
本当は1P漫画にしようと思ったんですが時間かかりそうなのでSSに。
でも書いてみたら漫画の方が短くてすんだかも…はは。