あなたにサラダ。 〜As melancholy as a sigh〜



「ネスの嘘つき!」
「…一体なんの話だ?」
殴りこみをかけるかのような勢いで部屋に怒鳴り込んで来たトリスに、彼は心底迷惑そうな視線を投げた。
どうせくだらない理由でまた勝手に怒っているのだろう。
しかし。
そう思ったネスティに、彼女は予想外の言葉を発する。

「赤ちゃんはキャベツ畑で生まれた後、コウノトリが運んでくるって言ったクセに!!」

「……は?」

ちなみにネスティが教えたのは、トリスが幼少の…派閥に来て間もない頃の話だ。大きくなれば自然に理解する日が来るだろうと考えての事だったのだが。
…どうやら、この妹弟子はそれを微塵にも疑わず大人になってしまったらしい。
確かに派閥に友達が居なかったのは分かるが、それにしたって、そんなキャベツ云々の話を今の今まで信じているのトリスもどうかと思うのだが。
(まだ信じてたのか…)
ネスティは頭を抱え、溜め息をつく。
まぁ、なんにしても真実が分かったのだ。
多少罵られるくらいは我慢しよう、と、彼がそう考えた時。
トリスは更に爆弾発言をかました。
「アメルに訊いたもん! 赤ちゃんはキャベツじゃなくって、お芋から生まれるんじゃない!!」

あんの芋聖女。

と、ネスティが思ったかどうかは置いといて。
「…トリス、ちょっとこっちに来い…」
更なる頭痛の種がこれ以上増える事を危惧したネスティは、ちょいちょい、と指で彼女を招いた。

ネスティがその後、どんな教育をしたのか。
内容は不明だが、翌日、兄弟子を見つめるトリスの顔は妙に赤かった、という話である。







いいわけ。

日記の小話から再抽出しました。
…こんな小話で申し訳ありません …