はじめの注意。
あまりにばかばかしい話なので
軽〜い気持ちで読める方のみ
お進み下さい。ツッコミ禁(笑)
※兄弟子壊れ度高いです。





























突然の出来事に、トリスは戸惑う以上に恐怖を覚えた。

(どうしよう、どうしよう……)
(怖いよ、ねぇ、助けて……!)

しかし。

「……どうしたんだ、トリス…その姿は…」

人目を避け、涙ながらに走る妹弟子の姿を見つけたネスティ。
よりにもよって、最初に彼に見つかってしまった事が、トリスの運の尽といえる。
制服の裾からのぞく太腿には、いつもの黒いタイツが見えず、素の足で。
しかもそこには赤い液体が付着した跡。
流石の兄弟子も、心の底では猫かわいがりな妹弟子のそんな姿を見て冷静でいられるはずも無く。

(誰が僕のトリスを勝手に傷物に……っ!!!)

「…ちょっと来るんだ、トリス!」
「へ…ね、ネス?!」
怯える彼女の腕を強く掴んで、自分の部屋に引きずり込むのだった。










赤ずきんちゃん気をつけて 〜ネスティの憂鬱〜
for SUMMON NIGHT 2





「………」
ネスティの部屋の中を流れる不穏な空気に、トリスは心中穏やかでない。
というより、今、彼女は兄弟子の心中を察することなど出来ない状況にあった。
早くこの身体をなんとかしなければ。
そればかりが頭をぐるぐる回っており、ネスティが己の格好を見て逆上しているなどと考える余裕もなかったのだ。
体中がきしむ様な痛みを発し、トリスは両腕を抱きしめるような姿勢をとる。
そんな涙に潤むトリスの瞳を見たネスティは、彼女をガバッと、力強く抱きしめた。
「…ね、ネス…?」
「…誰が君をこんな目に……こんな風に他のろくでもない奴に奪われるくらいなら、最初から僕が…っ!!」
「へ…?」
ネスティの意味不明な言葉に、トリスは頭を悩ます暇も無かった。
何故なら、彼が首筋にゆっくりと唇を這わせ始めたからだ。その今まで感じたことの無い、くすぐったさとも異なる不思議な感覚に、トリスは一瞬、眩暈を覚える。
あれよあれよという間に、制服の留め金も外され、止まることを知らない兄弟子の暴走はトリスの思考を真っ白にさせた。
「…や、あ…ちょ、ね、ネスってば…」
「…どんな風に犯られたんだ…?」
鎖骨を舌でなぞりながらネスティは呟く。
「ど、…って、えぇ? 犯ら……ン!い、痛っ!」
服の上から、固く隆起し始めた胸の頂きを挟みこむように、その小ぶりな胸を揉みしだく。
多少荒々しいその愛撫にトリスは顔をしかめたが、もはや彼の暴走は止まらない勢いのようで。
愛しい妹弟子の処女を奪われた怒りは、今まで押さえ込んでいたネスティの想いを嵐の後の下水のように、どろどろと嫉妬という醜い感情を溢れかえらせた。
「さぁ、どうして欲しい…?」
ネスティが耳元で囁くと、トリスから、それまでの戸惑うような表情が薄れた。
泣きそうな笑顔を向け、小さく呟く。
「あのね…ぎゅっ、てしてほしいの……怖いから…」
その台詞に、自分の急いた行動を思い起こし、赤面するネスティだったが、真実は彼に更なる衝撃を与えた。

「あたし…もうすぐ死んじゃうから…死ぬの、やっぱり怖いから…ネスにぎゅってしててもらえば我慢出来ると思うの」

「なん…だって?」

聞き間違いかと思った。
聞き間違いであってほしいと願った。
何故こんな、自分よりはるかに生気の宿った少女が、死などという言葉を口にするのか。

(もしかしてフリップに…?! あのロリコン召喚師…っ!!)

フリップはどちらかというと君を好きなんじゃないかというツッコミはさて置き、考えに考えて、余計に混乱するネスティ。
「僕が…僕が殺してやる…! 君をそんな目に遭わせた奴を…だから、死ぬなんて言うな、トリス!! 君がいなければ、僕は……!」
一世一代の告白とも云える叫びをトリスにぶつけるネスティ。だが、当の彼女はぽかん、と目をぱちくりさせ、首をかしげた。
「誰って……なん………た、イタタ…」
口を開こうとするが、痛みで続かない。
下腹部を押さえ、痛みに顔をしかめるトリスの姿に、ネスティははた、と気付く。彼の融機人としての知識が総動員され、一番考えたくない結論を最有力候補としてはじき出した。
はっきりいって、訊くのが怖い。
ネスティは、慎重に言葉を選び、トリスに尋ねる。
「トリス…まさかその血は…」
「あたし、病気なの…血が、いっぱい出て止まらない病気…きっと体から全部血がなくなって、もうすぐ死んじゃうんだ…」
トリスなりに、ネスティに分かるように説明したつもりだったが、ネスティは瞬間沸騰湯沸し機の如く、顔を赤く染め上げ、例によって例の如く、おきまりの文句を叫んだ。


「君は…っ、馬鹿か―――――― っ!!」


兄弟子の形相にビクっと身体を震わせるトリス。
開いた口が塞がらないのを通り越し、ネスティから力は抜け、ぐったりと疲れてしまった。
トリスが他の誰かに強姦されたかと勘違いし、暴走した挙句、告白までしたのに「実は生理でした」というオチ。
しかもその告白は伝わっていないときた。
これではネスティでなくたって叫びたくなるというものだ。
「大体、君は……」
ネスティがトリスに "女性の体について" までも教えなくてはならないのか、と、溜息をついた、その時。

「どうしたんじゃ、ネスティ。大きな声を出し…………」


乱れた着衣。
足に付着した赤い跡。
涙に潤んだ瞳。
肩を掴まれ、怯える仕草。

それに加えて、男(ネスティ)の部屋。


このネスティにとって圧倒的に不利な状況を、養父ラウルが目撃したらどうなるであろうか。
まぁ、どうなるもなにも、そこに入ってきて硬直している人物こそが、ラウル、その人なのだが。
しばしの沈黙の後、ラウルは言った。

「ネス…過ぎてしまったことを言ってももう仕方がないが…そういう事は一人前になってからにしてほしかったのぉ…ホッホッホッ」

そういって静かに立ち去ろうとするラウルの後ろ姿に、急激な老いを感じる二人。
父さんではなく、おじいさんになる覚悟が出来たのだろうか。
寂しさと、そして、孫をもつ喜びを噛み締めながら去っていく、誤解したままのラウル。
我に返ったネスティは、慌てて養父を止め、事の詳細を簡潔に説明した。
無論、トリスにやらかした暴走の限りは上手く誤魔化して、の話だが。




「そうか……トリスもやっと……」
「……僕はもうてっきり…その、……あるものだと思っていたので……」

派閥に在中する看護の専門師にトリスを任せ、気恥ずかしい思いでテーブルに向かい合う男が二人。
「14ですよ……まったく、見た目も知識も子供すぎる。…大体、そういう事に疎すぎるんですよ、トリスは」
その幼稚な彼女に自分が何をやったか棚に上げ、ネスティはぶつぶつと呟いた。
そんな照れ隠しともとれるネスティの発言を聞き、ラウルは微笑む。
「仕方ないんじゃ、ネスティ。トリスの歳は本人から訊いたものじゃしな。本人がそう思いこんでいるだけかもしれぬ」
「……え?」
「本当はもっと幼いのかもしれんのう……フォッフォッフォッ」
嬉しそうに笑う父の姿に戸惑いを隠せないネスティ。
「養父さん…そんな、それじゃあトリスにとって不利じゃないですか!」
熱弁を振るうが如く、勢いに乗り出したネスティの抗議。確かに、実際の年齢より上の者の中に入って学ぶのは、施設育ちのトリスには更に荷が重いというものだ。
だが、しかし。
ラウルはたった一言でネスティの熱弁を封じた。
それは最強の一手ともいえる台詞。

「早く成人した方が早く結婚出来るじゃろう…?」

父の、有無を言わさぬその理由に、息子に返す術は無い。最早太刀打ち不可である。
「じゃが手を出すのはまだいかん。いくら歳が大人であっても、トリスはまだ子供じゃ。いいか、ネスティ。一線を越えるのはトリスが召喚師として一人前になってからじゃぞ?わしも、まだおじいちゃんと呼ばれるには早いしな」
「養父さん……」
更なる追い討ちをかけるラウルだが、その表情は実に晴れやかで楽しげであった。

それはネスティのみ知る事実として彼の中にそっとしまわれ、トリスには永遠に語られることは無かった、という話だ。









余談だが。

(心配いらないよ、養父さん。避妊法は心得ているから)

声を上げて笑う養父を見て、静かに微笑み返すネスティ。
その心の中でそっと語られた本心は、彼のみぞ知る、事実である。

02.10.2 HAL


後書きというか言い訳。

大変阿呆な話に最後までお付き合い頂き、有り難う御座います。
というか、実際、読み返してみると、こりゃあ酷い、という出来です。
意識の朦朧とした頭で考えた話で、夜のテンションの高い時間に
書いたことがいけなかったのでしょう。……暴走しまくってます……
載せるのやめようかな〜、とも思いましたが、折角書いたんで(笑)
恥を覚悟でのっけてしまいます。

ところで。URLにもなっている「regel」ですが、これは医療用語です。
「生理」を「レーゲル」というんですよ。婦人科で使われるんですが。