涙の理由(ワケ)
「そんなに泣くな」
そう言ってネスはあたしの髪を優しく撫でる。
大きな手。
あの日、届かなかった温もりが今はすぐ傍に。
ネスが居なくなって。
体中の水分がみんな出たんじゃないかって思う位、あたしは泣き続けた。
もう涙も枯れただろう、そう思っても、ネスの事を考えると知らずに涙が溢れて。
みんなを心配させないよう、聖なる大樹の…ネスの傍でひとり過ごしてた。
甘える事を覚えてしまったから。
一人で泣いてたあたしを変えてしまったのは貴方だから。
ものを言わない大樹に縋り付いて泣くのは、もう嫌なの。
だから、もう一人にしないで。
「トリス…」
泣き続けるあたしに、困ったような優しい声が降りて。
耳元で囁かれる、甘い言葉。
現金なもので、途端に泣き顔が笑顔へと変わる。
「…泣き顔ばかりが浮かんで、笑顔が思い出せなくて困ってたんだ」
助かった、と、ネスは笑ってあたしを抱きしめた。
抱きしめられてまた涙が流れたけど、でも大丈夫。
ただこの温もりがあれば。
もう、悲しみの涙はいらない。
2003.6.18
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