私がまだ幼かった(?)頃、ハドソンがファミコンで出した「チャレンジャー」というゲームに
“列車の面の最後にいるボスにナイフを16発当てると最終面にワープする”
という噂があった。
 私も何度も試してみたのだが、連射機能付きのジョイスティックなどを使っても一度も成功することが無く、ガセネタとばかり思っていた。
そう、この事実を知るまでは。

 私がこの事実を知ったのはつい最近。
あるところでこのゲームを解析したデータを目にしたのだ。
・トリッペ 100点
・タマ 800点(通常攻撃では倒せない。アイテムでの攻撃のみ)
・モーリン 100点
   ・
   ・
   ・
 キャラの点数や倒し方などが羅列してあった(本当はもっと細かく書かれていたが)だけで、これと言って面白いことは書かれていないなぁと読み飛ばそうと思ったときに次の一文が目に飛び込んできた。

・ドン・ワルドラド 800点  耐久度 1面:12 4面:4

………耐久度 1面:12!?
 しかし、その後を読むと、どうやら普通にやったのではほとんど無理らしい。
ただ、これがデマでないことを証明として、1面のボスの耐久度を1にした、あるエミュレータソフト用のセーブファイルで試して欲しいと書かれていた。

 確かに、セーブデータならROMデータを直接改ざんしている訳じゃないし、変更できるとしてもその時点での数値しか変更できない。
ただ単に、プログラム上倒せないはずのボスを倒せるようにしただけなら、ボスを倒した途端にプログラム的不具合を起こすことになってしまい暴走してしまうだけだろう。

 私は、この事が事実かどうか試してみたい衝動に駆られていた。
長年、嘘だと思っていたことが、実は本当だったのかも知れない。
完璧の璧が壁じゃないと知ったとき以上にパニックに陥ってしまった。
そして、私はただ衝動の赴くままに、そのセーブデータをダウンロードしていた。
このときの私の脳波グラフでは、前頭葉の働きが鈍っていたに違いない。

 私は落ち着こうと深呼吸をしようとしたが、それすらする間もなくダウンロードが終了した。
早速エミュレータを立ち上げ、所持していたチャレンジャーのROMデータを読み込ませてゲームを起動させた。
そして、先ほどダウンロードしたセーブデータを読み込ませる。
いつもと何ら違うところのないタイトル画面。
スタートボタンを押し、普段通りにゲームを進めた。
列車の先頭へ立ち、音楽を口ずさむ。
そして、カンカンと鳴ったときにジャンプボタンを連打。
クジラが出てボーナス10000点を貰い、更に無敵状態になり、ずんずんと列車後部へ進んでいく。
ただ、間違って1回ナイフを投げてしまい、ナイフを投げずに列車内に入ったときのボーナスを貰い損ねてしまった。
そして、ついに列車先頭部へ到達。
レバーを引き後部車両の連結を外すと、ボスが自分を列車から突き落とそうとやってきた。
ここまでは普段と一緒。
しかし、今回は違うはずだ。このボスが倒せるはずなんだ。
私は興奮気味にナイフを投げる。
すると、効果音とともにボスは姿を消し、今までボスがいた場所には“800”という文字が表示されている。
そして、画面はブラックアウト。

 あの噂は本当だったのだ!
いや、まだだ。ちゃんと最終面にワープするか確認しなければ。

 そして次に画面に出てきた文字は
“SCENE 2  SEARCH PRINCESS!”。
いつもと同じかと一瞬落胆したが、よく見ると場所が違う。いや、違いすぎる。
ここはSCENE 4の入り口じゃないか!
興奮しつつ中に入ってみる。
“SCENE 4  RESCUE PRINCESS!”
通常、SCENE 3でアイテムを全部集めないと、入り口にある岩が無くならず先に進めないはずなのだが、その岩もない。

 あぁ、やっぱりあの噂の裏技は本当に存在したんだ!
感動した。
たかがゲームで、と思われるかも知れないが、今年に入って一番の感動だった。
そしてボスを倒し、ゲームをクリア。
しばらくの間、私は何とも言えない余韻に浸っていた。
 

下の画像はこの時の物である。
 

列車先頭部へ到達。
ボスを倒した瞬間。
このあと800点手に入る。
そしてSCENE 4の前にワープ。
SCENE 3を一度も体験することもなくSCENE 4へ。
最後のボスを倒した瞬間。
プリンセスを助けてゲームクリア。
得点に注目してほしい。
通常のプレイだと、ここまで低い点でクリアすることは出来ないだろう。
これはノンフィクションであり、実在する商品などと関係ありまくりです。いや、まじで。
あ、でも、ちょっとヤバげなものを使っているので、やっぱフィクションと言うことで。