鳥インフルエンザとカラス
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 最近世間を騒がせている鳥インフルエンザ。2004/3/7にとうとう、「京都で死亡したカラスより鳥インフルエンザウィルス検出」というニュースが流れました。どこにでもいるカラスですから、これに関心が強い方も多いことでしょう。また、報道の仕方にも問題を感じ、急いでページを立ち上げました。
 あらかじめ申し上げますが、私はウィルス学に関する詳しい知識はありません。また、野鳥は種類によって行動が千差万別で、カラス以外の野鳥に関しては細かいことまで分かりません。あくまで、鳥インフルエンザの基本情報とカラスの行動と照らし合わせた考察だと思って下さい。ウィルスの性質に関して詳しく知りたい方は専門のページがたくさんありますので、「日本鳥学会 鳥インフルエンザ問題検討委員会の検討結果報告」などで調べてください。
 なお、このページでは一般的に言われている鳥インフルエンザウィルス(高病原性のH5N1株)について記述することにし、その感染力などに変異が起こっていないことを前提に書いています。

  • 鳥インフルエンザは基本的に接触・飛沫(くしゃみによるツバなど)による感染である(たとえその鳥が感染していたとしても近寄っただけ、見ただけでは絶対伝染しない)。フンも古いものは大丈夫である。
  • 仮に感染した鳥がそのあたりを飛んだりしていても、羽根からウィルスがまき散らされるようなことはない。
  • ヒトには感染しにくい。
  • 鳥類の中でも種によって「感染しやすさ(感受性)」が違う。感受性が高い(感染しやすい)のはキジ目(ニワトリはキジ目)、カモ目と言われる。カラスに関しては、ある程度の感受性があるようだ。
  • 今回のカラスはインフルエンザで死んだニワトリを食べていたらしい。さすがに、死にたてのニワトリの内臓(ウィルスがウヨウヨいる)を生で食べればこういうことになるだろう。
  • ハシブトガラスは移動性が比較的少ないことからウィルスを大陸から持ってきた犯人とは考えられない(ニワトリから感染→死亡したものと思われる)。またハシボソガラスも日本海を越えて移動することは考えにくく、これもウィルスの運搬者としては除外すべき。
  • 冬期に大陸から日本に渡ってくるミヤマガラス・コクマルガラスは、渡りの前に感染していれば鳥インフルエンザのウィルスを運搬してくることは考えられる。しかし仮に「野鳥運搬説」を言い出すと、冬は大陸から渡ってくる大小の野鳥が山ほどおり、種の特定はほぼ不可能。
  • カラスの行動やヒトとの距離など、総合的に判断すると、万一カラス内に感染が広がってもカラス→ほかの野鳥への感染は考えにくく(カラスを捕食する猛禽類を除く)、普通の生活をしているぶんにはカラス→ヒトへの感染の可能性はほぼゼロ
  • カラスはほかの野鳥を食べたり共食いをすることがあるので、仮にその鳥がウィルスを持っていたとすると、野鳥→カラス、カラス→カラスの感染はあり得る。
  • 養鶏場のような特殊な閉鎖された空間で、もしウィルスを保有した野鳥(カラス含む)がやってきてニワトリと至近距離でふれあったり、ニワトリにフンをかけたりするようなことがあれば、野鳥→ニワトリの感染はあり得る。
  • 1日の行動範囲に関しては諸説があるが、餌や地形、気候など、環境によって変わるようだ。一般的には10km程度だが、私が確認しているものでは長くて30〜40km程度のものも(北海道では半月ほどで140km移動したという報告もある(玉田・深松1996))。繁殖期(3〜7月)に入った個体は縄張り周辺でしか行動しないのでごく狭い範囲でしか行動しない。ただしすべてが繁殖するわけでなく、繁殖に参加しない(できない)群れも結構いる。
  • フンをかけられたり、接触があった場合は念のための注意は必要だろう。まずは触れた部分の洗浄・消毒、手洗い、うがい。その後もし体調に変化があればすぐ医者へ。
  • 感染したのはごく一部の個体であり、そのへんにいる野鳥(カラス含む)がみんな危険だと考える必要はまったくない。ただし給餌などをして野鳥を1カ所に集めるようなことはやめた方がいい(野鳥のためにも)。
  • そのへんに落ちている弱った野鳥(カラス含む)や死体を触るのはやめた方がいい(心配なら保健所等に相談)。ただし弱ったり死んだりする野鳥って、気をつけてみていれば普段から結構いる。
  • 何よりも、「得体の知れない病気」という偏った情報に踊らされず、冷静に対処することが大切。
  •  こんなところでしょうか。テレビはショッキングに番組を作れば視聴率がとれるので、いろいろ脚色して、おどろおどろしく情報を流します。確かに軽く見て良い病気ではありませんし、それらの情報がすべてウソだとは言いません。しかし、偏った情報ばかりを見ていたずらに恐怖する必要はありません。
     特にカラスは黒く不気味で、得体の知れない「雰囲気」を持っているため、これに病気の犯人をなすりつければ話題にはなるでしょう。しかしこれらはまったく冷静さを欠いています。カラスは現在のところ人間のずさんな管理によりインフルエンザをうつされた被害者であって、感染源ではありません。水質汚染などでもよく語られますが、高次消費者はこういうものの犠牲になりやすいのです。
     この手の話題では民放各社の内容は、少なくとも野鳥に関しては心霊とか超常現象などのオカルト番組に近いものがあり、大変危険に感じます。それだけ作る側の知識と認識が足りず、適した専門家の話も聞いていないということでしょう。ウィルスが専門の先生に野鳥について聞いても意味がないです。そんなあやふやな情報収集と憶測でできていると思われる番組が結構多いです。
     怖がる前に、どういう病気なのか、どうすれば感染するのか、など、きちんとした情報をきちんと整理して理解する必要があるでしょう。

     また、カラスと関係ありませんが、室内で飼っている鳥を不安に思う人も増えているようです。しかしインフルエンザウィルスは何もないところから突然湧いてくるものではありませんから、外部との接触がない以上、感染する確率はゼロです。混乱して捨てたり殺したりしないよう、これもお願いします。